◆[山形市]薬師公園・馬見ヶ崎橋 植木市が途切れても(2021令和3年5月8日撮影)

風が強く吹いている。
グランドの歓声も雲と一緒に吹き飛ばされていく。

「ちょっと待って」
「ランニングんねがら」
河原では真新しい注意書きが、誰彼構わず声をかけてくる。

馬見ヶ崎橋をゆっくりと山交バスが走っていく。
段差の多い馬見ヶ崎の川と山交バス。
なんと山形を象徴する光景だろう。

「部活帰りがぁ、休みの日も練習なて大変だなぁ」
ツツジの陰に隠れて自転車の一団を見守る。

一体部員は何人いるんだぁ?
次から次へと列をなして土手を走り去る。

太陽は屋根の庇へ忠実に影を作っている。
菜の花は振り向きもせず、土手を行き来する人々へ黄色い声を振り撒いている。

「挫折したのがぁ」
スコップはその先を砂にめり込ませ倒れている。
「ほだい年寄りばいじめんなずぅ」
茶色い体の影は砂の上へヨレヨレに横たわる。

「おまえよぅ、目立ちすぎ、眩しいったらないず」
「周りば照らしてけっだんだじぇ」
白く光を反射する戸は、自分のおかげで周りは明るいんだと主張する。

土手沿いのゴミ集積所。
その体はぎっつぐ樹木に寄り添い、
強い風でも吹き飛ばされないようにたづいで離れない。

馬見ヶ崎橋側から二口橋方面へ向かう自転車は下り坂なので、
ペダルを漕ぐにも余裕がある。

それに反し、二口橋方面から馬見ヶ崎橋へ向かうには、
それなりに息がゼイゼイ鳴ってしまう。

「なえだてまんず、もうダメなんだべがはぁ」
空があんなに青いのに、そこへ伸ばした枝に葉っぱが付いていない。
生気を失った細かい枝は、河原の風の中でいつまでももがいている。

緑の向こうに白い花、その向こうにピンクの花びら。
小径の向こうから誘ってくるのは、今を盛りのハナミズキ。

昭和三十年代の白黒写真に、確かにこの松が映っていた。
その写真は河原で親戚たちが集まって芋煮会をしている和やかな画像だった。
みんな笑顔だった。
その中には将来カメラ親父になる子供も交じっていた。

「トタンの切っ先が危ないべな」
タンポポに声をかけてみる。
トタンは大口を開け、その暗闇の中にタンポポを誘ってくる。

馬見ヶ崎の橋の下から歓声が流れてくる。
橋の裏側の鉄骨は緑色に輝いて光を反射している。

頭のてっぺんに眩しい光を載せて、
自転車は馬見ヶ崎橋の白く輝くタイルの上を滑っていく。

山形市の北の拠点、千歳公園前バス停。
多くのバスが待機し時間を待っている。

バスがゆったりと体を揺らしてバスプールに入ってくる。
「山形で山交バスさ乗らねなてあり得ねっだず」
確かに昔はそうだった。
窓際の席に座り、ぼんやりと流れていく光景を眺めるのが好きだったあの頃。

そこだけに光が集まり、
一生懸命光たちは束になってタオルを乾かしている。
タオルはくすぐったそうに、でも心地よさそうに黙って光に撫でられている。

「分がたずぅ」
ポロポロと角質を落としながら看板は太陽の方向へ向きを変える。
よく見ればさっきからどでかい狛犬がちょっかいを出している。
それを嫌がって看板は向きを変えたらしい。

様々な色で思いを伝えてくる陽だまり。
薬師公園は陽だまりの楽園。
公園中に梢から光が降り注がれ、陽だまりが地面に群れを成す。

光を背に溜め込んだその放物線は、願いが連なる架け橋だ。

♪甍の波と雲の波〜
思わず口ずさみたくなる目の前に、盛りを終えようとしているハナミズキ。

「なんだがしゃねげんと毎年この場面ば撮ってっずね」
なぜこの場所に惹かれるのか分からない。
背景の光と手前の地蔵さんのコントラストが琴線に触れ心地いいのかもしれない。

なんぼ植木市が途切れても、薬師堂には人が訪れる。
石畳は隙間から雑草をはみ出させ、陽春の生気漲る様を伝えている。

「なんだず、かんだず」
何かにつけてワイワイとお堂の下から顔を出す掃除用具たち。
天気がいいもんだから体がうずうずしてしょうがない。

ベローンと伸びたボンネットは、青空と若葉たちの遊び場になっている。

お堂に向かった自転車は、何をしゃべったらいいか考えがまとまらない。
後輪に当たる日差しが、タイヤをぱんぱんにしているため、
それが気になって思いがまとまらないんだ。

グギグギッと空へ伸びて、花をパッと開く。
酔っ払いたちが機嫌よく踊り始める様のようだな。

藤の花が咲いたら、もう季節は夏。
二人でさやさやと流れる花の房を横目に散歩するのは極上のひと時。

花房は風に揺れ、その隙間からこぼれる光がチラチラと目を射ってくる。

水仙の葉の先の水面が眩しい。
その眩しさの先で家族がのんびりとザリガニを釣る昼下がり。

突然現れた親爺が子供たちの背後からカメラを構えているのだから、
父親は気が気ではない。
大木の傍からチラチラと視線を投げかけ、カメラ親爺の挙動を心配気に見守っている。

「もっと二人近づいでぇ」
「ケースのザリガニが見えるようにもっと上でたがてけろ」
カメラ親爺は二人にいろいろと注文を付けてくる。
少女たちは困惑しながらもその言葉に従ってくれる。
助けを求めようにも、お母さんは脇のベンチから暖かい目で見守るだけ。
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