◆[山形市]成沢西 こだい晴れだら家さなのいらんね(2021令和3年11月6日撮影) |
竜山には夏雲?が湧き、枝にはかろうじて葉っぱが残っている。 看板は相変わらず目立とうとしゃしゃり出ている。 なんとも不釣り合いな11月の光景。 |
「何買うんだっけぇ?」 メモに柿門で来る人、スマホに入力してくる人。 スーパーへ来るには買い物チェックリストが欠かせない。 |
「何が非常時て、俺の体が非常事態だはぁ!」 ネットに張り付けられた張り紙がふちゃばげで助けてと叫んでも、 ネットはゆったり風に揺れているだけだし、赤らんだ木々も校舎も無口を貫き通す。 |
「はばげでしまうみだいだどれ」 「なんぼ押すなてゆても、次から次へと後ろから押されんのよぅ」 蔵王一小のフェンスでは葉っぱたちが無言の悲鳴を上げている。 |
「邪魔すんなず、前見えねべな」 禁煙は葉っぱが煩わしくてしょうがない。 てゆうが、なして小学校の網さ禁煙なてぶら下がてるんだ? |
自分の終わりを感じ取った花びらがそっと縮んでいく。 静かに終末を迎えるために。誰にも迷惑を掛けないように。 |
蔵王一小の周りを一周しながら辺りの光景に目をやる。 旧国道の歩道橋が見え、その手前には柿の実が連なり、初冬を思い知らされる。 |
「おまえ真っ赤だな」 「おまえはまだまだ青いていうが緑だな」 お互いにぶら下げられたまま、色の違いで言い争う。 |
「なえだて立派に咲いだごど」 「こだいまあるく咲かせるなて、育てた人はさぞやまあるい人だべな」 |
「あぶないて、おまえの目立ち過ぎがあぶないず」 目立たず人より前に出ず人と同じことをしないと、いじめの対象になってしまう。 |
国道の下に通路があるのは珍しくない。 でも国道の下に鳥居があるのは珍しい。 国道の車たちは鳥居の上を走っていることを自覚して慎重に通るべき。 |
「ほだい焦らねで走れぇ」 「あ、なるほど。暗がりさ不審なおじさんがいっからがぁて、俺がぁ!」 |
看板や電柱たちは沿道を歩く人々へエールを送る。 ついでに夏草も無理無理はみ出してくる。 |
「あの建物なんだ?東海山形がぁ」 「いづのこめ出来だんだぁ?しゃねこめ新しぐなてんもねぇ」 時代は山形のあちこちで動いている。 |
「ありゃりゃあ、わさわさたがったどれ」 パッと飛び立っては、また戻ってくるスズメたちは冬の準備に忙しい。 |
ベンチの肩に三匹並んで背中を太陽へ向けて炙っている。 「いい塩梅だねぇ。11月の日差しは気持ちいいばりだぁ」 澄んだ空気と柔らかい日差しに、居眠りするトンボはいねんだが。 |
ベンチはトンボに占領されている。 だからといってトンボたちは密集している訳でもない。 適度な間隔を空けて停まっているのは、トンボ界にも広まって来たか。 |
空が横にひび割れ、口を開こうとしている。 空が落ちてきてはたまらない。 空の口は紐でぎっつぐ結ばれている。 |
コンクリートの向こうで若さが弾けている? ん〜、なんたべなぁ。 弾けるほどではないげんと、若い息吹だけは伝わってくる。 |
一瞬雲に隠れる太陽。 雲はどこから湧いてきたのかと視線を右側へ移すと、 駐車場の車の窓ガラスから空へ伸びているではないか。 |
西成沢公園へ足を踏み入れる。 まだ乾ききらない落ち葉が足の裏に心地いい。 踏んづけられた落ち葉は、踏みにじられた自尊心も間もなく消えのだろう。 |
輝く落ち葉の向こうでは、日差しを惜しむように人々が日光浴を楽しんでいる。 山形のような雪国の人々には本当に貴重な光る時間。 |
カラスは電線で辺りを見守る。 退屈をどう紛らせるか、誰かの指示を待つか、率先して何かの行動をするか、 お互いに牽制しているのかも知れない。 |
「お母さん、降りらんね〜!」 「どんどん食い込んでいぐぅ!」 少女は自然の摂理を体で学んでいる真っ最中。 |
一体何人の子供が滑り台の降り口で叫んだことか。 一体何人の子供たちが滑稽な姿を晒したことか。 一体何人の親たちが焦って走り寄ったことか。 |
子供たちは叫びながら滑り台を滑り落ちる。 空では雲が滑るように竜山へ黙して向かっている。 光は溢れかえりながら地面を滑っている。 |
うねる滑り台。 真っすぐ伸びる太陽の光。 こだい天気いいごんたら、家の中さなのいらねべした。 |
「落ぢんなねぇ。ちゃんとたづげよぅ」 お互いに鎖に命を預け、友情を育んでいく。 |
「まぶしくて孫だば見守んのも大変だ」 私はおじさんの頭をまぶしく眺めながら思う。 ここにも眩しいおじさんがいた。私の仲間だ。 ただ、幸いにして私は帽子をかぶっている。 |
公園の端っこに飲水栓が立ちんぼをしている。 でも、ただボーッと立っているわけではない。 空の青さを映し、赤らんだ樹木を映し、人々を映しこんでいる。 |
あんまり飲水栓がじっとしているので、きっと溜まっているものもあるだろう。 ガス抜きをしてあげようとコックを捻る。 迸る水は太陽の光と一体化して煌めいた。 |
「飲んでみろぉ」 近寄ってきた子供に勧めてみる。 太陽を後頭部に背負い口を近づける。 唇と飲水栓の先っぽの間にはキラキラ輝く水が踊っている。 |
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