[山形市]花楯公園 印役8花楯2町内会夏祭り(2024令和6年8月10日撮影)

「印役八花楯二てよ、他地区の人はなんて読むんだが分がらねべな」
「んだず。まずどごで区切っか分がらねもな」
二つの地区が合同でと理解するまで数秒間立ち止まる。
そんなおじさんをどんどん追い越して、祭り会場へ人々が次々と入り込んでいく。

「人の顔は気いつけで撮ってけろ」
まずは責任者の方に撮影許可をと訪れたら、おっかない顔のおじさん。
一升瓶でも持ってきたら良かったか。

天気予報が気になっていた人々は傘を何本も用意し、
とりあえずは傘無しで済みそうだと傘の置き場に困惑しベビーカーに引っかける。

傘はそっちこっちの手摺に引っかけられ、
ブランコは鉄柱に引っかけられる。
「今日だげはオラだも邪魔者だもな」
ブランコはえんつたげでチャリチャリと呟いている。

「安いべ安いべぇ!」
「え〜いめんどくさい。もってけドロボー!」
そんな言葉がふと頭に浮かんだ値段表。
そんな浮ついた人々の心を見透かしている、ケースの中の千円札。

「いまや唐揚げは国民食だびゃあ」
「んだっだ。こだなあっという間に皆の胃袋の中だじゃあ」
涎が垂れないようにぐっと接近して撮ってみた。

食欲をそそる香ばしい匂いが、油の泡からこれでもかと放出される。
「若いがったら、腹くつぐなるまで食うんだげんとなぁ」
胸やけを恐れて、なかなか手が出ない存在になってしまったのが悔しい。

「やんばいに焼けだんねがよ」
「もうちぇっとだげ火ば通してが」
焼き鳥串をくるくる回す指は腱鞘炎になりそうだ。

焼き鳥を見入る目は真剣そのもの。
額から滴る汗は玉になっている。
膨らんだ玉の汗は、ツツーと焼き鳥に落ちる。
「それが塩味効いで益々旨ぐなんのっだなぁ」
※実際には汗は一切焼き鳥に落ちてません。

「なんでかき氷だげお子ちゃま言葉なんだ?」
「お子ちゃまでも理解できるようにだべ」
徹底されたアイデア溢れるSDGsの取り組みが随所に見られる夏祭り。
これぞ日本の祭りだと、祭りの盛大さよりもゴミへの取り組みに感動してしまった。

山形の牛乳パック大集合!
「これもSDGsの一環ったなね」
「今の会祭りずぁ、こうあるべぎよ」

「千本引きなて、ほんてん千本あるんだがよ」
そんな子供じみた疑問を振り払い、よっくど見れば、
あの5円払って三角錐の飴玉をビニール袋から引っ張り出すのと同じだと思い出す。

人生初の掬う作業。
将来は地球を救うような人間になるんだぞ。

「なしてお母さんはサンダルなのに、僕たちは長靴なんだべ?」
「お母さんはお洒落だがら、長靴なの履がねの」
その答えに納得はいかないし、一応育ててもらっている身なので、文句も言わず椅子に座る。

「この技ば会得するまで10分よ」
「ほだい早ぐ会得するいんだがっす?三年ぐらいかがる高度な技だど思たっす」
「トングで掴んで上さ上げるだげだがら」
あんまりずっと上げでっど冷めでしまうべな。

消火器は360度に注意を払う。
その証拠に、360度の光景が赤い曲面に映りこんでいる。

「もっと詰めろず。俺座らんねどれ」
「四人で満杯だはぁ」
ハタと気づいた。
今の子って、性格は極めてグレーゾーンを好むと聞いたが、
ファッションは白と黒ばかりなんだ。

「藤の棚に集う人々よ。こだな脂っこい食べ物の匂いは今日だげだがらな」
藤棚は筋肉隆々の幹を蠢かせて食欲を我慢する。

「「印八花二」って人の名前んねよね」
この地区の人々だけが知っている奇妙な呼び名。
「なして印役八と花楯二てほだい仲いいんだべなぁ」
ほだなごどより、テーブルのびちょびちょば拭いでけろ。

鉢巻巻いて息巻いて、食うぞ冷ったいかき氷。

印役八花楯二の地区は予算がたっぷりあるのだろう。
マジシャンまで呼んで子供たちを魅了させている。

このマジシャンが凄い。
なんと、あっという間に顔から光りが放たれた。
観衆の拍手はいつまでも止まない。
※光りは背後の照明塔でした。

マジックショーに魅了されている間にも、
背後の滑り台の階段は、
水滴を垂らして提灯の灯りを取り込んでいる。

夕方も遅くなり、いよいよ祭りも佳境。
そしていよいよ灯りも際立ってくる。

「なえだてバリケードみだいだずねぇ」
印役八花楯二の地区の人以外は入ってダメって訳じゃないらしい。
よくよく考えれば、受付のある入り口のほうさ行げという事なんだな。

ちゃんころまいのポーズ。

甘えのポーズ。

ブランコの三角形に守られ、目を三角にして受付の管理をするポーズ。

「ちぇっとだげ場所貸してけろっす。今日だげだがら」
提灯は遠慮するということを知っている。
でも、その灯りだけは遠慮ない。
巻きつけられたブランコのチェーンは眩し気にチカチカ光る。

名残惜しいけれど夏祭り会場「花楯公園」の外へ出る。
目の前には「町内会以外の人は出さないでください」とある。
そうです。ゴミ集積所の看板です。

ゴミ集積所のトタン屋根が、灯りを反射させながら夏祭りを見入っている。
その心は「食たカスはきちんと分別してだせよぅ」に違いない。
飛ぶ鳥、跡を濁さず。
食う人々、花楯公園を汚さず。
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