◆[山形市]成沢西・西成沢公園 冬がその気になる前に(2020令和2年11月22日撮影)

「ちゃんころまいしてもらて買い物なて、うらやましいんねがいぃ」
初冬の日差しは子供の頭にも肩にも、そして親の肩にも優しく注ぐ。

「おらだも出がげる恰好しったんだがらよぅ」
「ちぇっとでいいがら外ば歩いでみっだいずねぇ」
「んだぁ、そして家族てどだなもんだが味わてみっだい」
ウインドウの家族は無表情で外を見つめる。

自転車の影が突然ゴミ篭へ寄ってきて止まった。
ゴミ篭は声を掛けようとした。
数分後少年が買い物を終えて帰ってきた。
自転車の影はあっという間に去っていった。

ウインドウからじゃ、なんのための千羽鶴か分からない。
分からなくてもいいじゃないか。
きっと誰かのためなんだから。

「暑っづいどぎは混んでだっけべずねぇ」
日差しに浮かんだ葉っぱは自販機の賑わいを思い出し、
自分たちの姿が変化してしまったことにもやがて気づく。

「あれ?あいづ買ったっけがぁ?ん?こだな買ったっけがぁ?」
開けたエコバッグには初冬の空気が入り込む。

「昔、べた踏み坂ってあっけずねぇ」
「こごはやや踏み坂っだなぁ」
「飯田高架橋は静まるていうごどしゃねもね」

「今川焼?なにやほいず?」
「ほだないいがら、早ぐあじまんかってけろずぅ」
山形では今川焼といってもほぼ通じない。

休んで跪(ひざまず)くトラックたちに、鉄塔が高所から有難い言葉をかけているようだ。

自分のひと夏の存在を確かめるように、
電柱の影をしっかり眺める。

「ほだい急ぐなずぅ、指痛ぐなっどれ」
そんな指にも冬の光が透き通る。

「なんだてちぇっと変わったトンネルだずねぇ」
小さな場所だけれども、ひっきりなしに人が行き交う。
きっと地元の人には便利な通りなのだろう。

橋の下の暗がりが、光を浴びた側溝をひと際浮かび上がらせる。

「この道ないどよ、ヤマザワとヨークば行き来でぎねのよ」
「立派な地下道が近ぐさあんべした」
「ほっだなどご通んの面倒くさいべぇ」
おじさんは捨て台詞をトンネル内に響かせて走り去る。

竜山はこの間の初冠雪で冬に突入。
西蔵王にも雪が降ったら、山形人は観念して冬ごもりを始める。

今年最後になるかも知れない公園の賑わい。
紅葉の葉っぱの隙間からこぼれる光が愛おしい。

「なんだてお昼なるんだどりゃあ」
「道理で腹が鳴っど思た。あの時計台も鳴るんだべがなぁ」

幹の途中からちょびっと生え出た葉っぱ。
空に広がる多くの紅葉から見つめられ、
生える場所を間違ったのかと萎縮する。

「これはベンチか?獲物を捕らえる罠か?」
「はたまた大きすぎる知恵の輪か?」
いくら光が当たっていでも、触れると冷たそう。

「おまえだも早ぐ赤ぐなれぇ!」
紅葉は催促するけれど、常緑樹に声をかけてもしょうがない。

まもなく終わる紅葉なら、
おっきぐ撮ってけらんなねべな。

雪の上じゃ走れない。
乾いた芝のうちに走らせる。
とにかく山形人に乾いた地面はとっても貴重。

落ち葉が降り積もるころ。
なんぼ人と人の距離を開けろといわれても、
距離は自然に縮まっていく。

若さの発露ができるのは今だけ。
だからこそ当たり前の光景が貴重に思えてきて、目を細めてしまう。

「おかないぃ!」と口で言いながらも、
体はそのおかなさを喜んでいる。

「おかないぃ!」と口で言いながらも、
体は縄の罠にはまって前のめり。

竜山の上を筋雲が刷いている。
風もなく穏やかな日々。
子供たちの歓声が耳に心地いい。

おそらく二人の顔は必死の形相なんだろう。
足を見ながら想像するだけで笑えてくる。

「笑ってぇ」
「んだて、目の前さ変なおんちゃんがいるんだものぉ」
確かに黒いカメラを目の前に突き付けられたら笑えない。

日差しの強さは滑り台の影を見れば分かろうというもの。
蛇のようにくねった影は力強く滑り台を支えている。

青空・笑顔・滑り台。
三拍子そろった場面に余計なことをいうことなし。

うろこ雲は冬の使いか?
その鱗の一片一片が秋の残り香をこそげ落とし、
やがて冬が一面に押し寄せるのか。
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