[山形市]初市 寒波が来る前に、あっちでけぇ、こっちでくぅ(2026令和8年1月10日撮影)

NTTの塔に太陽が被さっている。
太陽はなんという青空を山形にもたらしてくれたのだろう。
初市に向け気を利かせてくれたに違いない。

栄町通りが更地だらけになっている。
栄町通りという名称を知らない人もいるだろうから説明する。
済生館西側から南進一方通行だった市民会館を経て駅前通りに至る通りのこと。
この拡幅工事がせめて城南橋から東進する通りまで出来れば、
山形市内の車の流れは大きく変わるはず。

さとちゃんはは思った。
「山形が人口100切ったなて嘘だ。んだてこだい人いだんだじぇ」
あまりの人出にさとちゃんは嬉しくなって目をぱちくり。

蕪は真っ白いその肌を惜しげもなくさらし、
光り輝いて、人々の目を引いている。

「いやぁ、しぇえ塩梅だぁ」
「おまえだ風呂さ入てるつもりなんだが?」
「今から出番なんだがら緊張ばほぐしったのよぅ」
杵たちは体中にやる気が充満してきたようだ。

「おじちゃん、なしてまばたきすねの?」
「ん〜、なしてだべ」
ひょっとこは子供に指摘されるまで気づかなかった。

目に手をあてがってみる。
やっぱりまばたきが出来ない。
目から涙がでそうになったけれど、餅つきの本番に備えぐっと我慢する。

「山形ば盛り上げっべぇ!」
皆にこやか、皆興奮、皆今年を明るくと願い、三三七拍子。
もちろん太陽もビルの隙間から燦燦七拍子。

衆目が太鼓に注目する。
いよいよ初市の景気づけに太鼓の音が青空に響くぞー。

スカッと広がる青空の分子も取り込んで、
杵は餅にうま味を打ち付ける。

お姉さんたちは軽快に踊りながら、
ゴム底を見せながら、餅へ優しさを練りこんだ。

餅は出来上がり、
杵は青空で体を清められる。

親の笑顔で子供を見守る。
子供はおがぐらの口の中を覗いて、
誰か中にいると気づいても気づかない振りをする。

文翔館は目を細めて街の賑わいを見つめる。
団子木は新聞にくるまれゆらゆらと青空に揺れる。

団子木は空の衛星のように空を舞う。

カラフルな粒粒は子供を笑顔にし、
大人の心を癒す効果があるようだ。

「お姉さんすっごいツルツルだずねぇ」
「ちぇっと化粧しったがらねぇ」
福々しい頬っぺたと妖艶な唇に吸い込まれてしまうべな。

「新しい市民会館てどだな風にできるんだべねぇ?」
「はえずぁ、今までの山形さないっけ風にできんのっだな」
みんな何か飲みながら食べながら未来を語り合う。

「AZもずげなぐなるんだじゃあ」
AZから大沼にかけての再開発が間もなく始まる。
「そういえばよ、この間大沼の地下さ入っていく北口のガラスが破らっだべ?」
「あれはよっぽど犯人がマヨタコ食だいんだっけべなぁて思うのよ」
あの味は未だに忘れられない山形の味だった。

ビルが煙に巻き込まれる。
熱・注意のビラが風にはためく。
こりゃ大変だと思ったら、十一屋の酒まんじゅうの湯気だった。

空に張り巡らされた細くしなった枝の向こうに雁戸山。
その尖がった形は山形人の目に焼き付いている。

「蕪汁だどぉ、ただだごんたらごっつぉなるっだべ」
そんな人々の行列は凄まじいほど長かった。

左手に蕪を抱え、指に万札を挟み、右手で品定め。
なんと山形人は初市に命を懸けていることか。

「あたしは一本だげぇ?」
「細く長ぐっだな」
「がばちょと挟んで食ってもいいんだじぇ」
「ううん、遠慮しとく」
「ほだごどして食ったら冷めでしまうべな」
親子の会話に整合性はないが、暖かい交流はある。

「熱っづい」
「口の中火傷するぅ」
大気温と口中の温度が違いすぎて、体と気持が追いつかない。

風除けのビニール越しに日本酒がこちらを見つめている。
「温まっていがねがぁ?」
そういう風に解釈したくなるけれど、
「車だがら」と自分を戒め断ざる負えない。

こんなにアスファルトが乾燥し、
人々の影がくっきりと見える初市は珍しいかも。
そんなことを頭に浮かべながら、人々の流れをボーっと眺めるのも一興。

「プールて無ぐなるんだがぁ?」
「俺が若いころはプールさ行けば都会の雰囲気ば感じたもんだ」
「プールさ行ぐのがお洒落だっけもねぇ」
時は無情に流れる。あの時の現実は今では思い出の一部に過ぎなくなっている。

「ウグウグッ」
「喉さつっかえっべな」
女の子はそれでも餅を口から放さなかった。

何万人の山形人がかぶづいできた事か。
どんなお菓子より飽きずに長い間親しまれてきた素朴な味。
山形では「どんどん焼き食た?」が頭抜けて使われる常用語。
それはまさに国宝級であり、「国宝観た?」という流行語と比肩するほどだ。
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