◆[山形市]もみじ公園 人波が去った後(2020令和2年11月14日撮影)

あらゆるスマホやカメラに収められ、
園内のもみじたちは緊張を強いられて気の緩む暇もない。

「同じ色だどれぇ」
もみじは覆いかぶさるように、スマホカバーの色へ反応する。

その先は大気の揺れに敏感。
いよいよ冬だなぁと、微かに緊張感を高めて震える。

「今までは風に乗っていたのに、今度は水面さ乗るいなて極楽だぁ」
落ち葉は折り重なりながら、微風に任せてゆらゆらり。

「密ば避けろず」
「ほだごどやっでも避けようがないんだずぅ」
そんなこと言っても、やがて池の底に沈んで眠りにつくという重い真実を皆知っている。

「やんばいだねぇ」
「綺麗だねぇ」
口にするでもなく同じ紅葉に視線を向けて、
お互いは気持ちが通じ合う。

「この頃はエサばりんねくて、葉っぱばっかりだぁ」
鯉は頭上からの来訪者にどう思っているのだろう。

「木々も真っ赤だげんと、池の中も真っ赤だじぇ」
頭上も周りも池の中も赤に染められた冬の前。

「くたびっだはぁ」
「池ばたった一周しただけだどれや」
「んだてちゃんころまいしたまんまだじぇ」
来園者の会話に落ち葉はクスっと笑う。

すでに日没が過ぎ、辺りの喧騒が影を潜めて消えてゆく。

「いやぁ今日も来たねぇ」
「緊張しっぱなしだっけげんと、やっとおらだの癒しの時間が来たぁ」
木々の枝々から、そんな気持ちが滲み出てくる。

神町空港へ行くのか、ゆったりと光の軌跡を蒼天へ残しながら北へ去る。

「間もなく体中が軽くなっから、せいせいする」
そんな心にもないことを呟いているような、葉っぱとの惜別の頃。

賑やかなのは灯りだけ。
太い幹の中から、ドウンドクンと鼓動が聞こえてきそうなほどの静寂が訪れる。

空に星々が煌めき始めるころ、
清風荘が水面に浮かぶ屋形船になったよう。

ちょっと懐中電灯を地面へ置いたら、
落ち葉たちはこぞってゾゾゾッっと迫ってくる。

池の周りを灯りが糸を引くように繋がる。
繋がりは平行線になって池にも浮かぶ。

これ以上ないという色素を満遍なく散りばめて、
冬の前に大盤振る舞いをして雪を待つ。

葉っぱ全体がこごまって体の自由が利かなくなる前に、
葉っぱの指先をクイッと持ち上げて、冬の兆しを感じ取る。

フェアリーが横切った?
いったい今から何が始まる?

フェアリーはやがてもみじ公園のご神木ともいえる三本の紅葉の周りをゆったりと舞い始めた。

フェアリーはやがて収斂し、また来年という気持ちを込めて紅葉の背後から光を強く放ち、
あっという間に闇の中へ消えていった。
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