[山形市]街なか賑わいフェスティバル 滴花咲く雨の日に(2025令和7年10月11日撮影)

「看板さゆすばがっでだんだが?」
「んねぇ、寒くて自分で自分の体ばぎっつぐゆすばいっだのよぅ」
朝顔には厳しい季節になってきた。

「パソコンの中の基盤みだいだずねぇ」
「ほれだげ緻密に計算されで配置しったていうごどっだな」
富士ヨットはさしずめCPU、プロパンガスはメモリーの並びということか。

起き上がろうとしても体が固まって動けない。
「俺もとしょたもんだぁ」
落ち葉はやがて何事もなかったかのように誰かの足に潰される。

大福まんぢうといいう達筆が雨の中ではためいている。
人気の店だから人々は傘を片手に立ち止まる。

「電子機器はとにかく弱助だがらねぇ」
「んだのよ。濡っだら大変。あっというまにパニックっだなぁ。人も機器も」

「今時歩きたばこなてする人は山形さいねびゃあ」
「ほいずぁさておいでよ、見でみろあのガラス張りのビル」
いづのこめが山銀本店が昔よりでっかくなって出来ている。

「こう寒いどよぅ。どうしても暖かいのさ目が行ぐっだなねぇ」
財布を握りしめ湯気を透かして熱々を見守っている。

屋根はヌメヌメと雨に覆われ、人々は軒の下に退避する。

柳に腕押しではなく、柳の隙間を傘がゆく。

「雨から占領さっではぁ、テーブルも時間ば持て余しったどれはぁ」
そのテーブルを柳の枝が這ってゆく。

鎖樋を伝って雨が地面へ急ぐ。
勢いの余ってしまった滴は鎖樋からはじけ飛ぶ。

「しぇっかぐのイベントなのにねぇ」
「んだのよぉ、客足さっぱりだぁ」
「んだらオラホが買っていぐっだべ」
そんな会話を想像しながら雨脚をちょっと気にする。

子はベビーカーを気にし、母親は子を抱こうとし、
父は傘で二人を雨から守る。
これぞ家族の理想形。

ガラスを通して行き交うのは傘の流ればかり。
ショーウインドウの花たちは意気消沈し、雨模様を憂えるしかない。

今日も様々な音楽が街を覆うはずだった。
様々な音楽のポスター達は滴に濡れて雨音だけを聞いている。

ほっとなる広場も音楽に溢れるはずだった。
誰もいない空間ではオブジェが滴をまとって、
広場の閑散とした空気感を球の体に張り付けている。

「早ぐ始まらねがなー」
椅子たちに中止は知らされていないのか、
ずぶ濡れになってもじっと並んで待っているじゃないか。

「この間まであだい暑いっけのに初雪だがはぁ?」
「初雪の結晶だべが?」
「ほだな訳ないべ。シロタエギクさ滴がふっついっだんだぁ」

「滴だが皆して輝やいっだみだいだずねぇ」
「もっと輝いっだのはステッカーの東高の名前だべぇ」
その校章は滴に濡れても誇らしげに空を向く。

手作りの作品が一番街の通りをじいっと見入っている。
色とりどりの傘の揺れ動きは、まるで音符が音を奏でているように見えた。

「おだぐも大変だっけな」
濡れそぼった自転車は誰乗る人もなく雨に濡れている。
「せいぜい山ラーの宣伝だげでもさんなねっだな」
山ラーは気を取り直し、真っ赤になって滴の汗を浮かべてラーメン県をアピールする。

「誰が座って漏らしていったのんねべ?」
自転車は振り向きざまに軽蔑の目を向けてくる。
きっと誰も乗らずに不機嫌なんだべな。

隙間に逃げ込みたい気持ちは分かる。
それでも雨は逃がさず狭い隙間へも追いかけてくる。

ドキュメンタリー映画祭のでっかい幕がアズ七日町の正面にドーンと鎮座している。
随分変わった案内幕だなと思い、ちょぺっと触れてみる。
なえだて布地の感触。もちろん紙じゃなく荒めの麻糸みたいな感触だ。
これだけでもその発想に脱帽したくなる。
脱帽した頭にこの石ころが落ちてきては困るけれど。

荒めの生地ということで興味は裏側へ向かった。
やっぱりその生地を透かして向こう側が見える。
雨傘を畳んでアズへ入ろうとする姿が映画の一コマのような不思議な感覚にとらわれる。

「さんかげろ」
花笠ベニちゃんは答える。
「何さ3掛げんの?」
「んねず世の中危ないがらさんかげろてゆったのよ」
ベニちゃん世代に「さんかげろ=鍵かげろ」は通じない。

フクロウは思った。
人間は雨に弱いと。
「ちょっと待った。ミミズクんねがよ」
私は視力も頭も弱い。

「退屈だがら縄跳びすねが?」
左の赤いドアがいった。
「すっべすっべ、鎖の縄跳びがあるし」
右の赤いドアが同意する。
そして二人で悩み始める。
いったいどうやって跳べばいいのか。

「あら泣いてんの?」
「まさがぁ、ほっだな訳ないべしたぁ」
タヌキは首を上げ空へ目を逸らす。

意地悪な心が芽生えた私はより近くへ寄ってみる。
「やっぱりまなぐさ涙溜まったどれ」
「雨だずぅ」
タヌキの目玉は滴と涙が混ざりあい、寂し気な音色を奏でている。
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