◆[山形市]松見・南原・平清水歩道橋 曇天を吹け、生ぬるい風(2021令和3年8月28日撮影) |
小立歩道橋なていうより、松見町のヤマザワんどごの歩道橋てゆたほうが分がっべずね」 車のリアウインドウに映った歩道橋の上で、不審な親爺がブツブツいっている。 |
今日は一段と風が強い。そして歩道橋上は地上よりもっと風が強い。 帽子を押さえ押さえカメラを構えている親爺の前を、 部活帰りの女の子はぷっつりと会話をやめ足早に去る。 |
「なんか気味悪れんだげんと・・・」 ただ車にカバーが被せてあるだけなんだけれど、 何故そう思うのかは自分でも分からない。 |
ギラギラとパチパチと無言で強烈な光を向けてくる。 ここではないが、信号より強い光を放つ広告看板が大野目にある。 信号が見づらいどころか、信号待ちの間ずーっとその光が目を刺激し続ける。 「あれはなんとがならねもんだがねぇ」 なんでもただ強く主張するだけの者は嫌われる。 |
「ぶはーっ!」 力尽き果てた土嚢。 |
「金あっどごは違うずねぇ」 「なんのごど?」 「んだてあだいおっきいのに、あだい綺麗なんだじぇ」 街角のちっちゃな錆び付いた看板が羨まし気に見上げる。 |
大型車が通り過ぎるたびにヤマゴボウは首を上下に揺らす。 昔、鳥がコップの水を飲む仕草をする置物があった。 もしくは立場の弱い営業マンは、米つきバッタなんて言われてもいたな。 |
訳の分からない抽象画、もしくは幾何学模様となった国道の地面。 |
近くで見ればバズーカ砲みたいにデカい信号機。 皆車たちはそのバズーカ砲には従順に従うしかない。 強い三色の目で狙われているのだから。 |
「なんだが分がんね?」 「見だままっだなぁ」 けっして危ない撮影方法で撮ってはいません。 |
「注射お断りんねんだが?」 「ワクチン注射は個人の自由意志です。しかも注射ではなく駐車ですから」 ちっちゃいのに結構強い意志を持って主張してくる。 |
「こいな葉っぱがくっつぐど迷惑なのよねぇ」 蜘蛛は黙って見逃しているけれど心中は穏やかじゃない。 病葉(わくらば)は、どこへいっても邪魔なのかと意気消沈で引っかかる。 |
夏の間に緑は勢力を増し、いまやマックスになっている。 恥川に掛かる橋は、緑に覆われ元の形が分からない。 |
郵便バイクのアイドリング音が、湿気の充満した通りに垂れ流される。 やがて配達のおじさんが現れ、バイクは軽快なエンジン音で走り去った。 |
「耳でっかいずねぇ」 「んだのよ、ロープで引っ張らっで痛っだいのよぅ、て耳んねがら」 鉄の棒は冗談に軽く冗談で返してくる利発なヤツだった。 |
「大人みだいだげんと、オシメしったのがぁ?」 「んだぁ、漏れがひどくてよぅ、てオシメんねがら」 電信柱は錆つかないように布で針金から守られているようだ。 |
水路に挟まれ、アルストロメリアは夏の終わりを名残惜しむ様に涼やかに咲く。 |
「なして私ばり赤いんだべ」 たった一個の赤いミニトマトは自分だけ違うことに引け目を感じている。 青いトマトたちは赤いトマトを仲間はずれにする気などさらさらないのに。 |
「どだい伸びるんだず、どごまででっかいんだず」 ダクトは大蛇の様に壁を這い二階まで伸びる。 |
一段と風が強くなった。 コスモスたちは背をかがめ風に耐えている。 自販機はデーンと構え、コスモスたちのか弱さを心配げに見つめている。 |
風が一瞬止み、背伸びするコスモス。 風に立ち向かうより、風に身を任せるのが生きる道とコスモスたちは知っている。 |
もちろん誰も座っていない。 南原中央公園の端っこに一列に並んだベンチ。 その退屈さは隠しきれない。 座面の板に黒く細い皴が幾筋も現れ始めている。 |
ベンチの板に挟まれて身動きできずにいるのは、 これからどんぐりになるのか?それとも違った種類の何かの実なのか? 周りを眺めれば、まだ青々とした銀杏の木が茂るばかり。 |
カッサカサに乾いたヒマワリ。 手のひらで握れば、パラパラと粉上になって地面へ落ちそうだ。 そこまでして立ち上がって空を眺めるのは何故? |
空には柔らかい雲が浮かんでいる。 地上はこんなに風が強いのに、人ごとの様に形を変えゆったり流れている。 |
「うーっ、首筋が痒くなりそうだぁ!」 まるで蕁麻疹でも出てしまったように首筋に手を当て、 アザミの綿毛を見つめてしまう。 |
松見町ヤマザワの正面でギラリと光の洗礼を受ける。 「そろそろ里芋が山積みで売らっでいんのんねがい」 |
「あったかい〜」 「暖かくても柔らかぐはないべ」 中学生の帰路は気持ちも緩み、ふざけ合いの宝庫となる。 |
「早ぐ来いずぅ」 「何がしたのが?」 「別にぃ」 他愛もない会話が歩道に満ち、退屈した影が伸びている。 |
健康的な足が林立するコンビニ前。 こんな友人との帰路の油売りが、後から思えばいい思い出になったりする。 |
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