◆[山形市]駅西・霞城セントラル Xmasと白魔がやってくる(2021令和3年12月18日撮影)

寒々とした空に枝が突き刺さる。
こんな時に空を見上げたら粉雪が目に入る。

車体が真っ白いベールに覆われる。
抗うようにワイパーを突き立てる。

「なんだが頭が重だいんだげんと・・・」
「どいづもこいづも頭でっかちだずねぇ」
みんなお揃いの白い帽子を被ってお互いをバカしあう。

駅のホームは吹きっさらしの風の通り道となる。
雪のせいで人々はみんな黒いシルエットのようになってしまう。

「俺が一番一杯運べるじぇ」
「あたしは細かいところが得意」
「俺なのガーッと一気にどがすがらね」
「車の屋根ならお任せよ」
雪国には七種類の雪が降り、それ以上の種類の雪かきがある。

「ぎっつぐ抱き合うべはぁ」
「気持ち悪れげんと仕方ないずねぇ」
たとえ心は離れていても、
凍えてしまった体はくっつき会うしかない。

「踏んづけらっでばりいで大変だなぁ」
落ち葉たちが「乗降」の文字を可哀そうに思う。
「体ば踏まれっど充実感に浸れるんだぁ」
乗降の文字は荒れた皮膚を空に向けながら、自分の仕事に満足する。

手摺がぬーっと突き出てくる。
「誰も握ってけねんだげんと・・・」
「なんぼ手摺でも、こだい寒い時は冷ったくて誰も触らねべなぁ」
北国の手摺は木製にすべきと思う。

「今年も頑張たねぇ」
「来年もよろしぐなぁ」
雪にまみれながらお互いをいたわり合う案内板。

「遂に来てしまたはぁ」
何も言わずもがな。
これが山形。

真昼のガス灯はボーッと立ち尽くすのみ。
ただ粉雪を成り行きを見守りながら。

寒さの中に寝そべる人を尻目に、
傘は足早に歩き去る。
無軌道な足跡もやがて白く覆われて消えていく。

駅と霞城セントラルを結ぶ通路は人が絶えない。
雪が降ってもリラックスして歩けるのは本当にありがたい。

「これっ、走んなず、転ぶべな」
長靴の裏側を見せるほど思いっきり走り回る子供。
乾いた通路に乾いた足音が這いまわる。

「ううっ、手冷ったい」
傘を持ちながら何気なく映画案内に目を向けて皆通り過ぎていく。

「あっち向いでホイ」
「あぁ、まだ負けだぁって、んねず。かえずけろてゆったんだず」

令和のクリスマス飾りは割烹着を珍し気に眺める。
昭和風割烹着のおばちゃんは、なんだか居心地が悪い。

「いらっしゃ〜い。んまいものなんたべぇ」
テーブルも箱も、なんとなく過ぎていく時間に流されている。

「どぉれ売り方も終わたし、片付けで帰っべはぁ」
クリスマスの飾りの前を、台車がゴロゴロと音を立て通り過ぎる。

「うわぁ綺麗」
見上げる人々を見つめる飾りたち。

空中に浮いた輪っかツリーは、
人々に年の瀬を感じさせ、クリスマスの雰囲気を降り注ぐ。

「何が食ていがね?」
「んまいスイーツがいいずね」
「あたしはあじまんでいいはぁ」
あじまんってスイーツんねのが?

ツリーの飾りをアップで撮ってみた。
アトリウム中が円形の中に収まり、真ん中には黒い汚点が映っている。
黒い汚点は手摺にもたれカメラを構える私だった。

「これじゃあ外さ行ぐのやんだぐなるなぁ」
まだまだ冬は始まったばかりだが、すでに気持ちは萎えかける。

頭隠して足隠さずてがぁ。
んまそうな唇を見て、女の子たちは催眠術に掛かったように中へ入り込んでいく。

女の子がキャーキャーいいながら可愛い顔を撮っている間、
男たちは黙々とスマホの世界にのめり込む。

じゃんけんぽーん。あいこでしょう。
フーコーの振り子の周りを、女の子とお母さんの声がぐるっと周って登ってくる。

ゆっくりと左右に揺れるピカピカの玉。
女の子の視線はその玉にピントを合わせ、目の玉がゆっくりと左右に追っていく。

私も真似て玉を追う。
意図的にレンズから逃げようとしているわけでもないのに、
玉はゆったりと身をかわし優雅に自分のペースで揺れていく。

遂に捕らえた玉のアップ。
360度が映りこんだ光景にはまばゆい光とともに厳かさが張り付いている。
「ところで霞城セントラルが出来でがら20年以上になっげんと、
その間まったく止まらねで動き続げっだんだが?それともしゃねうぢに止まてるんだが?」
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