◆[山形市]はたらく車大集合 人の熱気と大気の熱と(2023令和5年5月5日撮影)

「今回、はたらく車のイベントは金掛げだんだねぇ」
「随分リアルな働く現場まで造って、はたらく車ば配置しったがらよぅ」
「なにゆてんの。こごは山銀本店の解体現場だじぇ」
戯言を言う間にも、日傘が目の前眼下を通り過ぎてゆく。

昭和から令和のいままで、この角度から奥羽の山並みを見ることは出来なかった。
山銀本店が新築されるとまた見られなくなる。
今のうちに緑濃い千歳山を目に焼き付ける。

そこにあるはずの建物が今はない。
山銀本店のあったその場所を埋めているのは青空に伸びる筋雲だった。

「通りさウインドウがあっど、どうしても見でしまうのよねぇ」
「映りこんだ自分ば見でしまうのはなしてだべ?」
文翔館は人間の表と裏。または二面性を不可思議に思いながら二分する。

「横浜さ等身大のガンダムが立ってるんだど」
「なにゆてんの。本物の重機の方がカッコいいべぇ」
無骨で筋骨隆々の重機の向こうは静かな旭銀座。

解体途中の山銀の柱。
鉄筋は数十年ぶりに顔を出し、
あれ?街並みも人波も昭和と違うと、不思議そうに首を傾げている。

「なに俯いっだのやぁ?」
ポストへ白い看板が引っ付きそうになって声をかける。
花やバイクは成り行きを伺っている。
ほんとは俯いたポストの機嫌を伺いつつ、会話する相手が欲しかった白い看板。

世の中には沢山の目がある。
その目はみんな同じ方向を見ているとは限らない。
「おらぁ、自分の目で見だ光景ば撮って行ぐだげっだなぁ」

「ハンモックさ座って、ビルの解体ば眺めるなておもしゃいんねがい」
マグロの解体ショーだて見世物なんだがら、ビルの解体ショーだってあり得る。
「んだんだ。解体現場ば見んのは流行りになりそうな空気があっべしたぁ」
「一杯飲みながら重機の動きば眺めるなて最高だべなぁ」
シートで隠さずに解体を見せる。
そこには新たな起業の芽があるかもしれない。

「熱い思いを心に秘め消防の道を選びました!ハイーッ!」
本音は「暑いがら早ぐ撮ってけろっす」なんて口が裂けてもいえない。

「今日の商売は上がったりだなはぁ」
「んだてこだい暑いんだもねぇ」
「しょうないしょうない。諦めっべはぁ」
唐揚げたちは見向きもされず、営業スマイルで固まっている。

「山形レスキューのマークは紅花なんだっけねぇ」
「ああ、んだがら制服も紅花色がぁ」
マークを囲う紐の結び目が気になりつつ納得する。

「救急車のこのエンブレムは何ば意味しったんだべなぁ?」
「誰がば威嚇するための力強いマークが?」
「ほだな訳ないべ、人ば救わんなねのに」
アクエリアスをごくごく飲みながら考えても分からない。
※調べてみました。雪の結晶を模したみたいです。

「周り中人だらけだずねぇ」
「何があったのが?」
「だいたいおらだなしてこだんどごさ置がっでるんだ?」
消毒液はノズルをあちこちへ向け、コロナとではなく暑さと戦っている。

「軒菖蒲(のきしょうぶ)てゆて、邪気ば払うんだど」
「外から悪れごどが入ってこねように軒さ下げるんだべした」
「んだっだ。んでもお客さんは一杯入て欲しいげんとな」

御殿堰のあちこちからカランコロンと石畳を踏む音が響いてくる。
「カランコロンてゲゲゲの鬼太郎じゃあんまいし」

「鯉のぼりば越すなて人間技て思わんね」
「ちょうどやんばいな幅の堰だもなぁ」
鯉たちは、鯉のぼりというよりも鯉下がり。

静寂の中から喧騒を遠くに眺める贅沢を味わっている電球一個。

黒い手摺の隙間から、ワサワサと人々の賑わいと熱気が入り込んでくる。

鯉のぼりを足元に、人々を眼下に眺めるという奇天烈な構図。

「辛子すこたまな」
「するめは入ていねんだが?」
とにかくこの香ばしい匂いに人は群がり、長い列がどこまでも続く。

「舐めっだぐないんだが?」
さっきから盛んに幟はハタハタと揺れている。
麦わら帽子を撫でられても気づかず、少女はその指を手摺にかけて外を見る。

「破裂しそうだはぁ」
「何が?風船が?」
「食べ過ぎだのど暑さで、腹と気持ちが」

嫋嫋(じょうじょう)と皐月の風が吹く。
嫋嫋とサックスの音色が流れ心に染みわたる。
※嫋嫋とはそよそよと吹くさま。音色が尾を引くように響くさま。

「ほご鼻の穴んねがら」
「別に鼻くそ溜まっていねがら」
執拗ないじりにリンゴは頭が段々熱くなってきた。

目に入れても痛くない子が、赤ちゃんの目へ指を入れる。

「足のツボば押して欲しいのが?」
「もしかして気持ちよさそうに、何が垂れっだのがぁ?」
赤ちゃんは口をあぽーっと空けながら笑顔を絶やさない。

「桜と新幹線ば眺めながらかき氷なて最高だんねがい」
「こだい暑い日は確かにかき氷は最高っだず」
でも背景の桜と新幹線は平面的な気がしないでもない。

救急車がボトルの側面に映っている。
「きっと一本空けで飲みすぎだ人が救急車ば呼んだんだべな」

人を救うための腕は後ろ手に組まれ、使命感が全身から迸(ほとばし)っている。
「けっつさ近づいで撮ってっから、シャッター切るまで屁ば迸らさねでけろな」
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