[山形市]上町・五日町 初冬の日常が愛おしい(2025令和7年11月15日撮影)

「この間まで、あだい暑いんだっけじぇ」
「早くて年賀状がはぁ」
年を取るにつれ年月の進みが加速度的に早くなる。

ドアが重そうな体で壁に収まっている。
リヤカーがズネーンと蔦を絡ませながら立っている。
それらの目の先では枯草たちが日を浴びて賑やかにさんざめいている。

「よぐここまで頑張たなぁ」
「もはや丸ぐないどれはぁ。こだなタイヤの車さは乗らっだもんでないな」
ピカピカの滑り台はタイヤを笑う。
ずっと耐えてきたタイヤは何も言い返さず、
すり減り変形するほどまでに働いた過去を振り返るばかり。

小さな水路はこの時とばかり賑やか。
明るい将来を夢見ての若々しい賑やかさではなく、十分生きたなぁという感慨を感じる落ち着いた賑やかさ。

「ヤマローソてなんだ?」
「よっくど見ろず。カメヤマローソクだべぇ」
カメヤマローソクのベンチは冬の準備用品が主役の座だと陰に隠れている。

オキナグサがぽつねんと立っている。
あんまり物事を深く考えすぎて、頭がこんがらがっているようだ。

「スコップの取ってさ挟まって休むなて頭いいずね」
「ほだないつものごどだぁ。土さ汚れねで済むどれぇ」
土に汚れるのが仕事の軍手は、本当はきれい好きだった。

世の中の壁ってなかなか斜め模様のものはない。
そこで太陽は思った。
天気のいい日は階段の隙間ば利用押して壁さ模様ば作ってけっべ。

雲梯は上と下から挟まれて心地よく伸びをする。

窓から真っ赤な葉っぱがのぞいている。
よく見ればなんと手前の木々が反射しているだけ。
天気のいい日は窓の中へまで赤い葉っぱが入り込んでいけると思っても信じてしまう。

「まぶしいねぇ」
「あたしが?」
「木々の木漏れ日が」
ブランコは二人を見つめてクスクス笑い合う。

「なして壁さピタッとくっついでんの?」
「壁のザラザラが気持ちいいし、太陽の光りで壁が暖かいがら」
まもなくほぼ落ちてしまう真っ赤な葉っぱたちは、今年最後の日差しを体に取り込んでいるようだ。

「あたしたちは絶滅危惧種なんだがらね」
「それにしては賑やかんねがい?」
あとから調べてみたら確かに絶滅危惧種だった。
なのになんであんなに元気に生きていけるのだろう。

新幹線が踏切を、しかも「そば」の看板脇を疾走するなんてそうみられる光景じゃない。

これだけ真っ赤になるとどうしても心惹かれて撮ってしまう。
「なんてことない、どこにでもあるナンテンなんだげんとね」
「なんてんごどいうの!」
ナンテンはそもそも赤いので、ごしぃでいるのか平常心なのか分からない。

この真っ暗な鉄道下のトンネルを知る人は地元の人だけだろう。
快晴の空から目を移せば益々真っ暗な小さなトンネル。
昔は五日町踏切が混雑すれば、この暗がりを背をかがめて(私の身長より低い)くぐっていったのだろう。

五日町踏切から八日町方面へは昔からの商店がびっしりと並んでいた。
着物屋さんも瀬戸物屋さんも文具屋さんもあったし、
クランクのところまで行けば大丸というスーパーみたいな大きな食品店があった。
そこの入り口で売っていた五円のコロッケが旨かったなぁ。
今は昔。

五日町踏切のすぐ西側には「ふれあい通り」というお洒落な散歩道がある。
長さは100メートルもあるだろうか。
もちろん車など入ってこれない。
通りから外れてこの年中歩行者天国の道を歩けば心が緊張感から溶きほぐされる。

「上町ってちょっと裏通りさ行ぐどこいな光景が広がてっからね」
「なしてだ?」
「んだっだな。街道沿いにひょろ長く伸びでいだのが上町なんだっけがら」
昭和47年のインターハイ頃から街道の周りも宅地化され、
そのなかに昔の風情が取り残されたように残っている。

一種異様な光景。
「んだて農村みだいな建物の奥さ、山形市の都会の象徴霞城セントラルがみえるんだじぇ」
おそらく霞城セントラルから一番近くで農村光景が残っているのは上町だとおもう。

「どーれ作業終わっびゃあ」
脚立や工具をトラックに仕舞いこむ人たち。
その金属音は冬を告げる合図なんだと理解する赤い粒たち。

「痛いてゆうよりもよ、感覚がもうないんだずぁ」
洗濯ばさみに挟みこまれた看板も可哀そうだげんと、驚いたのはその内容。
「おむつば捨てる人なていんの?」
とっくに子育ての終わった世代には理解しがたい内容に唖然とする。
待てよ、おむつは赤ちゃんとは限らない。
俺もおむつ世代に片足を突っ込んでいるわけだから。

空からの贈り物みたいに真っ赤に光る紅葉か垂れ下がる。
「あ〜あの紅葉さたづぐだい」
自転車はそう思っても無理なことは分かっている。

「おらぁ異端児だがらぁ」
たった一枚の紅葉の葉っぱが太い幹からちょこんと顔を出す。
よくよく見ればやはり引っ掛かっているのではなく、ちゃんと幹から伸びている。
夏の間たった一人で寂しくなかったのか、話し相手もいずつまらなくなかったのか。

「あんれぇ?ハンバーグの自販機?」
私が常に追い求めている昭和の匂いもふんぷんと立ち上っているし、
思わず店の中へ吸い込まれていく。

「じょんだずねぇ。なんという手さばきだず」
ベビーカステラがコロコロと生まれては転がっていく。
その仕草に感嘆しつつ、飛び込みで店へ入ったのに暖かく迎え入れてくれたことには感謝しかない。
「しかも買うてゆてもいねのに実演してけだんだじぇ」
※コッペdeサンドというこの店の方には本当に感謝いたします。今度は必ず買いに行きます。

「な、なんだこの懐かしい食う期間、んね空気感は?」
思わず小学生に戻った気分で陳列されたものを見渡す。
ブラウン管テレビのチャンネルをガチャガチャと回す音が蘇る。
だっこちゃんを腕に巻き付けて父親に写真を撮ってもらったことを思い出す。

「ちゃぶ台といえば星一徹のちゃぶ台返しだずね」
「なして昔は丸いんだっけべ?今のテーブルは四角いのに」
「ジーコジーコとダイヤルを回す黒電話も丸こいっけ」
世の中まだまだ緩くて丸いっけのよぅ。今みだいになんでも四角ぐきちっとしていなかった?、

ふと見上げれば、茶色く古めかしい天井を鉄腕アトムが飛んでいる。
私はタイムスリップしてしまったのか?
「いっだな、しばらくこのタイムスリップば堪能すっべ」
店員さんからいづまでいるんだとごしゃがれるまで。
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