◆[山形市]鈴川・山家・和合 夏へ大きく踏み出す(2020令和2年6月7日撮影) |
ひょろひょろと伸びる道。 電線がその道に引っ掻き傷のような筋を描いている。 |
「あんまり日焼けし過ぎで肌が剥けできたどれはぁ」 ボロボロに向けた皮を気にする風もなく、太陽へ無意味とも思える立ち向かい方。 |
あなたのマナーを見ていますと脅し文句が睨んでいる。 赤い花びらたちは、後ろからまあまあとなだめている。 |
チロチロと影の中から太陽のもとへ飛び出してはまた引っ込むようにはしゃいでいる。 草花である以上太陽への希求は消え去ることはない。 |
ひょろひょろと、でも強い意志で空を向く。 今、どこを歩いても夏を告げに訪れたように、一面に黄色い花びらが広がっている。 |
あきらかに馬見ヶ崎川を越えて鈴川地区に入ると空気が変わる。 山形の街中との違いを醸し出しているのはなんだろうか? |
カモがネギしょってとはよく聞くけれど、 おじちゃんが自転車にネギ乗せて、ネギ坊主の脇を通るのが山形流か。 |
「なんだが大草原の小さな家みだいだんねが?」 「んねっだず、大草原だったらローラが跳ねるように走ってらんなねもの」 |
鈴川には人生の岐路を決めろと言わんばかりの二股に分かれる道が多い。 右へ行くか左で行くかを常に選択する生活に市民は慣れている? |
さっきまでベンチに座ってバスを待つ姿があった。 バスが去った後には、ベンチのぬくもりと、微かな日差しと、冷たいシャッターが残った。 |
「おまえだいっど、俺の黄色が目立だねんだげんと」 「ほだごだやねで一緒に目立つべ」 芝桜は仲たがいより黄色い旗との協調を選んだ。 |
神明神社の参道には桜がずらーっと並んで並木道を作っている。 その両脇の家並には参道の歩んできた年月が色濃く残る。 |
トタンンの壁面には必ずと言っていいほど、 無造作に?様々な広告が貼られる。 そして広告はやがて色褪せ、忘れ去られる、 |
「家から出さっだど思たら黄色いシールだじぇ」 シートは自分の落ち度が思いつかない。 もちろんその主に非があるけれども、それを責めるのもいままで世話になったぶん気が引ける。 |
余りの緑の鮮やかさに目を奪われる。 樹林の間の人々は、その木漏れ日を背中に受けてゆっくりと歩む。 |
たいていの中年は、二の腕がタルタルと簾のようになってしまう。 しかし、ずっとブランコを両腕にぶら下げていた結果、余分な脂肪がまったく見られない硬い腕。 |
街がパッと明るくなる世代が神明神社脇を歩む。 それを見て厄除けも交通安全も疫病退散も夏越大祓の幟も、生気を得たように旗がフルフルとはためいている。 |
「なしてほだな隅っこさぶら下がてんのや?」 「んだて真ん中は紙垂の定位置だし」 |
箒の多さに境内はいかに掃除が大変かを思い知らされる。 そして、盆栽展示即売会がいつの間にか消え去ったのかもしれないと、 横たわった看板を見て思いやる。 |
太陽は境内の隅々にまで侵入し、青葉の緑を大気中に充満させている。 |
緑あふれる境内で、真っ赤な口から真っ白い歯が覗く。 狛犬も口腔周りには気を使っているということか。 |
また現れた二択の路。 真ん中の電柱は微妙に右へ傾いて指図する。 |
小さな花火が何回も何回もパチパチはじけているような咲き方。 |
「ずうずうしいんだず、このホース」 タイヤは頭に乗ったホースが気になって仕方ない。 バケツは人ごとなのか気にも留めない。 |
「どのミラーが真実ば映しているんだぁ?」 「どれも嘘はついでいねっだな」 一瞬のうちにどれを見ればいいのか、凡庸な私には判断がつかない。 |
青い空に似合うのは真っ赤なバラ。 そんな定番のべた過ぎる言葉が頭に浮かぶ。 確かに考える余地がないほどよく似合ってる。 |
塀から頭をちょっとだけ出して辺りを伺う。 新しい世界が広がっていることに、躊躇いつつも興味が上回っている黄色い花びらたち。 |
真っ白いホタルブクロの花は、 まだ涼しい日陰の空気を俯きながら吸っている。 |
「おらだの季節だぁ!」 そんな元気が辺りを包んでいる。 |
自転車の篭の影は塀に張り付き、 そのまま塀をなぞって、地面にまで届いている。 |
床屋さ行って来いと言いたくなるようなネギ坊主。 青い空に向かっておのずと勢いが増す。 |
「今から花が咲くんだが?実がなるんだが?」 路傍の木々にも不思議はいっぱい連なって溢れている。 |
鈴川には瘤のような小山が何か所もある。ここもその一つ。 その小さな数メートルの小山には小さな祠が建ち、そして鏡餅が日陰の地面に供えられていた。 |
「おまえだわさわさて撮影の邪魔すんなず」 とにかく元気が漲っている花たちは、今を盛りと背を伸ばす。 |
ぽっかりと浮いた雲。 あれはなんだと騒ぎたてる雑草たち。 悠然と形を変えながら雲は通り過ぎていく。 雑草は自分たちには届かない存在なんだと認めながら手を振っている。 |
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