[上山市]上山城・元城内・御井戸丁・湯町・鶴脛町・新湯 お城のふづりをぐるっと巡る(2024令和6年6月8日撮影)

久しぶりに上山へ来てみたら、迎えてくれたのは多くの看板。
「なんでも禁止すんのねくて、推奨する看板もあっどいいんだげんとなぁ」

「さく」の部分の言葉が「城」でなくてよかった。
「んでもよ、戦国時代だったらお城も危ないっけのんねの?」
「ほーが、んだがら周りさ堀ば掘ったり、石垣ば築いだりしたのっだなな」

上山城をバックに見たことのないスポーツに興じる若者がいた。
真ん中に小さな円形のネットがあり、それにボールを投げているような、ぶつけているような。
かなり激しい動きなので私もついていけなければ、カメラもついていけない。

「なんていうスポーツなんだっす?」
「〇×▽◇だっす」
はきはきと答えてくれたが、家に帰ったら忘れていた。
「よっくどスポーツの事は分がたがら最後にみんなでジャンプしてけねが?」
この躍動に上山城もさぞ喜んでいることだろう。

「おじさんは不審者んねがらな」子供たちと明るく挨拶を交わし、
緑のシャワーを浴びながら、子供たちと同じ方向へとプラプラ歩む。
「キャーッ!不審者が追いかけてくるぅ」
皆バイバイしながら小路の奥へ笑顔で逃げていく。

「これよこれ。上山はんだがらおもしゃいのよ」
上山の街並みに酔いしれ、坂道だらけの径にフーフーいう。

「こごも空き家なんだべなぁ」呟きながら構図を考えていると、
背後のほうから「不審者〜!」と子供たちの囃し立てる声。
背後には近代的な上山小の校舎があり、その正門付近から子供たちが元気よく声をかけてくる。
ずーっと私を追いかけていた子供たちには苦笑するしかない。

「昭和満載だべ?凄いど思わね?」
「確かに左隅の「紅花の山形路」のステッカーは昭和の象徴だべなぁ」

こんなに心ワクワクするような通りは山形市内には少ない。
一体山形市内とは何が違うのだろうといろいろ考えながら、
定期的にペットボトルの水分を摂る。

そして気づいた。(今頃)
山形市内と違って上山城周辺は丘のような場所。
つまり坂だらけなんだ。
そして坂のきつい場所はそのまま杜になっている。
それに加えて温泉町。
「んだがら歩いでいで飽ぎねんだなぁ」

やや錆付いた文具の看板。
その整然と並んだ看板の姿は、
この文具屋さんのセンスの良さをそのまま現わしている。

「西山ほたる祭り」?
「いったい何するんだべ?どだな祭りなんだべ?」
俄然興味が湧いてきたのは、
文字よりもその版画のような絵のような不思議に味のあるメイン画だった。

「暑いし坂道だしねぇ」
ふうふういいながら観光客は武家屋敷通りを、
あちこちきょろきょろしながら日傘を頭上に進んでいく。

武家屋敷通りには水路があり、そのせせらぎを覗き込むと山ほど何かがぷかぷか浮かんでいる。
「柿の実が赤ぐならねうちに落ぢでしまたみだいだげんとなぁ」
水路の上に視線を戻せば咲いているのはツツジと芝桜。
なんだか分からずに立ち去るのは、今日の天気とは反対にどうにも気持ちが晴れない。

「でっかな鍋だが?」
「さっきの看板もんだげんと、錆は味わいの一つなんだべな」
みな使い古された物がセンス良く配置されている上山。

坂道を軽トラがギューンと金属音をたてながら登っていく。
その音と風圧にフサフサの羽毛を膨らませ、機嫌がいいのか悪いのかオトギリソウ。

誰が見ても「シャッター通り」という言葉が頭に浮かぶだろう。
昔日を思えば、このうらぶれ加減には心が痛む。
「でも痛む心を逆手に取った街おこしってないんだべが?」
「撮り鉄んねくて、撮り鉄錆大会なてなんたべ?」

「錆さこだわっげんと、錆具合てほんてん絵になっど思うのよね」
「んだがら絶対なにがこの通りば活がす方法があるはずっだず」
「おだぐは外部の人間だがらほいに言えんのっだな」
シャッターの冷たい言葉と養生テープの憐れむ視線には結局立ち向かえなかった。

「ただ暑いがら人通りが少ないだげだべ」
「写真ば加工して人並ば消したのんねがよ」
なんとでも言ってくれ。
ただ私はこんな雰囲気の通りが大好きだ。

「この頃ニュースで騒がっでっべ」
「んだず秋田なの大変なんだがら」
通路の奥で壁に寄りかかる幟を見つけ、
「上山さも熊はいっげんと、やる気ないみだいでいがったぁ」

「ただ準備中て体言止めんねのがお洒落だずね」
「準備中ていう言葉さ、なのですなていう言葉ば足した人は相当センスいい人だばな」

「石膏だが粘土だがしゃねげんと、この前さグレゴリーペックどオードリーヘップバーンがいでみろ」
「ローマの休日の名場面の出来上がりだじゃあ」
「あれは真実の口さグレゴリーペックが手ば入れるシーンだべしたや」
「これは山形県の形が。んだがら上山市の部分だげ手入れるいように凹んでるんだ」

「逃げねように鎖で繋がっでだのが?」
「んね、溶けで消えねように」
でかい客引きオブジェにはお客の冗談を軽く受け流す対応力もある。

「みんなほだい笑顔でなにしたのぉ?」
段ボールたちは積み上げられて壁の隅に置かれているだけなのに。
笑顔を絶やさない健気さに、こちらは思わず泣き笑いしてしまう。

地面を見つめて咲いているホタルブクロを這いつくばって真下から覗く。
屋根や電信柱が「なにしてんだず、このおっさんは」という表情で見下ろしてくる。

「あど乾いだがら早ぐ家(しぇ)さへっでけろーっ」
シューズは大口を開けながら叫ぼうとするけれど、
それに気づいているのは向いの蔵ばかり。

「桜どが案山子と一緒に撮っど上山城は映えんのんねんだが?」
「ほいに世の中の常識にとらわっでダメよぅ」
「常識通りに撮ったら凡作しかできねんだがら」
たまたま工事中のため重機が目の前にデンと構えている。
その現実を目の当たりにした自分への言い訳を必死に考える。

「かかし茶屋ってどこですか?」
「この上だげんとよ、ところでそのキャリーケースば引き摺って上ってきたの?」
「んだのぉ、重だくてしゃあますすんのよぅ(訳:そうなの、重くて持て余してるのよぅ)」
坂道の町上山でキャリーケースを引き摺りながら歩くのはお勧めできない。

「あっつなのが?」
「んねずほっつだず」
「ほっつはこっつよりあれっだべな」
「あれってやねでちゃんと説明してけろ」
「んだらほっちゃいってちゃんとあっつば説明するっだべ」
天守閣に登ればみんな気持が高ぶってくる。
TOP