◆[山形市]千歳橋・銅町 やまがた百名山の次に来る山(2021令和3年2月14日撮影) |
コンビニが雪に埋まってしまった! というわけじゃない。 今、山形のスーパーやコンビニの駐車場の隅では掃かれた雪が山になっている。 |
ぺしゃんこーッ! 雪の下に隠れていた間に、どれだけの車に踏んづけられたことだろう。 |
雪は行先を求め、軽トラの荷台から地面へ這い下る。 軽トラのタイヤはその重さにズーッと耐えながら潰れ気味。 |
雪が解けると、変なところからひょっこりとあり得ないものが現れるのが常。 瓶の口からはプハーッと温まった息が漏れ、 肩口には青空が映りこんでいる。 |
「なんで三角なんだ?」 「はぁ!白い骨がてっぺんから放射状に地面さ伸びっだどれ」 「なえだて、おだぐは傘がぁ!」 冬の間に雑草ば守って、耐えっだっけのがぁ。 |
桧町アンダーのコンクリート壁も乾いてきた。 春へ向かって坂を上っていく足取りも軽い。 |
銅町は工場の街。 ミラーの向こう見ると、なんだあいず?何がの廃棄物だが? |
「蹴んなよ」 「あ〜、やっぱり蹴ってしまたがぁ」 目の前に雪の玉があったら、蹴ってみるのは山形人の常。 |
「なんだて眩しいごどぉ」 窓たちは一様に目をシカシカしながら、 それでも太陽の光をありがたがっているようだ。 |
「千客万来だニヤーッ」 「なしてゴミばっかり来るんだべニャーッ」 |
「いやぁ、味わいのある建物だし、ガラス窓も・・・ひゃ!」 「誰がジーっとこっちば見っだどれぇ!」 鋳物の街では、驚きがあちこちに見つかるものだ。 |
「やっと歩ぎ易ぐなたもなぁ」 背に張り付いた光は、ばあちゃんにずーっとついて来る。 |
「アイガー北壁だが?」 「アイガーば知ってるんだがや?」 「しゃね」 「やまがた百名山の次に百一番目の山が出ぎだみだいだぁ」 |
「なんだて皆新しく揃えでぇ、あの真っ黒い雪山ば掃いでけんのが?」 真新しい雪掃き道具たちは、滅相もないと目を逸らす。 |
怖いもの見たさで歩きながら少しずつ近づく。 車も人も飲み込むような勢いで、真っ黒い雪山が迫ってくる。 |
「ちぇっとお湯掛けで、溶がしてけねが?」 「なんぼあたしがおっきくても、あの雪山は無理だずぅ」 太陽に照らされてなのか鉄瓶は目を細め、どっかと座り込んで知らんぷり。 |
太陽の光をすくい上げ、気持ちよさそうに体内へ取り込んでいる。 |
山形にとって、自転車に乗れるイコール春になったということ。 それにしても自転車の前途には信号やら街灯やら標識やら、 棒立ちの障害物が多すぎる。 |
「腰痛っだいったらよぅ」 一面の雪におじさんは毒づいている。 オシドリは冬眠もせず、雪かきの様子を見守っている。 |
山形市内から集まってきた雪は、 溶けるとともにその本性を現し始め、 塵芥(ちりあくた)の類(たぐい)だけが残り、異様な世界を創り出す。 |
「雪も溶げだし、散歩に最適な季節っだなぁ」 千歳橋を渡りながら、辺りの様子を見て歩くのも気持ちいい。 |
「二口橋・馬見ヶ崎橋の方が霞んでだじゃあ、あれは春霞のせいだが?」 いやいや、まだ早い。 山形の冬はそんなに甘くない。 春の片りんだけを見て喜んでいては、あとから足元をすくわれる。 |
黒山の雪だかり。あ、んねっけ。白黒マダラの雪だかり。 山形じゅうから集められたのは雪ばかりじゃなく、 人々の黒い部分もあるんじゃないかと思わずにいられない。 |
「危険な行動て言うわりには、随分のんびりしてるんねがい」 箒は退屈しきってロープに寄りかかる。 |
「この屈強なキャタピラーで雪山さ登っていぐのが」 優しそうな雪も、いまや頑なに固まって黒ずんでいる。 もはや重機の力を借りるしかない雪国の宿命。 |
七日町方面が霞んでいる。 「昔と違って、街の真ん中は静がなんだべなぁ」 おじさんはこのまま七日町は霞んで消えてゆくのかと、往時を回顧しながら千歳橋を渡っている? |
河川敷に積み上げられた雪は、醜悪な体が千歳橋よりも高くなっている。 イオンの看板も、遠くから早く消えてなくなれと思いつつ及び腰。 でも、醜悪なのは雪ではなくて、雪に含まれた山形の不純物たちなのっだなねぇ。 |
「どれだげ俺さぶつかてくるんだず」 年中ぶつけられ、ガードレールは補強されてはいても、 そのゴムは疲れ果ててヒビが入っている。 |
溶けだした雪は時として粋な計らいをする。 樹木はここぞとばかりに自分を映しこみ、豊かな枝ぶりに惚れ惚れしているようだ。 |
「ほごさいっど温かいんだが?」 「手垢のついた言葉だげんと、木のぬくもりてゆうんだがなぁ」 看板は仕事を忘れ、樹皮の心地よさに身を委ねている。 |
奥羽本線のガード下。 日陰には未だに心を開かない氷が曲線を描いている。 もうちょっとで大気に出られたはずの泡が寸前で止まったまま。 |
馬見ヶ崎川の向こうではトラックたちが大あくびをしている。 束の間の春に、トラックたちも固まった体を伸ばしているに違いない。 |
干されているのはタオルなのか? それとも走ることのできない自転車を人間が干しているのか。 でも自転車は風呂上がりのように気持ちよさ気じゃないか。 |
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