[山形市]山形大学八峰祭 五十年前へタイムスリップ(2025令和7年10月25日撮影)

「なんとがたづいでいねど・・・」
葉っぱは地面に落ちたくないのか、必死にフェンスにたづいでいる。
地面に落ちて土に還るのを拒否するように。

五小の名物石段が秋色をまとい放射線状に伸びている。
その手前でハナミズキは春に花見好きな人々の目を楽しませ、
秋には人知れず真っ赤な実をつけて冬を待つ。

消火栓は何事もなければ退屈だ。
コスモスが微風に揺れるその様を、
ジーっと見守るのがこの頃の楽しみになっている。

紅葉公園の紅葉にはまだ早い。
フライングした観光バスが次から次へと訪れ、
中国語を話す人々がぞろぞろと降り立ってもみじ公園へ飲み込まれていく。
そんな時代になったのかと、もみじ公園北側のコスモスが中国語に聞き耳を立てている。

「あたしだば守ってけっだの?」
コスモスはゆがんだパイプに感謝して色とりどりに感謝する。
「お、おらだはだた会社の命令で禁止てゆっただげなんだげんと・・・」
パイプは思いもよらずコスモスの役に立っていることにくすぐったい気持ちを隠しきれない。

トタンが茶色い涙を流している。
家の絡まる蔦も気持ちを察して茶色に賛同した色になる。
家人の思い出だけが色褪せず残った空き家。

「山大のグランドも立派になたずねやぁ」
「Yamagataの真っ白い文字が仰向けなったどれ」
「んだなぁ、文字がぬだばていねくていがったっだなぁ」

「こだな役割でたいへんだねぇ。一日中立ってんの?」
「一時間交代だっす」
だっすとはいわなかった。
だって山大は出身者の半分以上が県外からの学生だもんね。

「そろそろ腹減ってきたねはぁ」
「んだて八宝菜だじぇ」
「やつみねて読むんだず」
山大生の間ではいうのも恥ずかしいレベルの低いダジャレかもしれないな。

「ちぇっとちぇっとちぇっとぉ。なして東北文教大のテントなのや?」
「東北文教大の学祭みだいだべした」
「申訳ないっすぅ。山大さはテントは四つしかないんだっす」
後から気づいたが大半が東北文教大のテントだった。
山大と東北文教大は「点と線」で結ばれているらしい。

「真ん中さお気持ちてあっげんとジャリ銭だげだどれ」
そういって覗き込むと千円札が入っていた。
「千円札は桜だべ。いっだな。千円札が見えるようにしておがんなねっだな」
そういって100円玉を入れ、女の子と一緒に撮影してもらうことにした。

「誰だこの親爺!女の子と並んでにやけでんな!」
「んだんだ、一緒に写るだげでセクハラだべな!」
この顔にピンときたら非難のメールください。

「フェンシング部が焼き鳥が」
なるほど串刺しということか。

「しゃねっけぇ、フェンシングの持ち手ってこだごどなてんのが」
ただの一本の棒が生えているのかと思ったら、
持ち手は赤いイソギンチャクのように三方に指のようなものが伸びている。

「え〜い持ってけドロボー」
「この太っ腹ぁ」
どうやら玉コンを何本持てるかギネスに挑戦中らしい。
※個人的感想です。ギネスの審査員は来ていませんでした。

若者は常にストレスを発散したがる。
ドスッドスッと重い響きを立てながら渾身の不満をぶつけている。
でも、ここだけの話、最初に蹴ろうとしたとき思いっきりひっ転んで、
立ち上がった後に恥ずかしさまぎれに蹴っているんだよねぇ。
「青春は失敗だらけの積み重ねで大きくなっていくんだべな」

まだ青い銀杏があと何日で黄色くなるかのカウントダウンの看板が木の下に立ててある。
「いやいやあの黒い看板は八峰祭まであと何日かのカウントダウンだがら」
「そういえばかつてはまっ黄色の並木の中で学祭だったような気がすっげんとなぁ」

「こっだい人が集まるなて、山形三大密集祭りの一つだべなぁ」
「三大てなになにや?」
「植木市とスズラン街の阿波踊りと山大八峰祭っだな」
「花笠まつりは?」
「残念ながら昔ほどんねもなはぁ」
時代は変わるし人々の志向も変わるから、
花笠まつりも変わっていかなければならないと一市民として危惧している。
花笠まつりに山大の踊りグループ「四面楚歌」が入っているのが唯一の救いだし希望だ。

「いままでなら黄色い銀杏の葉っぱの絨毯だっけのよねぇ」
立入禁止テープは何故ここに置かれているのかも知らずに落ち葉と戯れる。

若者たちのさんざめきの中、秋の花が揺れている。
やがて来る冬に戦(おのの)き、秋の終わりを告げるさんざめきそのものを啄(ついば)んでいる。

山大の中庭って、我が母校の庭を彷彿とさせる雰囲気がある。
あれから五十年。
学食ではカレーライスが90円だった。
奮発してコロッケを付けてもらった110円のカレーを食べたときは贅沢してしまったと心が痛んだ。
あのころのすべてが涙が出るほど懐かしい。
その思いが頭の片隅から沸々と湧き出てくるのがこの山大の中庭なんだ。

「なえだて贅沢なゴミ箱んねがい」
こんなゴミ箱だったら、蓋を開けて中身を吟味する連中が現れても不思議じゃない?

「なして学校の自転車置き場って、どこでも将棋倒しなんだずね」
「まるで自転車たちがなにかのボイコットしったみだいだどれ」

「24だずね」
「突然なにしたの?」
「んだがら八が三人で24だべ」
立ち去るスタッフの背中を眺め計算する自分が、計算高くてやんだぐなてしまう。

「こっだいいい表情なて滅多に撮らんねがら」
競技舞踏部ってなんのこっちゃと思う気持を横へ避けて、
皺くちゃな表情だけをアップで撮ればよかった。

自衛隊までやってくる八峰祭。
「はたらく車大集合」の一環かと思ってしまうべな。
「ちゅーか、なして装甲車の屋根さ女の子たちが登ってんの?」
クレーンさ登るなら理解できるけれど・・・。その意図は何?

「こっちはでかいげんとそっちはちゃっこいぞ」
「ほだごどゆたて素人なんだがら」
「全部さちゃんとタコ入ったんだべねぇ」
黒い手袋が盤上を右往左往する姿がおぼつかなくて微笑ましい。

青空に向かって青春〜!
いや曇り空でも青春は青春。
激しいダンスの練習に親爺は心ときめかないはずがない。
やっぱり若さに勝るものってないんだなぁと感激し、
親爺の視線が迷惑なのを感じつつ練習をしばらく凝視した。

「この間世界陸上あっけべ。あれと同じ高さのハードルなんだど」
「いやぁ高いねぇ」
スタートしようとする学生は、まっ正面に変なおじさんがカメラ構えているので心が乱れているようだ。

それでも思いっきりスタートしてくれたことに感謝したい。
学生はあくまでも学生。
社会へ向けていいスタートを切って欲しい。
この学生は親爺のまとわりつくような嫌な質問にもはきはきと答えてくれた。
私も面接官をしたことが何度もあるけれど、この学生は一発合格!
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