◆[山形市]中央公園・大手町 夕暮れて秋の忍び寄る(2021令和3年10月2日撮影)

「は〜あぁ、秋なたのがぁ」
桜の季節ならこの通りも人で一杯になるんだげんとと思えば、尚更ため息。

日が傾くころ、人々はそろそろ帰ろうかと我が家に思いを馳せ始める。
この場所が帰る場所でもあり働く場所と、直立不動の公衆電話。

ささやかな夕陽が中央公園の池のさざ波に揺れている。
右膝の力を抜いて、その揺らぎを飽くことなく女性像が眺めている。

西陽から解放され、薄墨色が忍び込み始める公園通り。

落ち葉はカラッカラに乾き、家路を急ぐ車の風に身を任せる。

「今の若者はタバコさ興味ないもねぇ」
「んだず。おらだんどぎは吸わねど人間んねみだいな、おかない雰囲気があっけもなぁ」
ぺりぺりに剥がれ、白くすっぱげた張り紙の中でも、「たばこ」の文字だけは真っ黒い。

先日の雨で溜まったタイヤの水。
ヤマゴボウはその水面をそっと覗き込む。
自分の姿を確かめるために?

「こご通っどいっつも思うんだげんともよ」
「なして歩道ていう公共の場さ洗濯物がぶら下がてるんだず」
小さな義憤を感じながらも、今度は何がぶら下がるか期待する気持ちも隠れている。

「あたしってよぅ、いま場違いなどごさいねが?」
覗き込む私へ束子(タワシ)が問いかけてくる。
「んだずねぇ。家の中でちょどしてらんなねんだべずねぇ」
「ちょどすのはやんだ。一生懸命働ぐだいもの」
ワタシハタワシの気持ちが分からない。

「カラスが鳴ぐがら帰っびやぁ」
「街の中はムクドリが一杯いで大変なのんねがよ」
話が逸れるあいだにも、暮れ行く空の濃さが増してくる。

秋はいろんなところへ出現する。
ある時は密やかに、そしてある時は情熱的に緑から赤へ。

「こだな夕方どさ行ぐだいのや?」
「七日町」
「ほだんどごさ行ったてなんにもないじぇ」
暮れかかる街で寂しいごどやねでけろぅ。

ヒマワリは途方に暮れる。
いったい太陽が顔を出さない日は何を希望に時を過ごしているのだろう。

真っ白い花びらの隙間にも夕闇が忍び込む。
花びらの群れは闇に抗って白く浮き立つ。

小径の向こうに朝顔。
大手町の良さが凝縮された光景の中にいて、
小さな満足を得る。

すぼめた花びらが夕闇の中に浮かび上がる。
その一個一個が青みがかった空へ飛んでいきそうだ。

二万ボルトがネジでしっかりと止められている。
二万ボルトが暴れたら大変だべがらな。

日の落ちた街角に街灯が灯り始めた。
黒ずんだ街並みの中にポツポツと浮き上がるのは秋の花たち。

ガーッと電車が過ぎる。
小刻みに揺れる空気にも動じないで、
ぷっくり膨れた柿の実が葉っぱの影に隠れている。

太陽は白鷹の山並みの向こうへ帰っていった。
駐車場の標識には夏草が絡みつく。
標識は絡みつかれていることも忘れ、遠くを見ながらボウッと立っている。

「毎日犬の散歩だがっす?」
「朝も夕方もよぅ」
「犬が汽車好ぎだがらほれ」
この犬とは十数年の付き合いだとおじさんはしみじみと笑った。

「あど五分くらいで電車が来て、そのあとすぐまだ来るんだ。
ほしてそのあど新幹線が来んのよ」
この場所で電車を見るのが日課だから、何時ころどっちから電車が来るのかもすべて頭に入っている。
道理で電車好きの犬の信頼も厚いわけだ。

窓から灯りが漏れてくる。
灯りの意味を考えて、人の営みに思いをはせ、なんだか切なくなってくる時間帯。

霞城公園のお濠には未だにゆったりと波紋が広がっている。
暗がりのコスモスは、ゆるゆると首を振るばかり。

街灯の下へ自転車が一瞬浮かび上がり、
そしてスイッと闇へ走り去る。

犬を連れたおじさんが言う通りに電車がやって来た。
車窓からはみ出す灯りは眩しいほどに明るい。
その漏れだす灯りは棒状に伸びたかと思うと、あっという間に線路の向こうへ走り去った。

新幹線も金属音を発して滑るように山形駅へ向かっていく。
一瞬だけ闇が切り裂かれ、再び何事もなかったように闇が沈殿する。

いよいよ街灯の灯りも際立ってきた。
大気は止まり、夜への扉を開けようと鍵を持ち上げる。

「おお、まだいだっけのが?」
「当たり前だべな。おだぐがほっつき歩いでいるあいだも仕事よぅ」
闇にポツンと浮かび上がった公衆電話は、これから夜のシフトへ入っていく。

「どだごど操作すっかも忘っだじゃあ」
ドアを開けて覗き込んでみた公衆電話は以外と綺麗に磨かれていた。
街の灯りが滲んできた時間帯も態勢は盤石だ。
ただ、テレフォンカードを持っている人は、いまどれだけいるんだべ。
何かの記念でもらったカードは引き出しの奥。

少女が闇の中を迷っている。
背後からの灯りに体の線は浮かんでいるけれど、
その表情は読めない。
きっと悲し気な顔になっているんじゃないかと気遣ってしまう。

中央公園がしっとりとした時間に包まれる。
週末の緩んだ空気の中へ噴水が一筋の白い線を描き続ける。

夏の宵なら、あちこちに人々が夕涼みをしている時間帯。
いまは人もなく、噴水の下で水面のアメンボが音もたてずにすいすい滑る。

夏が終わったばかりだというのに、
早々と舞い落ちた葉が乾いた音をたてながら一時(いっとき)地面を滑っていく。

ぐうっと腹の鳴る頃、中央公園は美しい時を迎え、
誰もいない空間で、置き石と噴水と水面と樹木が、それぞれの持ち味を奏で合う。
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