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◆[山形市]南原一・二丁目 竜山さ雪降ったどはぁ(2022令和4年11月5日撮影) |
![]() 右見て左見てコスモス見て、ハイ発車。 トラックは目の端に鮮やかな色を意識して十字路を渡る。 |
![]() 「竜山さ雪降ったんだどぉ」 この言葉ほど山形市民を緊張させ、また憂鬱にさせるフレーズはない。 この言葉には、冬になるから早ぐ冬の支度を急げという叱咤の意味がある。 |
![]() 赤いポンポン(千日紅)が地表を彷徨う。 その奥に黄色い菊が背伸びしている。 そのまた奥には去り際のコスモスが揺れている。 |
![]() 何にでも興味を示す千日紅は道端まではみ出して、 首を振り振り冬着に変えた人々を見守っている。 |
![]() 「なにしったの?」 「それカメラていうのが?」 落ち葉を撮ろうとしていたのに、 脇からひょっこり現れたコスモスがレンズを覗き込んでくる。 「晩秋ともなっどコスモスも何したらいいが分がらねくて暇なんだべなぁ」 |
![]() 「こだっぱい、おまえが漏らしたのが?」 「ほだな訳ないべ、空から降ってきたんだぁ」 蛇口は地面を覆いつくす落ち葉を呆然と見つめる。 |
![]() 日中は曇っていたけれど、 夕方近くになり雲間から日が差してきて、 前田町の通りをスーッと伸びていく。 |
![]() 薄暗かった辺りの空気が一変し、淀んでいた漆喰の白がパアッと斑模様に変化した。 揺れるまだら模様に呼応してザクロは首を揺らしている。 |
![]() この辺りは前田村だっけぞと、 瓶は流れる雲へ胸を張って声をかけている。 |
![]() 前田町の通りには市街化の波に吸収されても蔵がそのまま残っている。 自分たちの意志は世の中が変わっても変えないぞと言わんばかりに。 |
![]() まだ三時だというのに、標識が地面へ長ーい欠伸する。 日は短くなり影は長くなる。山形人は冬へ向けて気がせいてくる。 |
![]() ダリアが空から襲撃してきた。 その表現がぴったりくるくらいに、小さな額?で囲まれた蕾はまるでエイリアン。 その口の先から花びらがべろりとはみ出し、やがては普通の花になる。 |
![]() 「なんだて背が低い建物んねがい?」 「ゴミ集積所なんだべが?」 心の声を聞いたのか、錆びだらけのトタンの端から、 これまた錆びだらけの釘がちょこんと飛び出す。 |
![]() 空は真っ黒になり、山形を押しつぶそうとする。 その重みに耐えかねている街並みへ、 光が差し込み街を救うように生気を送り込む。 |
![]() 「山形人は蟒蛇(うわばみ)だま」 「んだず、おらだば食うなて信じらんねず」 菊たちはツンツンと花びらを伸ばし不平不満を述べ立てる。 遠くでは赤い灯油缶がボーッと空を眺めている。 |
![]() 「私の名はピンポンマム(菊の仲間)、よろしくね」 既に下半身は茶色になって萎れているというのに、 光を浴びた瞬間に目が覚めたのか、明るい声を張り上げるのが不憫。 |
![]() 一年で一番の彩の季節と言っても過言ではない。 「なにが過言ではないだず。ほっだな固っだい言葉でいうなず。当たり前の光景なんだがらよ」 当たり前のはずなのに何故か愛おしい心を許す光景。 |
![]() 柿は縛られて軒下に吊るされる。 毎年の事なので、柿はまたかという顔で平然としている。 |
![]() 六中隣の熊野神社。 銀杏は空に近いところが黄色く発色している 全身がまっ黄色になるまであとわずか。 |
![]() 樹林の向こうには六中の姿が見える。 グランドには人影もなく、ただ寒風が時折吹き抜ける。 |
![]() ブランコの手摺には錆が浮いている。 その手摺の色に地面が同化してくる晩秋。 |
![]() 「なえだて、俺ば邪魔者扱いだものぉ」 鈴を鳴らすための縄は大口空けて愚痴をこぼす。 複数の人が触るものはみんな触れないように避けられるコロナ時代。 |
![]() 「こごさ穴ポコ掘ってが」 シャベルを手にじいちゃんは顔が自然にほころぶ。 「はえずぁんだっだ。めんごい孫がなづいてくるんだものぉ」 |
![]() 「いが?こいに棒たがて、ほれっ」 棒はボールを先ほどの穴ポコに沈め、おじさんはニンマリ。 棒っ切れにもボールにも秋の日差しが柔らかく当たっている。 |
![]() 空に昇るケヤキからは葉が舞い降りて枝の姿が見え始めている。 その下には空き缶の胴体に細く切れ目を入れたランタン? 「なえだて器用だずねぇ。夜なたらライトアップでもするんだべが」 |
![]() 光が強くなるほど日陰は黒く沈んでいく。 哀れ蜘蛛の巣に引っかかった落ち葉たちは、 星々のように蜘蛛の巣の中で輝いて一生を終える。 |
![]() 「俺の方が一杯溜またじぇ」 「ほだごどない俺の方だぁ」 空から舞い落ちる葉っぱを頬張るタイヤたちのなんとも平和な光景か。 |
![]() 南原町からだと千歳山は断然近い。 その山肌を撫でるように熊野神社の杉の枝が柔らかく伸びている。 |
![]() 柿はそのまま放っておかれ、落ちるのを待つばかり。 障子はパリパリに縮みあがり、行く当てもない。 |
![]() 「赤ぐなたねやぁ」 「頭頂部あだり禿げでいねが?」 「松くい虫っだべ」 俺の頭も松くい虫のせいだべがと密かに思う。 |
![]() 「どごだが分がっか?」 六中の卒業生にはすぐわかる軒のうねったラインが、 車のフロントガラスとボンネットに映っている。 ワイパーの隙間には地面へ着地を失敗した落ち葉が数葉。 |
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