◆[山形市]宮町・錦町 秋と冬の拮抗(2020令和2年10月18日撮影)

木々はすっかり赤黒くなってしまい、街は秋と冬の狭間で、どっちに転ぼうか戸惑っている。

宮町の中心地にヤマザワの看板が鮮やかに立ち、夏を終えた草花は静かな呼吸で冬を待つ。

宮町には隠れモンテディオファンがいっぱいいる。
あ、失礼。隠れている訳じゃなかった。堂々と車に貼ったサポーターでした。

「今日は天気いいくていがったなぁ、どおれ働ぐがぁ」
天気がいいと働く気になる人、散歩に出たくなる人が増えるのは必然。

ガソリンスタンドの屈強な壁のペンキが剥がれてきた。
それは棘のように突き出て、日差しを摘まもうとしている。

昭和後半の都市再開発で、宮町の道路は綺麗に整理され、昔の面影は消えうせた。
と思っていた。しかし、人のすれ違うのも不可能な小路を見つけた。(嬉しくてよだれを垂れる)

こんな小路も一応は公道らしい。
人の頻繁に歩いた形跡もなく、昭和の残り香だけが辺りに漂う。

「なんだず!うぇッ!蜘蛛の巣が!」
行く手を阻むように、幾重にも蜘蛛の巣が立ちはだかり、
私の体が触れるたび、蜘蛛はそそくさと逃げ惑う。

扉を開けようとしているのは夏草だけだった。

CDは黄ばんでいるけれど、よく見れば重なり合ったCDの形が店名を表現していた。

見慣れた踏切を見慣れた光景が過ぎてゆく。
こんな当たり前の光景がいつまでも続いてほしい。

宮町にはやたらとモンテディオのフラッグがなびいている。
本当に街のあちこちに。
道行く人も試合経過をスマホで確かめている?

今まで何回撮らせていただいたか、
アドレナリンと涎が思わず出てくる、被写体の王様のような風貌の魚屋さん。

しばらく店の張り紙やらを眺めていたら、
シャーっという機械音が滑り込んできて、魚の匂いに混じりあって走り去った。

山形駅、北山形駅間は本当に頻繁に列車が行き交う。
コスモスを愛でている間にも、踏切がカンカンと鳴り響き、コスモスの花びらを小刻みに揺らしている。

踏切のある新幹線って珍しいんだろうけれど、
その威容を間近で感じられるという利点もある?

車止めがポツンと立ち尽くし、周りを眺めまわして秋を知る。

「タイヤさん兄弟がぁ」
何気なく眺めた落ち葉の先にはタイヤが並び、
その上には配管を巻くテープが落ち葉にもなれずに剥がれて垂れている。

日差しが陰ってきたにもかかわらず、境内には明るさが残っている。
あゆみ町の集会所へ向かう親子が明るく挨拶してくれたから。

枯れた手水舎の水。
見上げると波型の透かし、そしてその先に湯殿山の石碑が黙然と立っている。

「おまえ、どごから来たんだ?」
トタンで塞がれた穴から声が聞こえたような気がした。
「どさ行ぐんだ?」
色づき始めた銀杏は、愁いを帯びた悲しげな声を再び発したような気がした。

「ちぇっと気が早ぐないが?」
「このまんま去年から待ってるんだはぁ」
くたびれ感が辺りに漂う駐車場。

あの頃は、この一方通行の道を目を三角にして走っていた。
もちろん辺りの様子に気を配る心の余裕もなかった。
そして今、ゆっくりと辺りを眺める時間を得て、40年近く前の自分の姿を穂の隙間に垣間見る。

「天気が穏やかだど、気分も穏やかになるもんだず」
禿頭のおじさんは、柔らかい日差しを頭と背中で微かに反射してゆったりと歩を進める。

いくら読んでもその意味が分からない。
当然なにかのメリットがあるからなのだろう、古い板パンコに真新しい注意書き。

捨て方の張り紙が萎んでいる。
その様子を察した花びらも萎んでいる。

「上の方は風もあるげんと、見晴らしいいぞ」
「下の方は空気が止まって、薄暗いぞ」
咲く位置で感じ方が違う。お互い決められた位置で自分を全うするしかない。

表通りに出ると喧騒が耳に入り込んでくる。
そして、目の前には腰ほどの背丈で行き交う車をキョロキョロ眺める季節外れのヒマワリ。

蔦が遠慮して看板を覆わないのか、看板が意図的に蔦を威嚇して近づかないようにしているのか。

冬の兆しすら感じているはずなのに、花びらには感傷的な雰囲気もなく、
ただ思いのたけを伝えようと咲いている。

「車さ付いでいってみっか」
「ほだなごど考えねで、こごさいっべ」
疲れ果てたヒマワリたちはうわごとの様に、車の過ぎるたびに繰り返す。

「落ぢるぅ」
柿の葉は恨めしく柿の実を見上げ、ひと吹きの風に怯えている。

「にゃんだず、こっちば見んな」
思わず目が合ってしまい、柿の木ば見っだだげだとの言い訳が口ごもる。

「ほだいぎっつぐゆすばがっで、なにしたのぅ?」
「しゃねっだなぁ、たづいでいねど不安なんだべぇ」
フェンスの柱は何故か胴に巻き付いたロープに気を使っている。

立てかけられたトンボや一輪車たちがぼんやりとタンポポを眺めている。
空気が止まってしまった三小のグランドの隅で、用具たちの視線は漂いながらもほぼ動かない。

「フェンスが皆膨らんでんのはよぅ、子供だが皆おっかがっからだなぁ」

「ボールば止めっぞていう意気込みなんだが?ちぇっと待ってていう尻込みなんだが?」
「冬はちぇっと待って、秋はまだ居でけろていう気持ちっだな」
TOP