◆[山形市]子どもの日スプリングフェスティバル 一気に夏日(2022令和4年5月5日撮影)

正調山形の風景が青葉に包まれて真正面に見える。

はしご車はピカピカに磨かれている。
触れられては困ると、これまた真っ赤なパイロンがはしご車を囲って護衛する。

「日差しが強すぎで、皆屋根の下さ非難してんのが?」
「わがてねずねぇ。スタンプラリーの行列だべした」

「たまげるほどあっという間だずね」
この間までか細い枝が寒風に包まれていたのに、
今はボッと突然膨らみ出てきた若葉に覆われている。

「今日は歩きながら食たりしてダメなんだど」
JAのパーキングはパークのパクパク形にやや遠慮が見える。

「さんなねっだな!山形人だごんたら!」
そんな強い意志を感じる芋煮のポスター。
女の子は見向きもせず右端へ去っていく。

「映画はこごで見らんねぐなても、塔は最後まで残たんだずねぇ」
シネマ通りのシンボルは山形遺産になってしまうのか。

「平日にこご歩いでみろ。こだなもんんねがら」
「ほだい凄いのが?」
「んだ。どさ人いっか探すのが大変なんだがら」

メザシたちが見上げると、そこには靴ばかり。
否、小さな鯉のぼりたちが見上げると、そこには可愛いあんよばかり。

「暑くて口パクパクだはぁ」
夏日となり、指先ほどの鯉のぼりは、体をぐったりさせて日差しに耐える。

「今日は泳がんたていいべはぁ」
鯉のぼりは暑さにぐったり垂れている。

暑さに耐えかねて日陰へ退避する。
そこには先客が咲いていた。

日陰の花シャガは、ジーっと板塀を見つめている。
否、板塀に零れる木漏れ日の滴を見つめている。

陽光と賑わいを遠くに見て、
電球はひたすら黄色い光でテリトリーを守っている。

「普通の生活さ戻たら、本当はそのひらいた手さは旨いものが握らっでだんだべなぁ」
屋根に腹ばいになった菖蒲は暑さも忘れ、下を通る人々を品定めしている。

「とにかくしぇわすない」
普段の御殿堰だごんたら、静寂の中でせせらぎを見つめながら自分の世界に浸れるのに。
なーて、ゆてんげんと、賑わいが戻て嬉しいばっかりだぁ。

鯉のぼりは夏日の空気に交じる子どもたちの賑やかな声を、
大口空けて吸い込んだ。

御殿堰が人を呼べる水路になるなんて世の中は変わった。
昔は生活用水路、そして今はせせらぎが人々に癒しをもたらす。

「デズニーランドさ行ぐだいのがぁ、ほうがぁ」
「おんちゃん違う。ディズニーランドだがら」

「暑っづいがらよぅ、せめて蔵王の樹氷ばみながら食うべぇ」
確かに雰囲気だけでも体感気温は変わるもの。

日向を人々が行き来する。
「自衛隊の車両は底が高いがら、ほごさ寝そべて昼寝でもすっだいはぁ」

ほっとなる広場へ来る度に気になるオブジェ。
今日はひび割れるほどピリピリする光を放って広場を映す。

若葉の下で、目と目が会話する。
マスクで口が隠れていても、お互いの目で言いたいことがすぐ分かる。
まさに夫婦は以心伝心。

「おんちゃん誰だが分がる?」
「カメラマン」
問われて口の動きを止め、ポカンと答える兄弟の目には、
なんだこのおじさん?という心の動きが見て取れる。

「あたしは鯉のぼりんねげんとよぅ、思いっきり吹ぐだいずぅ」
ショーウインドウから子どもたちのざわめきを眺めながら、金属の冷たさを身にまとう。

日差しを遮蔽するのは日傘。
そしてウイルスを防ぐはずのマスク、マスク、マスク。

緑の液体に街並みが泳いでいる。
女の子は無垢な手のひらでグイっと飲み込み、街並みが歪む。

「七日町がこだなごどになるなてなぁ、たまげだもんだ」
こだなごどとは、商業地としての地位が著しく低下したこと。
高層マンションだらけの居住地になってしまったこと。

陽炎の中を麦わら帽子が泳ぐように遠ざかる。

「乗しぇでけらんねんだどぅ」
「なして?」
「コロナだがらねぇ」
この頃、なんでもコロナのせいにする風潮が広がっている。

目の前に広がる青葉若葉のために山形人は冬を耐えてきた。
「ほんてんだよぅ。雪降らねどごさ住んでる人には分がらねべぇ」
そんなことをいうのはいつまでも昭和の感覚が抜けないからと自分を戒めつつ、
若葉の鮮やかさに、つい目を細めてしまう。

「どれ、んだら帰っべゃあ」
「どっちの足からや?右が?左が?」
母親は焦り、山交バスはゆったりと待っている。
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