◆[山形市]柏倉・西山形小 筆舌に土筆がたい(2023令和5年3月25日撮影) |
田んぼの土手を歩くのがこんなに楽しいなんて。 春がもたらすものは生への喜びと、未来への希望。 |
「溢っで漏れこぼれそうだどりゃあ」 「梅の花でおらいの小屋が潰されるみだいだはぁ」 春の爆発的な膨らみで、冬を耐えてきた小屋は後ずさりしてしまう。 |
「雪も溶げで、やっと空ば見るいぐなたねぇ」 「んでも今だげだがら」 「なして?」 「今度は雑草がもさもさ覆いかぶさてくっから」 タイヤたちに日の当たる時間は少ない。 |
「ほだい近づいで覗きこんでくんなず」 レンズにくっつくほどに興味を示してくるフキノトウ。 |
「西山形小なのまだ壊さっでいねんだどれ」 「しかも看板はまっさらに綺麗だじぇ」 別の土地へ学校が移転するのを嫌がるように建っている旧校舎。 |
不審者のようにフェンスから西山形小の敷地を覗く。 柏倉門伝高等学校との石碑があるじゃないか。 そういえば親に聞いたことがある。 みんなで運動して高校ば誘致したんだっけと。 そんな事実は歴史の波に飲み込まれて知っている人は減っていく。 |
「うわぁキロキロだどりゃあ」 旧西山形小の校舎を背後に、 早く春へ飛び出したくてうずうずしている紫陽花の芽。 |
旧西山形小の校舎に日差しが反射し散乱している。 水仙は咲く時をじっと見計らっている。 |
柏倉八幡神社へ通じる丘を登ってみる。 左に西山形小の旧校舎が見え、右端に新西山形小のグレーの建物が見える。 |
「誰も来ねなぁ、寂しいなぁ、昔はあだい人が集またのになぁ」 ベンチは俯き加減になりながらブツブツと呟いている。 柏倉八幡神社の裏手の広場では、春の大気が樹木たちと戯れていた。 |
「車さ貼るものんねんだが?」 「毎年新しいデザインが出でくっから、古いのは貼っどごなぐなんのよ」 そういえば家ではドアの内側に、べたべたと十枚近く貼ってある。 |
柏倉八幡神社からの下り坂。 今咲こうとする水仙の土手の脇を軽やかに歩く足取りも軽い。 |
みんなツンツンと空を突っつき、春の喜びを表現している。 その圧倒的な喜びは筆舌に土筆がたい。 |
「夏はどさ行ったんだぁ」 一冬越したというのに、 首を垂れたヒマワリはうわごとの様に呟いている。 |
「天気はいいんだげんとなんだずこのパサパサ感は?」 黄砂なのか花粉なのか知らないけれど、霞がかったような粉っぽい大気。 |
冬のあがきは固まったまま息絶える。 やがてこの猛獣の亡骸は春に覆い隠されることだろう。 |
「嬉しいのは分がっげんともよぅ、ほだい近づくなずぅ。てしょずらすいったら」 梅は咲いたが、やがましくて耳がこちょびたぐなてしまう。 |
青空に富神山を撮りたかった。 「ま、いっだべ。おらだが花ば添えでけっから」 梅の花びらたちが囁いてくる。 |
「友だちと悪口こそこそ言っちゃダメ」の看板が目立っている。 「こそこそんねくて大声で言えてが?」 「んねっだな。友だちと褒めあう言葉はおっきな声で言えっだべず」 郵便車は通り過ぎざま、言葉をこそこそ言っていく。 |
「おっかがんなず、こわいんだがらよぅ」 「ほだごどゆたて、一人で立ってらんねんだもの」 車と自転車はお互いに傷つき錆び付き、まるでこれじゃ老々介護。 |
菜の花の鮮やかな黄色に引き付けられて顔を近づける。 雄しべの先っぽで鼻をくすぐられたら大変なことになる。 目に涙、鼻ぐすぐすで、喉イガイガ。 |
家の主はなくとも花は咲く。 |
「なんだて行儀いいずねぇ」 掃除用具一式が整然と並んでいる。 ゴミ集積所を見ればその地区の住民たちの暮らし方が分かる。 |
日差しは店の壁に燦燦と降り注いでいる。 それでもぼんやりとした春らしい大気。 すぐそばにある富神山さえも薄い膜の奥に見えているようだ。 |
「ほっだいおがてぇ、光ば浴びっだいのが?」 すかさず驚かせようと、フラッシュを浴びせてあげた。 フキノトウは一瞬驚いたようにぴくっとしたが、背後の老木は無表情。 |
「誰さ向かっておばかてゆったのや?」 「人さ向かっておばかていうやつがおばかなんだぁ」 老体に鞭打って「おばか」っていえるんだからそこそこ元気なんだべな。 |
柏倉といえば富神山。 富神山といえば柏倉。 霞がかった富神山はいつも柏倉を見守っている。 |
「ピリピリてヒビ入ったどりゃあ」 「ヒビは入っても心は柏倉と共にある」 バス停は断言し、滅多に来ないバスを待つ。 |
西山形小の新校舎がずいっと空の一角を占める。 とんがり山の富神山よりとんがって。 |
「あたしだは決して桜の前座なのんねがら」 自分たちの立場をはっきりさせておきたいと、 梅はその姿を誇らしげに春霞の中に浮かべている。 |
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