◆[山形市]岩波・小立 花の仲間さ まじぇでけろ(2021令和3年5月15日撮影)

岩波の道へ足を踏み出す。
早速、明るい笑顔でツツジがお出迎え。

「とっくに山吹は終わたんだなぁ」
真っ黄色染まるはずの山吹ロードが、明るい緑色に変わっている。

「こちょびたいずぅ!」
脚立は寝そべり、草花にくすぐられていい気分。
このままだと、立って仕事をする気が無くなるかもしれない。

藤の花が空からだらんと垂れ下がる。
何かに寄りかかっていないと空から落ちてしまうべなというほど他力本願。

疲れ果てて横になる梯子は、年を重ねて体は老境に入っている。
孫のような草花たちが寄ってきて、黄色い声で騒いでいる。
梯子はその様子をにこやかに見守っている。

岩波からは月山が真正面に見える。
様々な電線が邪魔するけれど、現代においてはそれも一興。

初めて見つけたときはびっくりした。
勝手にポコペン草と名付けた。
「んだて、触ればポコペンッって鳴りそうだどれや」
後に植物図鑑でルナリアと知る。
「なんだが似合わね名前だずねぇ」

電柱に伸びるワイヤーへ蔓が一塊を作っている。
まるで夏へ向かって競争するようにその勢いが止まらない。
遠くからあきれ顔で月山が眺めている。

青い空に真っ白な咲き姿。
「なんだて美しいずねぇ」
オダマキは当たり前だと言わんばかりに、
花びらの先まで生気を漲らせている。

「地面ばノタノタ這ってよぅ、ピンクのモスラみだいだどれ」
芝桜は車につぶされない程度に道へのそのそと這い出している。

アイリスがベロを垂れている。
「ほだなごど花びらば垂れでっど牛タンみだいだどれ」
背後のドアノブは、アイリスへの失言に聞き耳を立てていた。

「ルピナスは逆さまにすっど藤の花が垂れ下がっているのど似でっずね」
「ルピナスば逆さまにすっどスナピルだべ」

花びらはちいさいけれど、塀をじわりと降りてくる姿には塊感がある。
「集団で一つの芝桜なんだが?一つ一つの芝桜が集まって集団になてるんだが?」

ケシの花はぱっくりと花びらを開けて、空からのおこぼれを受け止めようとしている。
「おこぼれって何や?」
「光のかけらっだな」

簾の元にはスイカがあって、
その周りではランニング姿の子供たちが、口の周りを赤く染めて頬張っている。
昭和の郷愁に浸ってしまう雰囲気が満々に満ちている。

「今年も咲いだのが」
ミラーはオダマキの方を見向きもせず、ぼそっと言葉をこぼす。
「今年もいるんだね」
オダマキははにかむ様に俯いて、小さな声で呟く。

「ずっとその恰好でいんの辛ぐないが?」
「三分しか持だねんだっす。んでも私の三分は異常に長いんだっす」

ボールは何処からも飛んで来ない。
待ちくたびれたネットは力なく垂れ下がる。

「山形市の上下水道部は怠慢なのんねが?」
「なしておらだが川ば見守ってらんねのや?」
地蔵たちが憤慨して口々に愚痴をこぼしている。
水道部の銘板は太陽にギラリと光ってほくそ笑んでいる。

「おらぁペガペガだはぁ」
「おらもボロボロだはぁ」
「二人ともほだいかしぇいで偉いっだなぁ」
持ち去り厳禁のビニールとチリトリにねぎらいの言葉を掛けてみる。

フェンスに引っかかったクレマチスが空を見る。
ミラーも真似して空を見ようとしてみたけれど、なかなか首が上手く動かない。

じっとしていられないほど元気なツツジは道路へ飛び出して風を受けている。
車が通り過ぎるたび、揺れる花びらが歓声を上げ喜んでいる。

溢れんばかりに大気を押しだす咲きっぷり。
雄しべがツンツンと空気をこちょばすナナカマドの花。

くすんだトタンの前で光を帯びたオダマキは、
私を見てと体の線を強調して媚びてくる。

「私ば坊主ていうな!こだい毛が生えでいるんだがら」
確かにもさもさと生えた毛がぷっくりと膨らんでいる。
「今度から坊主てやねがらな、ネギ坊主」

「俺の役目は植木の鉢なんだがらよぅ」
「なしてビニールが吹っ飛ぶのば押さえでいらんなねんだずぅ」
役割以外の仕事でボヤくことはどこの世界にもある。

アリウムの小さな世界をよくよく見れば、雄しべが大気の分子を捕まえようと、
ニョロニョロと蠢いている。

赤と黄色を滲ませて、エニシダの花は緑の中で異彩を放つ。

「暗がりの中で寂しくないが?」
「どさが遊び行ぐだいったて無理だし・・・」
ミラーと消火栓はじっと佇み、仕事に専念する。

空気を震わせてカラカラと乾いた音が流れてくる。
「花びらば開いっだみだいだどれ」
ドラム缶に囃し立てられ、ペットボトルは益々その気になってクルクル回る。

「この暑さで上り坂がよ」
汗を拭き拭き、益々足が重くなってくる。
坂だらけの岩波の道すがら。

開いた姿を夢見ながら、ぎっつぐクルクル巻きになった花びらを解きほぐそうとする瞬間。
まるで歌姫ミーシャの髪型の様にきつくツンと立っている。

「さぼんなよ」
岩が重々しい声で語り掛ける。
「おらだも年だしよぅ、休むだいどぎもあるっだず」
岩の本音は退屈して声をかけただけだとチリトリと箒は知っている。

狭くくねくねの道を山交バスがゆっくりと下ってゆく。
軒や庭木に擦らないように慎重に。

「おまえ、どご向いっだのや、ちゃんと下向げず」
蛇口は本当は空へ向かって水を迸らせてみたかった。

「わさわさて仕事さんねぐなるはぁ」
消火栓がボヤいている。
でも、本当は嬉しいボヤキに違いない。
こんなに草花に囲まれているんだから。

ギラリと光る太陽は、草花の茎にも力を与えて花びらたちを支えている。

「おまえなのただの雑草だどれ」
屈辱的な声を掛けられ続けるハルジョオン。
誰が雑草と決めつけたのか詮索するでもなく、あちこちに居住地を広げていく。

便座は大きな欠伸を隠そうともしない。
「暑いがら早ぐ便所さ運んでけろ〜!」
便座の声が聞こえているのかいないのか、
一輪車は、なるようにしかならないさと不貞腐れたように仰向けになる。
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