◆[山形市]七日町 はたらく車が大集合できなかった街(2020令和2年5月5日撮影) |
奥羽の山並みは生命力に溢れ、若葉色が山並みに急速に広がっている。 |
歩道や車道に白いニョロニョロが這っているのはなんなんだ? どうやら向かいの高層マンションのガラスの反射らしい。 やはり見慣れた街でも、天候や時間帯で表情は大きく違う。 |
本当なら働く車が大集合して、子供たちの目はキラキラ輝いていたに違いない七日町。 子供たちは何を見たらいいか分からなくなり、頭が混乱し、マンションのパンフを手に取ろうとしている。 |
これ以上ない快晴に恵まれ、人出の少ない街では、 工事中のマンションが我が物顔にぎらつかせた自分を見せつける。 |
若葉がまぶしい。アスファルトも白く輝いている。 何かが違うと感じたサックスは通りを見つめ首をかしげる。 |
「あの若葉の下で弁当でも食うだいずねぇ」 「あたしたちにはそんな権限も髪の毛もないがら」 白いガウンを被って、我慢の連休は時間が過ぎてゆく。 |
シャッターのバラのマークはまだまだ鮮やか。 人々の心にも大沼の思い出は鮮やかに残っている。 働く車のない通りを、子供のために働く自転車を漕ぐお母さん。 |
どこもかしこもシャッターだらけ。 テイクアウトの立て看板は、たまに訪れる人々をぼんやりと眺めている。 |
「歩道さ自転車ば置ぐなず」 「八文字屋さ置ぐ場所あるんだがら、ほっちゃ置げ。ったぐわがらねずねぇ」 看板は感情を抑えているけれど、本音は山形弁のはず。 |
空に大型の消防車やクレーン車が梯子や作業篭を伸ばしていたはずの通り。 銀杏の葉っぱは、静かに光を浴びて、陽春を体中で満喫している。 |
「ちぇっと歩ぐど汗出でしまうもなぁ」 日傘はゆるりと通りを歩み去る。 若葉はもはや濃い色に変わりつつある。 |
「こっだい天気いいのに誰もいねずねぇ」 「空はあたしたちが独り占めだぁ」 歓喜の舞を舞いながら、青空に向かう気持ちよさ。 |
背後からの光を受けて、形のいい台形の影が手前に伸びている。 |
「本」にくっついた小さな「ブ」。 なんともセンスがいい。 さすが山形に新たな文化を常に発信してくれた八文字屋。 |
「太っとくて青ぐ染めらっだ信号機がすごい存在感なんだげんと」 「いったい何があって、こだい太ってしまたんだべ」 |
雁戸山は見ている、通りのごみを。 |
涼やかな木陰にようやく入り込む。 桜の花びらや軸がすべて落ち、地面が真っ赤に染められている。 |
「布団が落ぢでこねべねぇ」 シャガの花びらは、窓からほろげ落ちそうな布団を緊張のまなざしで注視する。 |
「何が人さもの言うどぎはよ、ちゃんと立って言わんなねべず」 看板は面倒くさくて起き上がらないのか、誰かに倒されて起き上がれないのか。 |
CDのデータは太陽の光や雨風でヨレヨレになり、 どんな中身だったか誰も知る由がない。 でも、こんな青空の外の世界があるんだと、CDは第二の人生を盤面に記録しているのかも知れない。 |
オダマキは1ミリでも太陽へ近づいてみたかった。 その下でチューリップが口々にパクパクとエールを送っている。 |
「俺だったらこだな態勢でいだら、五秒持だね」 土からモソモソと現れる春は啓蟄。 塀からグイっと現れる初夏はなんという? |
誰にも会わず近づかず、ただ街の匂いや花に触れ歩く陽春。 |
赤い幟が気持ちよさそうにはためいている。 幟のモデルはどこかを指差しているけれど、頼むからその先には光があって欲しい。 |
春から夏へ装いを変えつつある専称寺。 その伽藍が目の前に見えるだけで、市民として気持ちが濾過されるようだ。 |
フロントガラスはもはや夏。 壁も夏の日差しと対峙する季節になってきた。 |
日陰に佇む自転車は、通りの奥に人影を見つけ、 自分が見られているわけでもないのにちょっと表情を和ませてみせる。 |
映画が隆盛を極めた時代には人の絶えることはなかった。 通りにはその面影と味わいだけが行き場を失い漂っている。 |
「出口専用だっす!」 「ただ千歳館ば撮ってるだげなんだげんと」 「んだがら出口専用なんだっす」 案内板には融通という言葉が理解できない。 |
次々と積み重ねられ、上書きされていった昭和と平成。 |
「しゃねま通り?」 「ほだな通りしゃねま」 「近頃の若い者はぁ!シネマ通りもしゃねのがぁ」 山形がどんなに素晴らしい映画の街だったのか、話せば長い。 |
優勝カップやウインドウが旭銀座の街並みを映している。 「スポーツの大会がないんだがら、おらだも開店休業っだず」 カップはうつろな目で街の中に希望を探す。 |
どこの張り紙を見てもお休みしますの一点張り。 それでも草花には新鮮な水が掛けられている。 |
人は来ずともタンポポは、風に任せて子孫の種を飛ばそうと、 ビルの日陰でその時を待つ。 |
日差しが旭銀座に彩を添えている。 はたらく車が来ないからこそ、イベントがないからこそ、 その街並みを堪能できると思うのは負け惜しみ? |
光だけが充満する七日町に小さな鯉のぼりが連なった。 子供たちの願いが時折吹くビル風にプラプラ揺れている。 |
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