◆[山形市]ブルーインパルス飛行 みんな見上げて幸せに(2021令和3年5月23日撮影)

「ドギドギすっずねぇ」
「早ぐ来ねがてがぁ?」
「んねぇ、この高さから下ば覗ぐどよぅ」
山形市街はもちろん、360度の視界が広がる駐車場の屋上。

「霞城セントラルば掠めるくらいの高さで飛ぶんだべが?」
「わがんねげんとも、あっちば飛ぶのはまちがい無いんねがい」
スマホのカメラを向けてアングルを定める。

空は曇天。それに呼応して街並みも暗く沈んでいる。
でも、これからの航空ショーに期待が膨らみ、じっと待っているようにも見える。

「あそごが文翔館の時計台だがら、あの辺ば狙てっどいいのんねがい」
「ほんてん文翔館ばめがけで飛んでくるんだがや?」
人々の想像が膨らみ、様々な憶測が街を飛ぶ。

サラサラの髪の毛が風になびく。
「ちぇっと寒いがもすんねげんと、まなぐ大っきぐ開いで待ってろなぁ」

一体何処をどう飛ぶのかも分からず、ただ時間が経ち、期待が高まる。

「とりあえず七日町の方ば見でっどいいのんねがよ」
皆スマホで情報を集め、マスクの事など忘れてる。

「いづ来るんだや」
「ほだなお迎え来るみだいなごどやねでけろ」
「お迎えは空からくるのっだず」
「んだがら、お迎えんねずぅ」
ブルーインパルスはお迎えではなく、喜びを運びにやってくる。

予定時間が過ぎた。
周辺を見渡すと、富神山辺りが一瞬明るく煌めいた。
「田植もそろそろなんだべな、水張ったどごは轟音で波が立つんねが」

「来たー!」
「なんだず駐車場の水銀灯が邪魔してピントが合わねどれぇ」
興奮にカメラを持つ手がいうことを聞かなくなった。

「あのライトは挨拶のためなんだど」
隣で空を見上げているブルーインパルスオタクのお姉さんが教えてくれた。

轟音がいやが上にも心臓を活発化させる。
ブルーインパルスには人間を興奮させる何かがある。

「撮れ撮れぇ、下なの見でる場合んねぞぅ」
市民みんなが上を向くなんて、滅多にないこと。
やっぱり俯いている市民に元気を与え、上を向く気にさせるにはブルーインパルスは特効薬。

「曇天んねごんたらなぁ」
「飛んでけだだげでもありがたいっだず」
南へ向かう姿を見て、今度は北上してくるに違いないと当たりを付ける。

「どれくらいの高さば飛んでいるんだべねぇ」
「霞城セントラルが115メートルだがら、んーとよぅ、あの高さだど、ん〜」
「考えでる暇にどさが行ってしまうはぁ」

曇天の空を切り裂くように、真っ白な煙を山形の空へ伸ばしていく。

「今頃市内のあちこちでみんな見っだんだべねぇ」
「どごが一番良い場所なんだべなぁ」
「どごもこごもないっだず。見るいだげでもいがったべぇ」

見上げる人々は皆心の中に幸せが充満する。
この瞬間だけは鬱屈した心も消え、ただただ空を見上げて感謝する。

「なして今回は四機だげなんだ?」
「しゃねげんと何が理由があんのっだず」
「ほいずあんだっだ」

白鷹の山並みにぽっかりと雲間ができ、光が帯状に降ってくる。

ハートを描くために二機は一旦離れる。
そして再びくっつき会うんだ。

息でマスクが湿ってきた。
そろそろ山形への幸せふりかけは終わりに近づいているようだ。

「ありがどさま〜!」
「今度はマスクなしで、みんなくっついで見るいどいいなぁ」
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