◆[山形市]三小・神明神社・北山形駅 一人静かに(2022令和4年10月29日撮影)

三小のグランドに吹いた風は、
ネットまで枯葉を追い詰める。

すっかり周りの色調が変わったことに気づいているのか、一台の車。

覆われていた雲に割れ目ができ、
光たちは三小前の小径に筋を付ける。

「地面ば掻いでどだいくたびっだが分がっか?」
熊手は地面上げに言う。
バケツは口を下にして折り重なり、言わんとすることも言えない。

日も差さず、子供たちも来ず。
空中へ振り上げた花びらの降ろしどころもなく、
どうしたもんかと思い悩む千日紅。

「三小てコマクサなんだ」
「二小は藤の花、四小は銀杏だじぇ」
「六小は六椹八幡様の鳩!」
二小、三小、四小の子供たちが揃って言う。
「植物んねくて鳩がよッ!」

溝へ退避した枯葉たち。
何処へ逃げても冬は来る。

「落ち枝に注意?」
「この辺は秋になっど、枝まで落ぢんのが?」
「どだなごどなるんだが見でみっだいもんだ」

ジャングルジムへ迷い込んだ落ち葉たち。
右往左往しながら冬を待つ。

人生最後の楽しみと決めていた滑り台。
スーッと滑って、あとは地面へ還るのみ。

雲の下に沈んでいた校舎にパアッと光が差し込んでくる。
休日と分かっていても、一斉に窓から子供たちの歓声が湧いてくるかと期待する。

蔦は何があっても空を目指す。

側溝へ落ちた紅葉の葉が、暗がりから呼んでいる。
落ちる覚悟も持てないままに、その道しかないと諦め、紅葉は金属の淵から舞い降りる。

「んぐなず、ほっちゃ行ってダメだぁ!」
塀は道路へはみ出そうとする。
みんなが紐で引き返せと後ろから引っ張る。

三小の周りには秋が充満し、
街の真ん中なのに静けさだけが秋と友達になっている。

「あだい燃えっだどれ、消さんなねべな!」
消火器の一台が叫ぶ。
「あの燃え方は気にすねで眺めるだげでいいんだ」
もう一台の先輩消火器は、燃えるにはいろいろあると後輩へ教えている。

「恵まっだ牛乳だなぁ」
「専用の椅子さ座るいなて、ほだい幸せなごどないっだなぁ」
家人の心意気が分かる玄関先。

「いまごろとっくに花笠なの終わたじゃあ」
笑顔が煤けて褪せ始めている。
次の花笠まつりまでには、辛い冬を越えて行かなければらない。

「あたし、タワシ干しったチュン」
「重だぐないんだがチュン」
「その気持ちだげで嬉しいチュン」

「誰が有名人が沿道ば通るんだが?」
「ほだなごどはないげんと・・・」
並べられた植木たちは、通り過ぎる排気ガスを浴びながら色彩を冬へ変えていく。

「立派な注連縄だずねぇ」
神明神社の前へ立ち、キロキロにはち切れんばかりの太さに舌を巻く。
その背景が秋の深さを物語っていることに気づきもせずに。

「こごさ立って何年なるんだぁ?」
雨や雪に穿たれた年輪の筋はザラザラになって上を向く。

「おらだは何に分別されるんだべ?」
「燃えるゴミ?まさかプラスチックはんねべげんと」
「萌えるゴミんねがよと冗談を言い合っても慰めにもならない。

「鈴ば振る紐も触わんなて、どうすっどいいのや?」
「頭の中で鈴ば振るしかないのっだなぁ」
頭を振ったら眩暈した。

「ほれ、動物だもソーシャルディスタンスよぅ」
キョトンとしながら動物たちはこちらを見てくる。

「密だ、密」
「渋谷の交差点並んねが?」
枯葉の山は吹けば飛ぶような軽さで積み上がる。

神明神社の神聖な空間と堰が癒しの雰囲気を醸していた。
その隣へ真新しいコンビニが出来て違和感が同居する状態だった。
今は昔。いつの間にかコンビニの壁にも蔦が伸び、癒しの空間から違和感が無くなりつつある。

誰が植えたか通りを見つめる晩秋のヒマワリ。
車の巻き起こす風にも負けず冬を越せ。

早咲きの桜は人々に注目される。
遅咲きのヒマワリは注目を集めないのか、
郵便配達のバイクもあっという間に走り去る。

「なにほだい浮がれでんのや?」
静かで空気さえも遠慮して動かない通りに軽やかな足音が響く。
街並みに若々しい動きがあれば、それだけで嬉しさがこみ上げる。

晩秋の大気は街に絡みつくだけでピクリとも動かない。
信号待ちの自転車が渡っていった。
タンポポはじっと風が吹く気持ちになるのを待っている。

「眩しいったらぁ」
小便小僧は顔を出した太陽に顔をしかめながら、眩しい滴を北駅前に放つ。
女の子は帽子に西日を浴びながら、見て見ぬ振りをして足早に去っていく。

今日最後の日差しが辺りにまき散らされる。
その光を頬張るエノコログサは体中から溜め込んだ光を放っている。

小便小僧の滴は水面に波紋を拡げている。
その波紋へ光は興味を示し、皆集まって飛び跳ねる。
そのキラキラをもっと元気に飛び跳ねさせようと、
小便小僧はより下半身に力を籠める。
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