[山形市]はたらく車大集合 子供のためなら休めない(2024令和6年5月5日撮影)

七日町の中心部が大きく変わった。
真ん中が新たに生まれ変わった十一屋。
その右側(南側)に改修された御殿堰が流れる。
「昔はジャスコと十一屋に挟まっだ、暗くておかない通路だっけずねぇ」

せせらぎには思い思いに人々が集い、
せせらぎを見るでもなく、スマホに見入るか子供をあやすか。

「おらほだ(私たち)さは進むしかないし、未来しかないずね」
「ほだごどない。人生一度は停まって振り返れ」と、止マレの文字がいっている。

コデマリはあまりの人いきれにフウフウいいながらチカチカ光る電球を見つめている。
「んだて今日は一年に一回しかないはたらく車大集合の一大イベントだものぉ」

「9月の芋煮会さも来てけろなぁ」
「うん分かった。涼しいごんたら行ぐ」
芋太郎は暑さで頭の具たちが煮えたっていながらも笑顔を振りまいている。

「大沼跡地と済生館はこいに生まれ変わるんだど」
でっかい看板が一生懸命訴えているけれど、人々は今のことで精一杯みたいだ。

「こちょばしてけっだぐなるぅ」
「はたらく車のイベントさなして毎年赤ちゃん人形が出てくるんだがしゃねげんと、
ま、いっだべな。はたらく人形もいだてよぅ」
「ほだいちゃっこいどぎから働がせんのがぁ」

はたらくく車を親も楽しみつつ、
子供からは目が離せない。
ステップを降りるときには手をさだす。

「山形さ永ぐ暮らしても、どごば写してっか分がらねべ〜」
「聞ぐだい?」
「別に」
「ったぐぅつまらねぇ。AZの正面玄関の門構えば見上げでみろぉ」
その梁や柱が麦わら帽子を映し出して、30度越えの今日を表現している。

一番街の伸びる先には、初夏の暑さで薄青くなった笹谷峠や雁戸山が見える。
昭和の一番街はこんなに綺麗な歩道がなかった。
その代わり人々の雑踏は切れ目がなかった。

車のタイヤで擦り切れた横断歩道が、ザラザラとサンドペーパーのようになり呻いている。
その上をスススーッと真っ白い日傘が涼し気に滑ってゆく。

「フラッペとかき氷の違いて知ってだ?」
「かき氷は削った氷さシロップば掛げだもので、フラッペは氷ば砕いでドリンクど混じぇだものだっす」
「ほだな蘊蓄聞がんたていいず、一刻も早ぐ食だいだげなんだがらよぅ」

「うんうん、ほんで?」
「ほしたら、なんだっけどう」
「ふーんおもしゃいねぇ」
女の子たちの会話に耳を傾けるコデマリは、
もっと聞きたいと、人の領域にまで思わずはみ出してきた。

今や癒しの定番と化した七日町の御殿堰。
菖蒲の葉は屋根から垂れ、鯉は暑さを避け軒先に横たわる。

「なんだて鯉のぼりも子供だば喜ばせるためには大変なんだずねぇ」
鯉の口には内側に補強のための厚紙が張られ、否、ダブルクリップで挟まれている。

黒いはずの屋根は照り返しで白っぽくなっている。
もちろん鯉のぼりは照り返しを避けるために体を湾曲させて日陰に引っ込んでいく。

格子からは子供たちの歓声と、子供を叱る親の声が、
強い日差しとともに入り込んでくる。

「みんな小さな鯉たちは上ば目指すんだべなぁ」
「んねぇ。堰の水さ落ぢんのやんだくて逃げっだくてたんだぁ」
「鯉なのに?」
「近頃の鯉は濡れんのおかないんだべな」

どこの世界にもいうことを聞かない者はいる。
みんな前を向いて先生のいうことを真面目に聞いているのに、
青い一匹だけ後ろを振り返りこっちを見ている。
私が親だったら恥ずかしさと叱れないもどかしさで睨んだ事だろう。

それぞれの枠に収まって、それぞれの家族がくつろいでいる。
けっして他人にちょっかいを出さず、他人からちょっかいを出されるのも嫌っているようだ。
やはり安定した枠組みの中で暮らすのが日本人は好きなんだなぁ。

「ほれ、俺からのでっかい愛だがら」
「ほっだなちゃっこい愛なの一つまみっだべず」
風船は夫婦にだけわかる会話に聞き入っている。
そして聞きたくなかったと萎んで後悔する。

「なんぼ暑いったて、玉こんは別だもねぇ」
「こいに玉ば抑え込んでよ、割りばしば刺すのよぅ」
この刺す感覚とむぎゅーっと奥まで刺さっていく感覚は山形人にしか分からない。

薬缶は暑さで青息吐息となり、その口は熱い息を吐いている。
ふっくらと膨らんだ体には緩慢に動く雑踏が映りこむ。

雑踏から聞こえてくるのは暑い暑いの声ばかり。
そして氷の中では「早ぐ買ってけろーッ、寒くてわがらねぇー」の、
ペットボトルの叫びが満ちている。

「急げぇ、早ぐすねどあっというまに水の泡だがら」
「氷は水になるだげだべ。水の泡になんのは売る側の努力と売上っだなぁ」

破れたポイを悲し気にじいっと見つめる子供。
頑張れと水面に煌く光。
そしてしゃね振りしてあちこちに混じるうんこたち。

体全身をくねらせて心に刺さる音色を醸しだす。
名探偵コナンの主題歌に耳を傾け感動するおじさんが思わずドアップでシャッターを切った。

通りを行く人々が満ち、サックスの音色が満ちる。
その音に心惹かれた人々は足を止め、三々五々集まり始める。
美しい音色に満ちた一角は現実を忘れる異世界になっている。
「んでも、近くまで寄っていがねで遠巻きになてんのは山形人独特のわにる文化っだなねぇ」

「まだまだ頑張らんなね」
警備のおじさんにも家族があり、
その家族も連休を楽しみたいことだろう。
でも誰かが楽しむためには誰かが働かなければならないという矛盾。
みんな一気に楽しむということは無理な社会の仕組み。

「なえだて帽子ば斜に被ってお洒落だずねぇ」
サトウのサトちゃんはまんざらでもない様子。
「おだぐばよぅ、メルカリでなの売ったら凄い金額になっべなぁ」
その後サトちゃんが、鼻の穴もないのにフンッと鼻息荒く怒ったのはいうまでもない。
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