[山形市]両所宮例大祭 力強い太陽に汗光る(2023令和5年8月1日撮影)

「両所宮の例大祭ば祝うみだいな青空だなぁ」といったらいいのか、
「また今日もエアコンば付けねど寝らんねなはぁ」といえばいいのか、
青空なのに心は晴れない暑さの山形。

すぐそばの両所宮から祭りの浮ついた空気が祭りさ来い来いと誘ってくる。
それでも黙々と長袖で工事をする責任感ある大人たち。
長袖ついでに誘いの声にも耳もふさいで工事に邁進するしかない。

どだな隙間さ植えらっでも、
やっぱり太陽を探すのがひまわりの性。

「なえだて今日はお祭りがぁ、暑いし仕事だしで、おらださ関係ないなぁ」
子供のころに行ったお祭りは遠くなりにけり。
行きたくても仕事に縛られるお父さんたちへ、太陽は残酷に熱波を送り続ける。

「おらだより真っ赤で濃いんだげんと」
「んだずねぇ、自販機の色ったら、まるで人ば誘てるみだいな色だずねぇ」
自販機の隣に咲いてしまった運命に嘆くオニユリたち。

「俺の口さ郵便物ば入れに来る人いっからどげでけねが」
せっかく咲いて喜んでいると、ポストに邪魔者呼ばわりされて、
俯いてドブを眺めるオニユリ悲し。

「真夏の百日紅は真っ青な空さ入道雲が浮いでいっど似合うのよねぇ」
現実は甘くない。
百日紅の背後には工場の電線が縦横無尽に張っている。

掌を開いてそっと近づけ、花弁に合わせてみた。
ちょうどおんなじ大きさだった。
芙蓉の花弁と気持ちが通じたような気がした。

昔から変わらない光景の両所宮界隈。
「いやいや街並みは年取るんだず。元気ハツラツの看板ば見でみろ」
元気ハツラツどころか、ちょっと触れたらパラパラっと崩れ落ちそうな錆色。

露店が軒を連ね、学生や子供たちが三々五々訪れる。
「いわせでもらうげんとよ、昔なの両所宮前の通りば通行止めにして、
何百メートルも露店が並んでだんだっけがら」
いやいや言うまい。昔話ほど子供たちに嫌われることはない。

神輿担ぎや太鼓たたきが何時からあるかなんて何も考えずに来た。
んだもんだがら、神輿は片づけられる途中だし、太鼓たたきはまだまだ先。
だからこそ、その間隙には緩んだ空気が漂い、青空も紙垂も一旦休憩という安堵感が境内に充満している。

「こいにして、あいにして、ほいにすんのんねがよ」
「んねず。あいにして、こいにして、ほいにすんのよ」
後片付けも準備も一年に一回だから、なかなか流れるようにはいかない。

「お前も派手に頭ば叩がっだなぁ」
「おまえこそ思いっきり陥没しったどれはぁ」
二人は見合って、お互いを笑いながら称えあう。

「早ぐ氷ば持ていがんなね」
「池の水が熱湯になて、ザッコだが口パクパクしったがらが?」
「んだがもすんねし、んねがもすんね。とにかく急ぐがら」
ブロック氷はあっという間に目の前から走り去ってしまった。

「はえずぁいがったなぁ」
「普通にお祭りするいくていがったっだず」
「なんぼ暑いったて、こればっかりは辞めらんねま」
祭りの空気に何十年と触れてきた二人の会話は柔らかい。

あまりの暑さは樹木にも少なからず影響を与えているようだ。
「んだて、テントの上さ影がぐったりして横たわったじゃあ」

途中まで燃えた灰は落ち、燃え残った赤い輪っかはどうしたもんかと途方に暮れる。
地面に置きっぱなしにされ誰も気にも留めてくれないので、
蚊取り線香は暑くても自分で発火できずに悶々とする。

「まだ飲んでんのが?」
「うるさい、あっちゃ行げ」
タヌキはいつも同じ場所で飲んでいる。
「なして飲んべえのタヌキさなの賽銭置いでいぐ人がいるんだべ?」
タヌキはニヤッと笑ってはぐらかす。

「手離すなよ、絶対離すなよ」
「うん、わがた」
「どご見っだのや、手離すなてゆたべ」
手は離れ、視線もどこかへ向けている。

これがあるから祭りは辞められない。
紅白幕の前で今や遅しと待機するビールたち。

両所宮の杜はいつも薄暗い。
だからこそそれを背景にした露店がカーっと目に入り、
あっという間に人だかり。

「準備は順調だが?」
「演芸ショーの張り紙が一枚足りねくてヨとーが一枚になてしまたはぁ」
「演芸シヨ、_(アンダーバー)だな」

「行ぐ?」
「行ぐに決まてっべず」
女の子たちはすでにコンクリの遊具へ射程を定め歩み始めている。

「ウイーッ、うめぇ」
慣れない蓋の開け方に苦戦した末に飲むラムネの味は一味違う。

「あんまり暑過ぎで、人の出も悪れくてなぁ」
「夕方なっど、今度は仕事帰りの人だもいっぱい来っからぁ」
すだれ越しに熱気の間をゆるりと会話した気分。

「お前は秋の使者だべ、まだ出番早いんねがよ」
「んだて、おもしゃそうだがらちぇっと来て見っだっけのよ」
次の画像に続く。

トンボが見ていたのは、池の鯉への餌やり。
女の子たちは脇目も降らず、パンくずをちぎっては投げちぎっては投げを繰り返す。

「金井水ていうんだど」
「霞城公園のどっこん水とおんなじ事なんだべが?」
※山形市は扇状地の上に発達した街。
そのために馬見ヶ崎川は伏流水となり地中をくぐる。
そして扇状地の先端から湧き出すんだ。
その先端が霞城公園であり、両所宮であったのかもしれない。

その金井水の水底に沈むお賽銭たち。
揺らぎの中から涼し気にこちらを見上げてくる。

玉の汗が肩から腕に吹き出している。
背中には真っ黒い入れ墨。
「入れ墨んねず。葉っぱの影だず」
神輿担ぎの神聖さ楽しさは何物にも代えがたい。
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