◆[山形市]宮町 曇天の天気予報が見事に覆された秋(2021令和3年10月9日撮影)

天気予報に反し、思いのほか日差しの届いた宮町界隈。
落ち葉はオレンジの光を放ちながら、硬い路面でカサコソと語り合う。

排水溝の硬い蓋。
「おらだば出してけろぅ」
がっちり固められた枠の中から、雑草たちが騒ぎ立てている。

ぷっくり膨れた柿の実は、
ツルハの看板を眺め、おらだより目立つ赤があるんだなあと感心する。
しかもツルハはあちこちに増殖するスピードも凄く早いし。

「なにすましてんのや?」
板塀に止まったトンボは近づいてもピクリともしない。
まるで撮られる事を意識して、ポーズをとっているように。

「俺の体より赤い看板があっどれ」
赤とんぼはツルハの看板を見つめながら、
人工物の赤色にちょっと抵抗を感じているし、自分の色に自負を感じてもいる。

曇天の天気予報はなんだったのか。
筋雲はその筋肉を思いっきり伸ばしている。
バス停は眩しさを避けて後ろ向き。

地面に立つパイロンでさえも空に近づいてみたいと思う絶好の好天。

「おまえだ何者だ?吐け!」
警察の尋問の様に問いかける。
「おらだは刷毛だず。さっきから吐け吐けてうるさいんだず」
使い古された刷毛は、気持ちよさそうに干されていたのにうるさい吐けに迷惑してる。

孤高のヒマワリが空に伸びる。
枯れても空に向かう気概だけは忘れない。

秋になり体はカチャカチャに乾燥していくばかり。
夏の記憶も霞の彼方に消えようとしている。
それでもトンボはそんなヒマワリへ無頓着に止まってくれる。

ビジャッと落ちた柿の実は、その体をさらけ出して日に輝いている。
「ほだな格好で恥ずかしいべな」
落ち葉は急いで柿の実の体に覆いかぶさって隠そうとする。

「おまえはゴキブリだが?ハエだが?カメムシだが?」
「なして人から嫌わっでる名前だげで聞ぐのや?」
虫は不満げに問いかけを無視することに決めた。

壁もフェンスも誰も語らない。
ただ秋の日差しを静かに受け止めているだけ。
それでも、幾星霜の年月を体中から発散させて無言で語っているようだ。

リンゴはその甘さゆえに鳥や虫に体を齧られている。
「おまえは人気があるんだなぁ」
横たわった自転車は、その輝くリンゴを眺めるが息も絶え絶えだ。

宮町観音堂公園に子供たちの歓声が響き渡る。
暑くなく寒くない公園は久しぶりに子供たちの楽園になっている。

子供たちの行動は予測不能。
さっきまで遊具で遊んでいたかと思へば、
今度は大樹の影に走り込んでいる。

「誰が一番早いが競争すっべ」
学校教育では子供たちに順列を付けたり、競争によって優劣を付けたりとするのは間違いだとされている。
でもそれは違う。人間が常に上を目指すために競争も順列も暗黙のうちに存在し、
それが生物のDNAには備わっている。知らんけど。

「なしておまえがそごさいるんだ?」
「ちぇっと休憩っだな」
「ほごは消火器のいる場所だじぇ」
「んだて丁度収まりがいいんだもの」
公園のトイレ内では戸惑う箒が隅っこで怯えていた。

公園内のなだらかな坂にポチポチとオレンジの星が瞬いている。
その星は決して踏んづけてはならぬ。
踏んづけてそのまま家に帰れば、家族皆から臭いと総スカンを食う。

銀杏は好きな人嫌いな人と、日本を二分する食材。
その匂いに陶然とする人がいるかと思えば、オエーッと言って逃げ出す人もいる。
「いやいや、食うのが好ぎな人はいでも匂いが好きな人はさすがにいねべ」

子供たちがくんずほぐれつ遊具に集って、
まるで子供たちの知恵の輪状態。

逆光となってフェンスが夏の蔓が真っ黒になっている。
異様な光景は、街並みには心を乱す光景もあることを思い知らせる。

絡みつく秋の大気をくすぐるように穂を揺らす。
まるで盛り上がったコンサートでペンライトが振られているように。

光が溜まって去りがたくなっているかのようだ。
すぐに消えてしまう光だからこそ、穂の波は一生懸命光をついばんでいる。

「おまえも黄色ぐなてとしょたずねぇ」
「あんたこそ青いげんと皴だらけだどれぇ」
お互いを非難してるんじゃない。
お互いの長い道のりを愛おしく思い出しているんだ。

この前を車で通るたびに気になっていたクレオメの花。
花期は6月から9月と聞いていたから、早く撮らないとと気が気ではなかった。
ようやく会えたので言葉をかけてみる。
「クリオネんねよね?」
「クレオメだず」
クリオネとクレオメの名前でしばらく頭が混乱していた。

その姿はギューンと伸び異様ではあるけれど、意外に花の姿は可憐。
千歳橋に伸びる幹線には多くの車が行き交うけれど、
何人の人々がクレオメに目を止めてくれたことか。
否、花を撮っている親爺の姿に目を止め、異様と感じた人が多かったかもしれない。

両所宮の敷地に足を踏み入れる。
バイクがぽつねんと佇み、両方のミラーにまだ青い樹木を映している。

「ゴミ邪魔だがらて、払わんなねっだな」
「脚立が邪魔で、参拝でぎねんだげんと」
お互いに邪魔だと思いつつ、すぐに文句を言わないのが日本人の美徳?

「何回もいうげんとよ、ほだごど屯(たむろ)してっど、仕事ば放棄してるみだいだず」
「んだがらおらだは箒だず」
清酒の箱に入って箒はほろ酔い加減。

まだ紅葉には早いとはいっても、
社務所の窓に映る樹木には、黄色や赤の暖色系が増えている。

ファンタもコカ・コーラも赤く色づいている。
「はえずぁ昔からだがら」
確かに昔から赤かった。
しかしその赤も少しずつすっぱげたり錆び付いたりして、時を感じさせるようになっている。

太陽は池の中で輝いている。
その輝きのど真ん中へ狙いをつけて小便を放つ強心臓の小便小僧。

西日が目をシカシカさせる。
放物線は相変わらずキラキラと輝く。
看板でも小僧の子分が分身の影となって本物を真似ている。

フェンスの影が放射状に伸びてきた。
帰路につく人々も、市内の至る所から北駅へ集まってくる。

西日は少年の髪の毛を発光させている。
駐車禁止の張り紙も、関係者以外立入禁止の看板も、
太陽の光を透かして光っている。
闇が覆う夜は長い。
その前の日没寸前の輝きの時間は圧倒的に短く愛おしい。

「大谷君の衣装ば着っだいっけぇ」
小便小僧に衣装を着せる人はいない。
腰に手を当てながら飛沫を夕陽に向け小便小僧は考える。
「冬なんのに誰が服ば着せでける人いねがなぁ」
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