[天童市]山形県総合運動公園 秋の色どり特売美(2024令和6年11月3日撮影)

ラ・フランスマラソンも盛況で終了し、後片付けが始まった。
「天の字が隠れっだがら童の字とラの字でわらて読まねが?」
「くだらねごど考えでいねでわらわら片づけろ」

「また来年も天気いいどいいずねぇ」
「文化の日は天気の特異日で必ず晴れるんだま」
秋の日が傾き、柱の影がどんどん地面を伸びていく。

NDスタジアムには色づいた樹木の影が湾曲して張り付いている。
モンテディオの千葉とのプレーオフ進出決戦を前に、スタジアムにも緊張感が漂ってきた。

「喉さ筋がいっぱいたってだどれ」
「ほだな失礼なごどゆうなず。モンテの勝ち負けで流した涙の筋なんだがら」

「あっちゃ行くど銀杏並木なのんね?」
人々は銀杏の並木へ吸い寄せられて遠ざかる。
樽の表面には昨夜からの雨が溜まり、鏡のように辺りを映しこんでいる。

樽の上にも三年、んねくて一晩。
落ち葉に擦り寄っていく雨水が表面をヌメヌメと覆ってしまう。

傾いた太陽の光は色づいた葉っぱに引っかかって輝きながらぶら下がる。
親子を温かい目で見守りながら。

「モデルば太い幹の脇さ立だせでモデルの撮影会しったんだどれ」
「はい、あっち向いてぇ。ちょっと微笑んでぇ。すこし俯いでみっか」
様々な要求をモデルに突きつけ、カメラマンは美を追及する。
「モデルはやんだぐならねんだべが」
「こいに人為的に作り上げる撮影の仕方は俺には向がねなぁ」

「雪けし虫がふわふわ飛んで、細かい星が舞ってるみだいだずねぇ」
「秋だも雪けし虫んねくて、雪呼び虫んねがよ」
「しぇっだなぁ、どっちにしても空気が柔らかぐなて気持いいがらプンプン飛ぶ虫なんだべぇ」

「葉っぱは中指ば突き上げてごしゃいっだ?」
本当はうまい具合にベンチへ舞い降りたことを喜んでいるポーズだったに違いない。

どこかで見たデザインの手付き(紙袋)が主を待っている。
そして何やら暖かそうな衣類?マフラー?が見え隠れ。
それだけで人々の穏やかな営みが見えてくる。

水面が徐々に陰ってきた。
まだまだ空には光りが残っているというのに。
「落ち葉だはいずれ眠るように水底さ沈んでいぐんだべがなぁ」

樹木たちは自分たちの色付いた葉っぱのオレンジ色を惜しげもなく水面へ降り注ぐ。
葉っぱの筏は色付いた水面を漂い、どこへ向かう当てもない。

「なんだが空が濁っていねが?」
「お前の心が濁てっからんねがよ」
「空さ葉っぱが浮いっだじぇ」
水面を撮って逆さまにしてみました。
「こういうことをすること自体、心が濁っている証拠っだな」

水面にも紅葉、そして石畳にも紅葉。
紅葉は貪欲にあらゆる場所を色付かせ、そしていつの間にか消えてゆく。

スマホも髪の毛も光りの縁で浮き上がる。
何が楽しいのかコロコロ笑う声に呼応して、プンプン虫たちが浮遊する。

「めぐっで字読まんねどれはぁ」
「バットの持ち込み禁止?」
それは危険すぎる。
「ベットの持ち込み禁止?」
誰がここで寝る。
「ヒットの持ち込み禁止?」
持ってくるもんじゃなくて打つものだ。

銀杏並木通りの脇を水路が並行して流れている。
飛び石は銀杏の上に浮かんだ浮遊物と化す。

この頃近いからとトイレに近づいた。
興奮を隠しきれないトイレはギラギラ感まるだしで身構えている。

「間もなく雪っだなねぇ」
「いつ降るんだがねぇ」
そんな声が枯葉からか細く聞こえてきそうな秋日和。

地面へ落ちた銀杏の葉っぱを光の筋が追いかける。
おっとベビーカーには紅葉のような赤ちゃんの手。
「こりゃ紅葉と銀杏のコラボレーションったなぁ」

ベンチに座ろうなんて人がいたら気をつけろ!
「先客が凄い臭いば巻き散らしったぞぅ」
「けっつさほだな臭いば染み込ませだら大変だべ」
「屁たっだ時に、実は銀杏(ギンナン)の臭いなんだて言い訳でぎっべした」
「もしかして中和してなんにも臭わねぐなっかもすんねし」

人は何故落ち葉を見つけると掌一杯にかき集めて、
空に巻き上げたくなるんだろう?
「はえずあ人間の本能としかやんねべ。それ以外に何があるてや?」

「ギンナンの臭いが苦手な人が付けていたマスクが?」
「誰が拾っていぐがもすんねがら、マスクの内側さギンナンの汁ば染み込ませでおぐが?」
「ヘラカラてうるさいったら、お前の口さマスクすろ」

「これがライトアップ用のランプなんだべが?」
一葉の落ち葉がランプにぬくもりを求めて入り込んできた。
「でもこの頃のランプは発熱すねがらあったかぐならねのよねぇ」

秋の色どりに囲まれてサッカーの練習とは、なんと贅沢な親子の休日。
周りの様々な色合いが、親子の所作と繋がりを見守っている。

「ナイスキャーッチ!」
こんなに必死になったことが最近あっただろうか?
秋の日が心の奥深くに入り込み、何故だか過去を顧みる。

今日最後の光りがスタジアムのタイルを撫でている。
タイルはあまりの光りの優しさに、虹色になって感謝する。

「ラ・フランスマラソンが終わったがら、ダガダガて片づけらんなねのよ」
NDソフトスタジアムは、片づけ人の一生懸命さを端然と眺めている。

間もなく太陽は西方の山に隠れようとしている。
スタジアムの壁は最後の煌きを放ち、より一層枝葉のシルエットが際立ってくる。

「五時前なのに薄暗いんだじゃあ」
カリヨンを見上げながら思う。
「夏は長いっけげんと秋はあっという間だっけずねぇ」
喉元過ぎるのは長かったけれど、暑さを忘れるのはあっという間だったということか。

スタジアム前の花壇にライトが当たる。
その向こうではオレンジ色が刻々と萎んできて青い闇が空を覆い始めている。

「家さ帰っべはぁ」と車のドアに手を掛ける。
フロントガラスは澄み切った秋の夕暮れをライブで放映していた。

モンテディオのクラブハウスが夕闇に紛れている。
来週末のプレーオフ進出決戦を思い、
建物に向かい二礼二拍手一礼したことはいうまでもない。
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