[山形市]平清水・平泉寺 遠い春を夢見て雪道歩く(2026令和8年1月24日撮影)

ここは恐竜の里、福井県か?
いや山形です。
いくら恐竜がいてもすぐにわかります。
「んだて今年は福井が大雪、山形市内は小雪だがら」

ナナカマド、雪をかぶって軒先覗く。

土塀のぬくもりが少しでも欲しい。
ナナカマドは体に巻き付く枯れ果てた夏草を振り払い首を伸ばす。

今年は何故か例年になく小雪の山形市。
北陸のほうは大変な事になっているし、
今後はどうなるか分からないと雪の入り混じった山を眺めて気を引き締める。

「なにが恥ずかしいんだっけべ?」
子供のころに聞いた話では、少女がこの川を跨ぐのに足を大きく開かなければならず恥ずかしかったという。
恐らく何十年も前に聞いた話なので、どこまでが本当か、私自身で勝手に脚色してしまったのかすら定かじゃない。
自分で眉に唾を付けようとしたけれど、手袋だった。

この看板ほど田舎でよく見かけるものはない。
いわば田舎の代名詞。
木目は色合いといいすり減り具合といい、味がある。
きっと昆布やカツオにも負けない、いい出汁が出るに違いない。

「走んなよ〜、ひっ転ぶがらな〜!」
電柱の剥げてしまった字の上から手書きで修正したような「危険」の文字が叫んでいる。
その脇をタイヤにチェーンを巻いた郵便のおっちゃんが、片足伸ばしてそろりと止まる。

塀と壁の間に隠れるのはスノーダンプ、灯油缶。
そして時期の過ぎたススキたち。
「ダンプも灯油缶も一番稼がんなねどぎにサボったのがぁ」

今年は今のところ雪が少ないせいか、雪かきをする人の姿を見かけることもない。
枝に掛かった雪も申し訳程度。
「これで済めばなんにもゆうごどはないんだげんとなぁ」
まだ一月なだけに油断は禁物と肝に銘じたいが、
元来の無精者のため、それすらもしたくない。

「なして腹が減ってきた頃を見計らって目の前さ現れるんだずぅ」
しかもラーメンでは山形四天王と呼ばれる店の一つじゃないか。
「ああ、食だい。ちっくしょー」
自販機の側面がべろべろに剥がれているように、脳みその我慢中枢の壁がべろべろと崩れだす。

ツンツン伸びる枯草の背後の正体は?
ワイパーに乗っかった道楽な雪と、
リアウインドウに映りこむおどろおどろしさを醸す樹木でした。

「んだて基礎の部分の石垣まではっきりみえるんだじぇ」
「いかに山形の雪が少ないが分がっべ?」
「梅の木だて、雪ばほだい重そうにしてねもの」
「よっくど見っど、春さ向がてちちゃこな芽が一杯でっだどりゃあ」

「こっだな喉さつっかえた小骨レベルだどれ」
「確かに弱かすなツララだずねぇ」
あと数分で落ちそうなツララに向かい、
弱かすなどと意地の悪い言葉を吐いて、自分の弱さを隠してみる。

「なえだて、どだい書初めで頑張たのや?」
「何百枚も筆ば奮って、すり減ったんだびゃあ」
神社に願い事をして鈴を振るための麻縄(鈴緒)へ向かってそんなことを言う罰当たり。

杉っ葉は思った。
「助かたぁ、これで雪の地面さ落ぢねで済んだ」
ブランコに引っ掛かるとは運がいい。
でも、その高さまで雪が積もるかもしれないし、
奇特な人がこの真冬にブランコ乗りをするかもしれない。

「赤いブドウだが?」
「それにしては粒がちゃっこいずね」
寒気を含んだ声がちっちゃく聞こえてくる。
「ピラカンサだず。どごさ目ぇ付けでるんだぁ」
ピラカンサはどうしても間違われることが嫌だった。

「白と黒の世界だずねぇ」
「あれ?道路の半ばあだりが水滴落っだみだいに波紋出来で歪んでいねが?」
「はえずぁんだっだな。ミラーが凹んでるどごだもの」

「無花果だが?こだな時期に実が成んの?」
何故か漲る生命力を寒空に発している姿に畏怖感すら覚える。

♪笹の葉サーラサラァ。
「誰だこの惨状ば馬鹿にするのは?」
確かに軽やかな歌には似合わない状態は可哀そうと思う。
でもまた歌う。
♪笹の葉グーダグダァ。

「どごば拭いっだのや?」
垂れ下がったワイパーに声を掛けてみた。
「窓は雪だがら、車体ば拭いっだんだ」
かえって汚れているような気がしないでもないが黙っていた。
するとミラーが「イエーィ」と手を振った。
人間の常識を覆す老練車体。

雪の重みで撓んでしまったのか?
いやいやそうでもないらしい。
神聖な空間を守るために空を覆っているのだ。
勝手に想像を膨らませて歩き去ろうとする。
するとキシキシという雪を踏む音が竹林の空間に吸い込まれていった。

湾曲したドームのような空間を創り出していた竹林の脇には直立不動の杉林。
平泉寺大日堂への石段と白い屋根がその隙間から小さく見える。

大日堂が迎えてくれたのは福助さん。
「寒風で肌が荒れでよぅ、ケラチナミンが欲しいんだげんと・・・」
確かにケラチナミンを塗れば白い肌の痛々しい荒れは治るかもしれない。
ごめんなさい手持ちが無いもんでと目を逸らし心が痛む。

「ガーッハッハッハッ、暑い暑いぃ〜」
胸をはだけて胸毛を見せながら布袋様は笑い飛ばす。
それが本当なのか痩せ我慢なのかは分からない。
はっきり言えるのは決して痩せてはいないことだけだった。

春ならどんな風情を感じさせてくれたのだろう?
そんなことを思いつつ平泉寺の山門をくぐる。

決して画像を90度回転させたのではありません。
雪国の人なら分かるだろう。
屋根の雪はずりずり滑ると軒の内側へくるりと巻き込んでいく。
そのためにツララはせっかく下を向いていたのに水平の辛い態勢を強いられるんだ。

雪の平泉寺の姿を目に焼き付けたうえで目をつむり、
春の平泉寺の姿を思い浮かべてみた。
枝垂桜の花びらが雪の枝と重なり合い、真っ白な雪の地面へ桜色が散りばめられた。

「まだ来っから待ってでな」
枝垂桜へ声をかける。
笹たちは不満げに、被った雪をザザッと落とす。

寒さに耐えているのか、生みの苦しみの最中なのか。
その膨らみは命の力を迸らせようとする寸前の姿に違いない。

「なしてわざわざ寒いときに?」
椿は黙って語らない。
被さった雪がわずかに溶けたような気がする。
それは間近で声をかけた私の息のせいだった。
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