◆[山形市]八日町・鉄砲町 六椹八幡神社・浄光寺・宝光院の秋色(2021令和3年11月13日撮影)

「ちぇっと割り込んでくんなずぅ」
赤いぶちぶちは、今目立たずにいつ目立つんだと言わんばかりに出しゃばってくる。

「ずっと外さいっから、ほだいボロボロなるんだべ」
「んでも天気いいど気持ちはフクフクだぁ」
♪ボロは着てても心は錦ってがぁ。

「なにほだいごしゃいっだのや?」
左のドアがいう。
「ごしゃいでなのいね」
右のドアがいう。
内心はヒビが入り気持ちが爆発しそうな右のドアを、左のドアが心配している。

センリョウ、ピラカンサ、ガマズミ、ナナカマド、ナンテンと、
秋に赤い実のなる木は多すぎて区別がつかない。
おっと、ボーッと考え事をしていたら赤い実が塀を乗り越えて近づいてきた。

「暖かそうでいいずねぇ」
板パンコもトタンも、みんな赤いマフラーで覆われている。

浄光寺へ訪れる。
予想通りに秋のきらめきが迎えてくれた。

舞い降りてもまだまだピンとしている葉っぱは、
雲の流れを指さしている。

「こだっぱい溜またのがぁ?」
「ぎゅうぎゅう詰めでしゃますさんなねんだぁ」
袋の中から息苦しそうな銀杏の言葉が漏れてくる。

「あだい真っ黄色だじゃあ」
「んだずねぇ、おらだもうかうかしてらんねぇ」
未だに青い紅葉は、急かされるような気持ちを抑えがたい。

天気予報は曇天だったのに、空には青空が広がった。
散らばった銀杏の葉っぱが一段と輝き、箒も一段とその動きが早くなる。

「凄いシズル感」
と感動したものの、その感動の裏にはあの臭いを想起して、
つぶしてしまい失敗したぁという気持ちも隠れている。

「食てけっぞう」
竜は涎を垂らして、いままさに食いつかんとしている。

「このシールさえ張っていれば、守てもらえっからよぅ」
冬ごもりに入ったバイクはミラーをあらぬ方向へ折り曲げ、
六椹八幡宮のシールを自慢気に見せている。

浄光寺を堪能し、すぐ隣の六椹八幡宮へ向かう。
この八日町二丁目一帯は住宅地というよりも、ほぼお寺さんや神社が占めている。

気温が低いと近くなる。
八幡様の脇には昔から馴染みの公衆便所がある。
用を足し、ふと隣家の壁を見上げると、
大量の葉っぱが蜘蛛の巣に引っかかり、
蜘蛛の糸は想定外の重さに伸び切っている。

「遊びに行ぐごんたら八幡様しかないべ」
「んだずねぇ、こだい楽しくて癒される場所ないずぅ」
自分の子供の頃と気持ちを重ねながら親子を見てしまう。

欅の葉っぱを踏みしめながら、乳母車がゆっくり進む。
絵馬は時折緩い風に揺れている。

社殿の軒下に体を突き立てて主張する欅の葉っぱ。
山ほど葉っぱがいるのだから、こういった自己主張の強い者もいて不思議ではない。

光が女の子の後ろ髪を透かして、降り積もった欅の葉っぱへ降りていく。

押し出す手は突き放したわけじゃない。
大人になったら離れて行ってしまうという寂しさを隠しながら押し出している。

欅の葉っぱの海原を踏みしめる。
サクッサクッっと乾いた音が足元に絡みつく。

雲間から太陽が時折顔を出す。
その度に欅の葉っぱの葉脈が浮き上がる。

「なえだて最高の場所さ椅子ば設置してぇ」
誰が座るのかは知らないけれど、
欅の葉っぱがカラカラと転がる音と、
枝を流れるカサカサという風の音の輪唱を楽しむには最高の場所。

葉っぱたちは集められて古墳群のように並んでいる。
その小山を大木の影が愛おしく撫でている。

うねうねと地を這う欅の影。
その向こうでは紅葉を写真に収めるおばさんが踵を上げて背伸びしている。

「くたびっだずぁ」
作業中の軽トラの荷台でゴム長が寝そべっている。
まだ底はすり減っていないし、くたびっでいないのは明らか。
八幡の杜の大気が気持ち良くてうたた寝しったんだべな。

宝光院の屋根の上にゴリゴリと固まった実が、
澄んだ大気の中で煌めいている。

あんなに鮮やかなピンクの色を楽しませてくれた夏。
百日紅はすっかり葉を落とし、その細い枝を11月の大気へ晒している。

「青くてつるこっとして可愛いずねぇ」
「いやいや、頑丈そうで銀色はカッコいい」
プラスチックとブリキのバケツは、
並んで紅葉を観賞しながら世間話に花を咲かしている。

ゴーっと右側から押し寄せた影は、
真っ白い壁にぶつかって飛沫を上げている。

「真っ赤な紅葉がきれいだずねぇ」
弱々しくため息を漏らすザクロは、すっかり生命力を失い失意の日々を送っているようだ。

その肌には年月を物語るように皴が刻まれている。
雲から現れた太陽はその肌に輝きを与え、肌は呼応するように艶々と光りだす。

「なんの実だがしゃねげんとよぅ。めんこいずねぇ」
枝にぶら下がる実たちはめんごがられることを体で知っている。
だから顔に白いエクボを作って見せるのもお手の物。

「おんちゃん、後ろ手ば組んでいるのはいいげんとよ、危機が迫てんのば分がったが?」
八日町二丁目は神社とお寺の街だが、ジュラシックパークみたいな店もあって、
秋は来るけど飽きが来ない街。

「でっかいペンギンだずねぇ、実物大なんだべが」
ペンギンは親爺の言葉を無視するように青空の向こうの古里へ想いを馳せる。

ペンギンは退屈していた。
ようやく人間が現れたと思ったら隣の自販機を前にしている。
自販機には人が寄るのに、自分には人が寄ってこないことをペンギンは不可解に思う。
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