[山形市]県民ホール・霞城セントラル 闇は日暮れ過ぎに光へと変わるだろう(2023令和5年12月23日撮影)

寒くてやんだげんとなんとか駅西にやってきた。
駐車場から下を見下ろすと車の屋根にささやかな雪が積もっている。
北陸のほうは大変な雪だげんと、山形は今のところこの程度。
今からどうなっか分がんねげんと。

粉雪がちらほらと舞う寒気の中で、
子供たちの歓喜の声が空へ立ち上り雪に混じっていく。

地面はグレーか茶色か黒いもの。はたまた雪が積もれば白いものとの思い込みを、
思いっきり翻してくれるプロジェクションマッピング。

建物の格子の中にはめ込まれているのはもちろんガラス。
その格子模様の中を将棋の駒のように人々は移動する。

「あ、捕まえた!」
子供は掌を広げ粉雪を受け止める。
受け止め損ねた雪が地面に結晶となって張り付いた。

光りの模様は目まぐるしく変化する。
まるで地面が動いているようで、自分の立ち位置が不明確になる感覚に襲われる。
「ま、実際の立ち位置も不確かなのもなんだげんとね」

「世の中プロジェクションマッピング流行りだずねぇ」
「んだず、年中どごでも地面がこだなごどなたら眩暈して歩がんねぐなるねはぁ」

暖色系や寒色系に変わる地面を女の子が走り回る。
その女の子から離れまいと、影もすぐ脇をついていく。

「この光りは地面から沸いでくるんだが?」
「まだぁ、知ってでほいなごどいうもねぇ」
県民ホールを見上げれば、粉雪の向こうに地面を照らす光りが凍てつく空とともにいる。

なんとも不可思議な世界を体験し、ふわふわしながら霞城セントラルへ向かう。
霞城セントラルの西側入り口前には数センチの段差が何か所にもある。
もちろんというか必然というか、数センチの段差に躓いてビダーッとひ転んでしまったのは言うまでもない。

「綺麗だねぇ」
子供は感嘆の声を上げる。
「お母さんは首が・・・」
常に空を見上げるようなことをしていなければ、誰でも首が・・・となってしまうもの。

「見でみろほれ」
お母さんは学校の壁面に輝くツリーを見せようと子供に声をかける。
その脇には「教育費無償化対象校」の懸垂幕がキリっと目立っている。
お母さんは思わず、そっちに目が吸い寄せられてしまった。

昭和の駅西は痴漢蠢く真っ暗道。
今は原色の光り輝くウキウキの道になっている。

仕切りの両側で女性がスマホを見ている。
二人は心にも仕切りをしているのか、お互いを意識しつつ顔を合わせる事もない。

「毎年霞城セントラルも大変だずね」
「なにがや?」
「んだて必ず毎年ツリーば吊さんなねんだじぇ」
「はえずぁ危険で大変な仕事だっだなねぇ」
「んねくてよぅ、予算が大変だべてゆったのよ」
ツリーから立ち去る二人の会話を慮って表現してみた。

今年のツリーは面白い。
輪っかの段々重ねでツリーば表現してるんだがら。
ツリーの下で輪を描くように移動すれば、ツリーの輪っかもグルングルンと周っているように見える。

「ちゃんと玉ば入れろぉ」
「んだがら金色の玉がお互いの手の輪っかさ入るようによぅ」
二人はハートの手の中に玉を入れようとスマホを動かし悪戦苦闘。

観客と演奏者と、そして幕の裏の出番待ち。
それぞれ立場は違うけど、クリスマスを楽しもうという心は繋がっている。

上から見下ろす観客を見下ろす。
この広大な空間に清らかな音色が広がりながら反響する。

心は一つ。帽子も一緒。
「俺もあだいいっぱいの若い女性から注目されっだいず」
「んだら指揮者になたらいがんべ」
やっぱりあり得ないと事と意気消沈し、カメラを握る手から力が抜ける。

アトリウム中に張り巡らされたイルミは、人々をオレンジ色に包み込む。

「もっと光りを!てゆったんだが?」
「皆んな手ば伸ばしったもねぇ」
「田中くんみだいにジャガジャガジャーンてゆったんだべ」

イルミをアップで撮ってみた。
一個一個はか弱く見えるけれど、皆が集まれば人々の心を優しくできる。
「電気代かがっべねぇ」
「こだんどぎ無粋なごどゆなず」
「んだて人の心ば優しくすんのも銭次第だじぇ」
人々は幸せの裏側を知ってはいけないし、知れば知るほど辛くなる。

兎に角不審者と思われてはならない。
その危機感から、聞かれもしないのにべらべらと不審者ではないと、
ホームページのアドレスやプロフィールを喋りまくる。
二人の女子高生は引いてしまい、あまりに喋りまくる中年オヤジをかえって不審に思ったことだろう。

「あんまり動きがないどおもしゃぐないなぁ。んだらジャンプしてみっか」
監督気取りであれこれと女子高生に注文を付け、しかも何度もやり直しをしてもらう。
こんな変質親爺のいうことを聞いて躍動してくれた女子高生さんありがとう。
TOP