◆[山形市]長根・沼木・駅西 西から東へ、夕暮れから夜へ(2020令和2年5月30日撮影) |
今日最後の光が山形の市街地にオレンジ色を刷いている。 |
「今日も終わるねやぁ」 「んだぁ、風もないしねぇ」 産毛をどこへ飛ばそうか迷っている内に陽が暮れてしまう。 |
盆地の西端、西山形の象徴富神山が水面にも三角形の姿を映している。 |
長根地区は水田と森の狭間に位置し、しかも山形の市街が一望できる高台にある。 ゆったりとした気分で、山形の夕景を眺めるのに最高のロケーション。 |
長根から沼木に降りてくる。 盆との底にあたる沼木から山形の市街地までは、ほんの数キロ。 街の煌めきが水田のすぐ向こうで瞬いている。 |
奥羽の山並みもすっかり夜の風情。 盆地に横たわる山形の市街地が一層煌めきを増してきた。 |
西を振り返れば、沼木の家並に闇が迫り、オレンジの夕焼けがまだまだわだかまっている。 |
いよいよ闇が勢力を増し、夕焼けが消えかかる。 |
人の顔も判別が難しくなってきた通りを、 時たま帰宅の車のヘッドライトがアスファルトを舐めるように照らして走り去る。 |
駅西の双葉公園へたどり着く。 公園のか弱い街灯に照らされて、奇妙な形の滑り台が五十年もの間異彩を放ってきた。 |
現代ならこんな奇抜な形は受け入れられなかったかもしれないし、 コンクリートでこんな奇妙な形の遊具を造ろうともしなかったかもしれない。 こんな大胆な意匠のデザインの滑り台で五十年も前に遊んだ記憶が闇の中に蘇る。 |
近代的なマンションが立ち並ぶ駅西地区には不釣り合いかもしれない。 いや、マンションより神社の方が先。 東洋曹達の広大な敷地の隣に、夜の静寂にへうずくまるように存在していた頃があったんだ。 |
満開を終えたツツジの花びらの向こうには、 高層マンションの灯りが見える。 それぞれの窓にそれぞれの生活が整然と並んでいる。 |
ツツジの花びらは、フーッとため息をついた。 花弁の先からシャボン玉のような灯りが闇に舞った。 |
この光景だけで山形と判別するのは難しい。 それだけ日本中画一的な光景が広がっているということ。 否定はしない。時代の流れには逆らえないし、コンビニなしには生きられない体に洗脳されてしまったし。 |
県民会館も完成し、すっかり都会的になってしまった駅西。 そこから山形らしさを見出すのはかなり難しい。 |
県民会館の脇に若者が被り物をしてたむろしている。 若者がたむろすということは、その施設が認知されたということ。 でもたむろしているのは絵に描いた餅のような看板だった。 |
「工事現場用の塀が長ぐ続いでっげんと何の工事してるんだべ?」 「県民会館は完成したのにねはぁ」 ヘッドライトがその塀に光の帯を撫でつけて帰路に就く。 |
ちょろちょろと流れるセントラル脇の水には、 オレンジ色の灯りが被さって、流れの波紋に揺れている。 |
緊急事態宣言も解除され、今まで鬱屈していた若者がいよいよ街に現れ始めたか。 嬌声を上げ、笑い声を飛ばし、無目的にスマホを見る。 週末の夜にそんなことでエネルギーを消費してしまうのは今も昔も変わらない。 |
祈りを捧げるように月を見る塔。 夜空はどこまでも深く、近くにあるようで掴むこともできない遠くにある。 |
「週末だていうのに人影はまばらだずねぇ」 「なにゆてんの、こだんどご昔は人っ子一人いねんだっけがら」 「灯りがあるだげありがだいのっだず」 昔を知っている人間には隔世の感。 |
オブジェが鈍色に光っている。 そろそろ街も眠りにつき始めるんだろうか。 山形の夜はあまりにも早すぎて、あまりにも深い。 |
桜が終わり、ハナミズキが終わり、ツツジが咲くころ、 うるむイルミネーションが漂っているなかに、ヤマボウシは真っ白な花を夜に咲かせる。。 |
TOP |