◆[山形市]銅町・馬見ヶ崎河原 梅雨明け、合歓の木、百日紅(2020令和2年8月2日撮影)

久しぶりに馬見ヶ崎の河原に降り立つ。
ようやく梅雨が明け、久しぶりに見る青い空に向かって、河原一面の草花たちが空を向く。

河原を吹き抜ける風に翻弄されながら、
それでもバーべキューの楽しみのためなら、いつも使わない筋肉を酷使できる。

トイレの間からスミマセン。
簡易トイレの隙間から臭いは流れて来ず、睦まじい親子の会話が流れてくる。

馬見ヶ崎の土手を昇り、最初に迎えてくれたのは夏の象徴ムクゲ。
ボダボダと行儀悪く花粉を落としながら、笑顔でこちらを向いてくる。

未だに梅雨の湿り気があちこちに滞る銅町の公園。
湿った空気の真ん中で、アジサイの一叢がこんもりと膨らんでいる。

芝生伝いに軽快なエンジン音が伝ってくる。
その音は、まるで梅雨の名残を一掃するように大気を細かく震わせる。

「なんだが元気ないずねぇ」
「そろそろ終わりっだなぁ」
「今から夏だていうのに?」
「あどは百日紅さバトンタッチだはぁ」
先週までのピンと張った扇子模様に力強さが無くなっていた合歓の木。

合歓の木の枝の隙間から、カラフルな一団の発するの声が、馬見ヶ崎川を渡って流れてくる。

堤防の名もなき雑草?
それでもよく見れば、オレンジの王冠のような形がぽつぽつと見えるし、
今から花が咲くのか実がなるのかも分からないけれど、営みは営々と続く。

先週はまだ咲いていなかった百日紅。
梅雨明けとともに合歓の木は萎びて下を向いていったのに、百日紅はピンクの花弁が空に向かい始めている。

百日紅はぐにゅぐにゅとキクラゲみたいな形に咲くので、
遠目に見ると花の形が分からない。
近づいてみたが、やはり花弁の形も枚数も分からない。
分かったのは、梅雨も明けたし、いよいよこれから勢いを増して咲くぞという強い生命力。

二口橋の五差路。
大野目方面からやってくる車と、市内中心部からの車が交差する橋のたもとには、
芝桜が咲いていることなど誰が気づいているのかも分からない。

川風を受けて二口橋を渡る。
梅雨明けしていよいよ真夏だぁという喜びが、その背中からあまり感じられないのが少し寂しい。
「んだて、今年は夏休みは短いし、盆踊りはないし、旅行も行がんねし、東京から家族が帰省しないし、
なにしろ人に近づけないし、何ば糧に生ぎろてゆうのや?」

二口橋方面から山形市内へ向かい、吉田カメラを左手に見る下り坂。

「両所宮なのお祭りなぐなて、人も来ねし青ぐなったきゃじゃぁ。」
「ほいずぁ青ぐライトアップしったがらっだず。コロナ退散のためによぅ。」
「それにしても神輿の音が聞こえねど調子でねずねぇ」
ペットボトルたちは、ただ立っているのも退屈なので、囁きあって夏の時間を過ごしている。

「ちょっとぉ、どごで休んでんのや?」
疲れた軍手は自転車に起こされる。
軍手にきつくいった自転車は、軍手のあまりの疲れ具合をみて、
前輪のスポークに挟まらないように配慮して、そのまま少し休ませることにした。

「いづまで待っても匂いもすねし、ましてやたれの一滴もけらんねよ」
焼き鳥は自転車にそう告げ、視線を別のところに向けてしまった。

「今年は両所宮の例大祭を告知する雅楽もないっけし、
子供神輿もあったんだがなかったんだが?」
いつもと違う活気の少ない街の雰囲気をポットの花たちは怪訝に思う。
ただ、暑さだけは戻ってきたようで、袖なしのおっちゃんが汗をかきかきペダル漕ぐ。

街を歩けば芸術に出会う。
昔、油絵のペインティングナイフを握っていた頃を思い出す。
大胆に塗られた青に染み出る錆色が味わいを醸し出す。
「あのー、ただの廃棄物入れの側面なんだげんと・・・」

電柱の陰から市原悦子のように覗いた先は五中生。
部活の帰りなんだべが?
そもそも部活ってあるんだが?
夏休みは始まったんだが?
今年ばかりは想定外の事ばかり。

「梅雨が明けたのに、なしてツララが垂れ下がってるんだ?!」
「よっくど見てみろ。ビニールシートがくたびっで、ボロボロなて垂れ下がているだげだどれ」
あの紛らわしさは意図したものか、単なるシートの怠慢か。

「口すぼめでなにしったの?」
「今からおっきぐ開ぐがら待ってろ」
梅雨の残り香を吸い込んで、さぁ今から真夏の息を吐く。

「こごが山形のベタ踏み坂っだな。」
「なにゆてんの、今どきの車は性能いいがら、こだんどご赤んぼ運転しても登ていぐぅ。」
いやいや、赤んぼは運転しないと突っ込みを入れる二口橋手前の坂。

鉄扉の熱さをものともせず、蔦はただただ這うのが生きがい。

公園の一角は大人だけが集える場所になっているようだ。
んだて、庚申塔の陰さ空きビール瓶が当たり前のように突っ立ってだっけも。

まだ古さの感じられない壁かけ時計。
それが物珍しいのか、蔦たちは先を争って這い上る。

公園の一角にごみを捨てる箱がある。
夜露に濡れた草ならわかる。
でもこれはおそらく逃げ遅れた梅雨がビニール袋に閉じ込められてしまったのだろう。

簾が塀に寄りかかり、夏の風物詩ともいえなくもない。
ただ、あのぎらつく太陽の姿はまだない。

「なんだが分がる?」
「白黒の鯨幕」
「縁起でもない。車体のフロントガラスとボンネットさ映る屋根の模様っだず」
街を歩けば、様々な模様があちこちに隠れてる。

「梅雨明けだんだがぁ?」
「あの空見でみろ、青い空に白い雲」
「しばらぐ下ばり見で、上ば見るごどなのないっけもはぁ」
若者は水しぶきの音をBGMとして、短い夏休みへ入っていった。

とめどなく天空の蛇口から水がほとばしり出る。
飛沫は遠慮なく顔にも降りかかる。
いよいよ夏本番。
さて、どうやってコロナをかいくぐって夏を堪能しようか。
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