◆[山形市]東原町・もみじ公園 雪はあまけでズブズブぬかる(2022令和4年1月8日撮影)

寒気は街をブルーに染め、街にチクチク感が溢れている。
と思いきや、ほんとは気温が5度を超え、雪はあまけで丸く萎んでいく。

「おまえは歩がんたていいがらなぁ」
「人間は歩がんなねがら大変なのよ」
歩きずらい鬱憤をバス停に当ててもしょうがない。

アスファルトが顔を出しているところと、
カチンカチンに意地を張って溶けないところが明瞭。
その段差には辟易するけれど、山形人はそんな逆境にも慣れている。

「ジャイアンツのまーくだが?」
色付きのマンホールってなんだべ?
真似してぬだばるカップ麺の殻が潰れて哀れ。

「挟まっで痛いぃ」
寒いわ痛いわの新年早々だけれど、股引は甘んじてじっと耐えている。

路地は雪の天下。
それらの路地を霞城セントラルが睥睨する。

もみじ公園の鯉はゆったりと水面下を泳ぎ、
水面には青い空と雲が揺らめいている。
赤と青と白が共演する異空間。

「何が見える?」
「雪と池とカモと雪吊り。あ、それから灯篭も」
白い帽子の子は目と頭を360度フル回転させて答える。
父親は成長した我が子に感慨深げ。

蒼穹に張り巡らせた雪吊り。
縄はピンと張って枝を手なずけている。

カモはネギを背負わずに、
柏手を打って今年一年の安寧を祈願する。

「冬の間はこごさいっど暖かいど思てよぅ」
集まった松かさたちは溶け行く雪を眺めながら、身を寄せ合っている。

身を寄せ合うといえば鯉も同じ。
池の隅っこに集まって、ゆらゆらと揺れる日差しを背に受けている。

光を受けまともに受けた石の窪みには去年の落ち葉が溜まっている。
このまま暖かい処で土に還れたらとじっと願っているようだ。

薄暗い池の揺らぎが早く来いと誘ってくる。
花びらたちは光を受けて発光しているのに、
心の中では黒い恐れが占めている。

「すっかすかだどれ」
張り紙たちは厳密に禁止事項を歌っているけれど、
光にだけは寛容で、どうぞどうぞとすり抜けさせる。

「こだんどごさ舞い降りでしまて、どうすっどいいのや?」
葉っぱは葉脈の先にある棘とげを伸ばしながら後悔する。
「ほだごどやねで一緒に溶げでしまうびゃあ」
氷たちは葉っぱの周りで光の誘惑を放っている。

山形中の裏道は穴ぼこだらけ。
先に溶けた路面は太陽の光を反射して歩くものの目をチクチクと射てくる。

白と黒の鍵盤がずーっと突き当りまで伸びる五小前。

「なしてこだんどごさ迷い込んでしまたがなぁ」
人生の雁字搦めはゆっくりと解いていくしか道はない。

「なにほだんどごでつばぜり合いしったのや?」
「ハグすっだいげんと、鼻が長すぎてさんねだげだぁ」
「ハグなのしったら伝染るべな」
「二人一緒なら伝染てもかまわね」

「とまれ!」
地面の「とまれ」をよく見たうえで深呼吸し、
今日一日の学校での出来事をリセットして家へ帰れということか。

五小へ訪れると必ずこの丘へ登ってしまう。
そして天気が良ければ青空を仰ぎ、360度をぐるりと見渡して心のもやもやを振り払う。

ブランコの骨格だけが残され、しかも入るなと張り紙までぶら下げられている。
何をモチベーションに立っていればいいか分からなくなる骨格。
「ほだごど思わねで、子供だが乗る日のために太陽ば浴びで骨密度ば上げでいればいいのっだな」

「陽の当たる校舎の窓っていいずね」
五小卒業の方だけに撮りました。
他に意図はありません。

五小名物の石段に樹木の影が這う。

シルクような滑らかな、そしてゆったりとした幾筋ものラインが、
右肩上がりに伸びてゆく。
撮影後そのシルクを登ったら、ズボッとはまり防寒靴の中にまで雪が入り込み、
クツの中から冷たい雪を掻きだすのに苦労する。
やはり美しいものに惑わされてはいけない。

鉄棒は休めの姿勢できちんと並んでいる。
「いづまでこの格好なんだべねぇ?」
「春になたらロープば外してもらえるんだべが?」
「しゃねっだな。とにかぐ休め」
ただ休むのも意外と辛い。

「おっとっと〜!」
雪は足を取り、タイヤをあらぬ方向へ引きずってしまう。
雪の上でのバイクは両足をはんばがてハンドルを握るか、
両足を補助輪がわりに地面に擦るようにして走行するかしかない。

「硬っだくてまんずぅ」
一度凍ってしまった雪をカパッと引っぺがすときは快感。
特に大物を剥がしたときはちょっと鼻高々になる。
こんな気持ち。雪の降らない地方の人には分がらねべなぁ。

幼稚園児の様に、可愛らしくちょこちょこと歩きましょう。
これが雪国での歩き方の鉄則か。

東原二丁目といいう山大生には見慣れたバス停が誇らしげに輝いている。
バス停の名称にも優劣が存在するのなら、
山形では間違いなくあこがれのバス停名称だろう。
東京でいえば、赤坂とか六本木と同じクオリティの名称だ。

「こんにちわっす」
顔とマスクはドアの内側に吸い込まれ、
おじさん同士がゴッツンコしているよう。
ガラスに映っている人が違う人だったら、それこそマジックだべと、
積もった雪たちはニヤニヤしながら見守っている。

あきらめの境地とは、まさにこの状態。
身動き取れず塀に助けを求めても無言。
雪の山も無言で押し寄せる。
でも希望はある。
冬の後には必ず春が来る。
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