[山形市]十日町・本町・小姓町 夜の底へ沈んでいく(2025令和7年12月27日撮影)

太陽が西へ去り、山形市どまんなかの唯一といっていい小型スーパーの文字が際立ってきた。
「ほういえばよ、山形の真ん中あだりてよ、コンビニも少ないし、スーパーなのないし、
みんな買い物どさいぐんだべね?」
「んだのよ。マンションばっかり増えでっげんと、スーパーは中心部ささっぱりないもねぇ」
「街中の友人さ買い物どさ行くが聞いだら、みな郊外のスーパーさ行ぐんだどう」
「昭和のころと車の流れは逆転したっだべ」
「んだがらよ、市民会館が移転したらその跡地さでっかなスーパー造っどいいのよ」
「んねごんたら裁判所移転したら物産館ば兼ねるスーパーってのも有りだべな」

「あたしたち結ばれてるの」
左の女の子ビール瓶が半歩前で嬉しそうにいう。
「あ、まあんだげんと、雪のマフラーで結ばっでるだげだがらぁ」
右の男の子のビール瓶は恥ずかし気に半歩下がる。
今の世の中、男は半歩下がるのが旨くいく。

おしゃれなスーパーのすぐ隣?裏手が帰命院。
「郵便局んどごから左ばみっど突き当りさ見えっどれ」
「んだがしたぁ。しゃねげんと」

せっかくだからちょっとお邪魔してみる。
南無の真っ赤な幟が並び、その先にはスーパーの壁面に樹木が影の枝葉を伸ばし凍り付いている。

「立派で趣のある建物だずねぇ」
「んだのよ。山形の中心部さは大正ロマンも江戸の建築も山ほどあんのよ」
山形市は歩いて楽しい町を目指している。
「ほんてん歩いてへとへとにならね範囲さ見どころがあんのよねぇ。スーパーはないげんと」
スーパーのないことにまだ頭に残っている。

「こだな創りの建物あっか?」
「ないずぅ。んだがら見どころなんだべず」
「町の中がみんなこいなだったらオーバーツーリズムになっべな」
「ならねぇ、んだて付随する食べ物屋さんもスーパーもないもの」
「スーパーから頭離れろ」

「町の中で昭和からずーっと残っているの大っきな建物は本局ぐらいんえねがはぁ?」
「本局んねんだはぁ、中央局なんだはぁ」
そんなことを考えている間にも信号は青から赤へ変わり、
帰路に就く車が凍てつく地面へ白い排気ガスを残していく。

「宇宙人が降臨か?」
「いや、帽子をかぶった赤いおじさんです」
寂し気なイルミの上で真っ赤になって自分をアピールするおじさん。
この寒空で、ただ止まれ止まれといっているだけの自分が空しくないのだろうか。

この間の雪の残りかすがちょぼちょぼと垂れている。
まだまだ冬はこれからが本番だぞ。気を引き締めろ。
松の木は空からそんな発破を街並みに掛けているようだ。

今話題の吉池医院。
とはいってもイベントのない夜は暗がりの中で寂し気に凍てついている。
イベントがあるときとないときのギャップに痛々しさを感じずにはいられない。

窓からは通りのイルミネーションを羨まし気に見つめる意図が感じられる。
葉っぱへ残った雪は、よせよせ、今の世の中さ迎合すんのはやめろといっているようだ。
確かに、構ってもらえる時は賑やかに、そして人が去った後はどうだ?と雪がいっている。

溶けた雪の水たまりでは、突っ立って時間を持て余したイルミがチロチロ波打ち、
その灯りは両脇の車体にもくっついて揺れている。

威厳ある白漆喰の建物がいう。
「んだがらよ、なんぼ古い建物ば残してもダメなんだず。
人は食い物がないと来ねの」
「道の駅とはいわねげんと、ほいながイベントんどぎだげんねくて普通に街中さないどダメなの」
「ほだなお金どさあんの?」
「ほだなしゃねっだな、自分だの町なんだごんたら自分で考えろ」
白い漆喰はつれない返事で夜空を見上げているだけ。

人は来年の夢を見て帰路につく。
街灯が物憂げにウインドウに映りこむ。
今年のモンテは残念だった。
頭の片隅には常にモンテのことが居座っている山形人。

空はより一層暗さが増し、寒気も圧倒する力で町を覆う。
町も人も縮んでしまったようにして、帰路へつくか暖かいところへ急ぐかの年末。

「滑っからな、気ぃつけでな」
足並み揃えてお互いに目配りしながら足元見ながら横断歩道。
その脇を山交バスが冷たい風を巻き起こして走り去った。

「なえだて和風と洋風のコラボが?」
「こごで凝らねど人なの来らんねど」
和風の暖かく柔らかい色と、洋風のキラキラと刺さるような光りは相容れないように見えなくもない。

「和室からイルミネーションば観んのも一興だがもすんねね」
和洋中なんでも受け入れて独自に進化させた日本人のこと。
「どごがさ山形ば賑やかにする術はあるはずっだべ」
チカチカするイルミを見上げて目は刺激されるけれど脳みそまでは届かない。

閉店後の紅の蔵だからイルミを見上げているのは自分一人だと思っていた。
見下ろせば凍えた体で雪の中から首を伸ばしている小さな一輪。

「蔵ばライトアップしったんだが?」
蔵の壁には樹木のシルエットが浮かび上がり、
今からなにかの演技でもするかのように葉をざわめかせてその時を待っている。

「床屋さんも終わたんだどりゃあ」
「みんな頭ばさっぱりして新年ば迎えるんだべなぁ」
「おらぁ、毛がないがら頭はさっぱりしてんま」
「来年も怪我なくていがったっだなぁ」

夜の静寂は道路伝いに街中へ伸びていく。
こんな時にはぬくもりのある灯りが恋しくなるもんだ。
「いい匂いもしてきたしねはぁ」

「タクシーは旨いどごさ誰がばしぇでいぐに決まてっべ」
タクシーの風に煽られ、赤ちょうちんに見下ろされ、
「俺はこだい寒い中なにしてるんだず!」と自分が情けなくなってきた。
「ほだごど思うなず、子供じゃあんまいし。
誰がが夜も寒い中でも働いでっから年末年始が成り立っているんだべよ」

寒空の中、両腕を上に突き出し、
あらゆる指を空へ向かって広げて見せた。
すっからかんに葉の落ちた樹木よあっぱれ。

「おらだの仲間はみんな真っ赤なのに、世の中には色違いの玉ころがあるんだずね」
チロチロと煌く灯りはやがて消え去る。
その時ナンテンは夢だったのかと気づくだろう。

ロマンロードにロマンと赤い電話ボックスはあるが人波はない。
「いいべした。ロマンのないどごの方が多いんだがら」
確かに正論だが素直に頷けないのは寂しさのせいか、
赤い電話ボックスの気持が乗り移ったせいか。

この通りに流れるのは寒風だけじゃない。
寒風の中には人々の喜怒哀楽が断片となって入り混じっている。

「なんだて寂しい灯りだごど」
地面の水たまりを見て思わず独りごちる。
「こだなちちゃこな水たまりさも灯りは飛び込んで、命の光りば灯してんのっだなねぇ」

街の明かりへ遠慮気味に月明かりが覆いかぶさる。
街の灯りは月の灯りと語りつくせぬ会話をとぎれとぎれに細々と続けて夜を過ごす。

「なんだてキラキラだずねぇ。十日町はまだクリスマス終わらねのが?」
「凄いべぇ、このキラキラはゴミ集積所なんだじぇ。通りばみっどあっちゃもこっちゃもあっべ?」
「こだいお洒落なゴミ集積所は初めで見だ、綺麗なゴミ集積所だど皆綺麗にすっべがらなぁ」
ゴミ集積所の囲いは向こうのスーパーの灯りや、通り過ぎる車のテールランプで、変幻自在に煌いている。
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