[山形市]幸町・八日町・宝光院 花ほころび顔ほころぶ(2026令和8年3月14日撮影)

三の丸跡地の階段を降りる。
駅前の歌懸稲荷裏の三の丸土塁は有名だが、こちらは無名。

「誰が落ち葉ば片づげんのや?」
プラスチックの雪かきはいう。
「俺はスコップだがら土掘るだげ」
錆びたスコップは素っ気ない。
「俺だて雪かきしかしたごどないし」
二人の間に沈黙が漂い、お互いに協力してするしかないかと思うまでもう少し。

この石垣にお城が建っていてもおかしくはない。
三の丸跡地とはいいつつ、この石垣の上に建っていた家は知人の家だったので、
何度も小さなころこの石段を登ったものだ。
いまは桜が残り春を待つのみとなっている。

五日町踏切付近はとても賑やかな通りだった。
あらゆる店が立ち並び、この通りを歩くだけですべての買い物や用事が済むほどの繁華街だった。

「おい、アンパンマン。お前は何でできている?」
パンではなく金魚の餌でできている?
金魚や熱帯魚屋さんだけに。

キリストはすぐに来るの看板。
「それは郵便局の速達より早いんだが?」

「お前が水掛けでけねがら、おらだはこだなごどなたどりゃあ」
プランターの枯枝たちは如雨露を責めるように睨む。
如雨露はたじろぎながらも正面を向く。
「おだぐだは去年に一生が終わてんの。いつまでも現世さたづいでいねで早ぐ土に還れはぁ」

「なえだて咲いっだどりゃあ」
あまりの嬉しさにファインダーを覗きながらしばらく見入る。
梅の花も恥ずかし気に初々しい真っ白な顔でこちらを覗き込んでくる。
春はこんな邂逅があちこちでみられるかと思うと顔がほころんでくる。

梅が咲いていないかと梅の名所宝光院へ向かおうとする。
「なんなんだこの房たちは?」

「よっくど見っど毛虫ではないみだいだし、
気持ち悪いような、触ってみたくなるような」
なんとも不思議な房がわんさか垂れている。

「うわっ、まだ七夕んねんだがら」
見上げれば空から驟雨のごとく房たちが降り注ぐ。
なんとも人騒がせなハンノキでした。

さてこの中にはどんな乗り物が隠れているでしょうか?
そんな問題を出したくなるほど自転車は枯れ枝や草たちに馴染んでしまっている。

私が生まれ育った頃にもこの古木の梅はここにあった。
話は60年以上昔へ遡る。
この梅の木の根本で亀を飼っていたのを今でも覚えている。
その亀はどこかへ逃げ去り、私たち家族も引っ越した。

小学校時代の通学路は六椹八幡神社の中だった。
そこへ通じる道はこんなに細かったのか。
昔日の思い出が頭を去来し、じわっと滲むものが目を伝う。

宝光院の裏手へ周ってみる。
水仙の青々とした色が目に飛び込んでくる。
「なんだて若々しいごどなぁ」
黄色い花が空へ顔を出すのが待ち遠しい。

宝光院の梅はまだ蕾のまんま。
「ワニっだんだべぇ、結構奥手なんだがもすんねなぁ」
昭和のころはこの梅がのし梅の原料になっていた事を知る人は少ない。

私が洟垂れ小僧だったころ、よく西高生が宝光院へ訪れていた。
この足跡も丹念に研究していたらしい。
部活動だったのか、授業の一環だったのかは分からない。
「足跡は三十センチはあっべが?かなりナリのでっかい人なんだっけべな」

真夏なら宝光院の門をくぐれば驚くことだろう。
百日紅のどでかい木がピンクの花を一面に咲かせて迎えてくれるだろうから。
その百日紅の薄茶色の枝が境内を縦横無尽に泳ぎ回っている。
そして手前には今育たんとする牡丹の花が直立する。

横断歩道を渡る際、チラッと横目で見た早咲きで有名なあじやま桜はまだ蕾だった。
もちろん梅ですらちゃんと咲いていないのに桜など咲こうはずもない。
そこであじやま醤油屋さんの裏手へ周ってみる。
細長い蔵の隙間を流れる雲が少しばかり春らしくなってきた。

ガラスに映る街並みをよっくどみれば、
青い標識に三日町の地名が見える。
その下を未だに冬の恰好をした二人がくっついて駅方面へ歩いていった。

日枝神社の左向こうには十字屋のビルが悠然と建って見えたのは数年前。

「すっかり山形さ根付いだみだいだずねぇ、この文字のよぅ」
「俺もこの山ラーの文字が入ったティーシャツでも着て町ば闊歩してみっだいなぁ」
「頭さ県知事みだいにサクランボの帽子ば被ってがぁ?」
山形市は知らないうちにラーメンの聖地、果物王国に君臨してしまったが、
寿司の消費量も日本一。でもこれは宣伝できない。だって魚はあくまでも県外産だがらねぇ。

パッと咲いた椿は、ぱっと開いたタオルの洗濯ものを見下ろして目をしばたたかせる。

「この通りはよ、歩道が融雪路なのよ」
「何ばゆだいのや?」
「椿の花は季節が終わっどボダッて落ぢるのよ」
「んだがら?」
椿は雪でもない土の地面でもないところへボタッと落ちるのが、痛そうで不安がっているのでした。

「よっくど近づいてみれば初々しいばかりんねくて、結構妖艶さもあるんだどれ」
フクジュソウは可憐さの陰に妖艶な罠を隠し持っている。

福満稲荷神社へ入り込む小路にちっちゃな花が咲いている。
まだまだ小っちゃくて手を差し伸べたくなるような覚束なさだけれど、
春は黄色い花から咲くんだを率先して具現化しているのがサンシュユだ。

「なんだてこっちではこだい咲いっだんだどりゃあ」
暗がりを背景に日差しの当たる場所では踊るように咲いている梅たちよ。

いつの間にか空の雲が切れ、青空が広がってくれた。
花弁たちは待ってましたとばかりに空へ向かって枝をピンと伸ばしている。

「山ラーのごどばりで忘っでだきゃあ。山形ったらソバもあんのっだずね」
看板を見てソバのことを思い出すようじゃ山形市民としてまだまだだ。
看板にはこう書いてある。
すこやかにそばをのばそうと。
これは市民憲章だっけが?

「ごつんっ!」
「痛いんだげんとっ!」
「餅つきはもう終わったべな」とタイヤはごしゃぐ。
ゴメンといいながらギッコンバッタンは再度突く。
「俺は餅んねんだぁ!」
タイヤとギッコンバッタンは喧嘩し合うほど仲良くくっつきあっている。
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