[山形市]やまがた秋の音楽祭 青空へ更地へ響けマーチング(2023令和5年10月14日撮影)

「なえだてまっさらだずねはぁ」
「山形市民なら来たどぎない人いねっけくらい親しまっだんだべげんとなぁ」
「これが時代の流れっだず」
旧県民会館が更地になって年寄たちは懐かしみ、
若い人々は新たにできる市民会館に期待する。

「いい天気だど気分までいいま」
山形のような雪国に住んでいると、いい天気が限りなく愛おしく感じられる。
遠く雁戸山は青空の中で色づいている。

県民の自慢でもあり山形県の象徴でもある文翔館の脇。
それでも咲くのはミヤギノハギ。
「ヤマガタノハギてないのが?」
「宮城県とも仲良ぐさんなねっだな」との声が自転車に乗って遠ざかる。

彼岸花の季節は過ぎたが、日陰にはまだまだツンツンと幾輪か咲いていた。
太陽の光りを受け、今年最後の力を振り絞り真っ赤に発色している。

「こだな光景に出会えるなて、今ば生ぎででいがったー!」
「んだて昔は県民会館、将来は市民会館になっげんと、その転換点ば目の当たりにしてるんだじぇ」
「ほだい長文でしゃべらんたてみんな分がてっから」

「なえだずまんず!たまげだなぁ!」
旭銀座にこれだけの人だかり。
映画館だらけだったころの賑わいをふと思い出す。

「こだな光景に出会えるなて、今ば生ぎででいがったー!」
「んだて昔は山銀、将来も山銀になっげんと、その転換点ば目の当たりにしてるんだじぇ」
「おんなじみだいなごど、さっきもしゃべったけずね」
それにしても七日町・旅籠町界隈で一気に建物が消え、新たに生まれるのは珍しい。
山形市の歴史の転換点であることは間違いない。
「山形駅前はいつまで経っても空地のまんまだげんとな」

文翔館前庭で千歳小のマーチングバンドがリハーサルをしている。
その響きに羽を震わせて、トンボは一等席を独占する。

「なにするんだべワクワクするぅ」
「山形でも有数のマーチングバンドが始まっから待ってろな」
少年の頭から背中にかけてを、秋の日差しが包み込んでいる。

一気に晴れた山形市。
あまりにも強烈な日差しの中でリハーサルは続く。
それぞれの奏者の早い動きについていく地面の影も大変だ。

指先からはやるぞ!という気が漲り、
本番前なのに会場には一気に緊張感が充満する。

金管楽器が縦横無尽に動き回り、
その度に、光りも追いかけて辺りに光りを照り返す。

一分の乱れもなくリハーサルは続く。
本番前からすでに観客たちは感動を禁じ得ない。

「よーしいくぞー!」の前に楽器は芝生で小休憩。
でも、皆の緊張感と青空はしっかり金管楽器に映りこんでいる。

「あのトサカみだいなはなんだ?」
「日差しば受けで輝いっだどれ」
「羽のように舞い、蜂のように刺すってが」
なんかまちがったことを思い浮かべながら、
でも、蜂のように人の心に刺すものがあるのは確かだろうと断言する。

「ドガーンッって発射しそうだずね」
「んだがら素人は困んのよ。バズーカ砲んねんだがら」
もうワクワクが止まらない私の心臓。
「不整脈にならねどいいげんとな」

遂に始まった、山形のマーチングバンドをリードする学校のマーチングバンド。
観客たちと街並みのビルたちと青空がみんな文翔館前庭を注視する。

これは凄いと、脇からも正面からも撮るために、
急いで文翔館二階からダガダガと階段を駆け下りる。
すでに心臓がバクバクするのは走ったせいか感動のせいなのか分からない。

旗の舞いも美しいけれど、その旗を持つ伸びやかな細い腕のラインも美しい。
きっと厳しい練習を重ねてきたのだろうと彷彿させる舞い姿。

「こっだいすんばらすいもの見せでもらてぇ。冥途の土産っだなぁ」
おばちゃんたちは目の前に繰り広げられる溌溂とした響きと舞いに感極まって、
微動だにせずマーチングバンドに見入っている。

「見たか。これが山形をリードするマーチングバンドの真骨頂だ!っちゅう感じだずね」
観客たちはその整然としてきびきびした動きに魅了され、
現実を忘れ秋の日の一日を楽しんでいる。

溌溂という言葉はこのためにあった。
旗が波打ち、光りを粉々にして辺りに散りばめ、少女は思いっきり胸を張る。

「あだいちゃっこい手が、あだい重たそうな楽器ば支えでりゃあ」
大したものだと子供たちに向けられる目は、皆バンドに賛辞を惜しまない。

鍵盤を追う目は真剣そのもの。
見守る観客は興奮に手に汗握り、鍵盤奏者は緊張をぎっつぐ手に握っているようだ。

これからの山形を担う子が空に手を伸ばす。
指先からは未来が迸り出る。
青空はもちろんそれに呼応する。

金管楽器のあちこちが光りを反射する。
それは太陽からのご褒美か。
光りは空を一線に断ち切る旗を波打たせ、
子供たちの額を腕を躍動的に輝かせる。

その緊張と喜びに満ちた顔を写せないのがなんとも口惜しい。
こんなに躍動する姿を顔を是非留めておきたいが、
肖像権やらなんやらがそれを許さない。
皆さん、旗を大きく振っている子がどんなにいい顔をしているか想像を膨らませてほしい。

日の光をガイロガイロかき回すように駆け回る子供たち。
「ガイロガイロなて失礼だべぇ」
「ブワブワでなんたや」
「ん〜、フワラフワラもんねしなぁ」
筆舌に尽くしがたい舞いに遅れまいと、影も一緒に地面を駆け回る。

舞は空中できれいな円を描く。
クライマックスが近づいた。
観客たちは感動に口をぽかんと開け魅了されるばかり。

「っだな太陽が強すぎっから、影さ隠っで見っだのっだなぁ」
すっぽり影に身を包み、その身はマーチングバンドの音に包まれる。

感動の演奏が終わり、その余韻が辺りに漂っている。
色づき始めた樹木はぐんにゃりと曲げられて青空に浮かび、
文翔館も体を反って金管楽器の淵にへばりつく。

始まりがあれば必ず終わりがある。
今日一日を締めくくる作業もまた大切だ。
「ドラば片づけんのも大変だずねぇ」
「ドラドラおらも手伝うが?」
と思いつつ、その演奏を終え満足に浸りながらのドラ運びを、
感動に満たされながら追い続けた。
千歳小・滝山小のみなさん、日常生活の現実をひと時だけでも忘れさせてくれてありがとう。
注:今回のマーチングバンドの撮影にあたり、写真には千歳小のマーチングバンドと滝山小のマーチングバンドが
混在しているとのご指摘をいただきました。
上が赤の衣装は滝山小で、白が千歳小とのことです。
どちらがどちらの学校か分からずに撮影している私のボケ具合に意気消沈しております。
あまりのすばらしさに千歳小・滝山小の違いも分からず撮影したことを両校様に謝罪するとともに、
両校様のマーチングバンドのすばらしさをこの写真にて感じていただければ幸いです。
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