◆[山形市]あこや町・東原町 街は創造物に溢れてる(2020令和2年4月28日撮影)

あこやインター付近の大通りから南の小路へ入り込む。
喧騒から逃れた名取公園では、樹幹の隙間からタンポポが静かに光を受けていた。

「グフーゥ、くたびっだはぁ」
「なにしたのや?」
「誰もかまてけねがらぁ」
動物も人も一人じゃ生きられない。

「起こしてけろぅ」
砂場に放置された玩具は、遠くから聞こえる子供らの歓声を聞き、
体を日差しに炙られながら念じている。

地面の上を転がっていたタイヤ。
その第二の人生は地面に埋められること。
人を避け散歩で息抜きをする人を、固定された体でジーっと見入る。

スッと立つその凛とした姿を、千歳山はどんな目で見ているのだろう。

空に枝を広げ力強く芽吹こうとして、辺りの空気までそれに倣って意気込んで膨らんでいる。
ただ、母娘の背中にだけはその空気は近づかない。

「なして高校生がいるんだぁ?」
「今日は登校日なのんねがよ」
すっかり街から高校生の姿が消えたものだから、制服がとても新鮮に見える。

鉄扉の冷たさを気にもせず、世間の禍にも気を留めない。
そんなスズメの日常の姿に目を細めてしまう。

「空あります」と空しく呟やく声は、ブロック塀に反射する気力もない。

色とりどりに咲き乱れるこんな原っぱを、スキップして走り回る子供の姿が浮かぶ。
そのはしゃぐ姿は、自分の子供の頃にそっくりだ。
「あ、ぼやーっとしったっけはぁ」
フッと吐息を吐いて我に返る。

草花たちは、車の腹の底からでも笑顔を振りまいてくる。

誰もいない裏通りで春を謳歌するのはとても贅沢。

石碑が板塀に挟まれている。
「挟まっでんのんね、守らっでんだ」
なるほど石碑の脇では守られていない町名表示がひしゃげている。

「やんだなてやねでみで見ろ」
「一生懸命生ぎでるんだどれぇ」
とはいえ、触れる気にはなれなかった、ゴメン。

南高の裏路地に入り込む。
行き場を失ったマイクロバスの南高校章も心なしか元気がない。

「どごまで使い倒すんだず」
「てゆうが、もう使いようないどれ」
南高生の元気を受け止め過ぎた結果がこれなんだべが。

下駄箱が空を見上げて唸っている。
先行きが見えず、なにしたらいがんべと、迷いの気持ちが全身から立ち上っている。

家並の中に小さな一角が開けている。
母娘の声が弾んで空にはじける。
チューリップの鮮やかな色も呼応して空を彩る。

「おがれ、おがれぇ。早ぐおがれぇ」
「何植えだの?」
「とっきび!」
とびっきりの声で答えてくれた。

子供たちは作物にだって感染しないようにとマスクを着用してる。

竜山も千歳山もいつもと変わりない。
季節の移ろいだって変わりない。
それなのに何故か愛おしい光景に見えてしまうのは、自分の心が変わってしまったから?

薄日差す南高脇の小道。
舞い落りた桜の花びらを再び舞い上げて自転車が遠ざかる。

「南高生だ、いづまで経ってもこねんだず」
口をあぱーっと空けた鯉のぼりが退屈そうにそよぐ南高昇降口のそば。

小路を抜けて大通りに出てきた。
そこにも車に煽られながら空に向かうチューリップ。

「なんだて情報が満載だずねぇ。何から読んだらいいが混乱する」
それに加えて、背後では南高のスローガンが声高に騒いでいるし。

すべてを包み込んでしまいそうな慈愛に満ちた目で見つめられると、
ついその気になってしまう。
「10枚ください、いや30枚!」
宝くじの神様は嫣然と微笑み、人の心を高ぶらせる。

「一等になっど、ほいな目になんのが?」
「俺だったら表情の出し方が分がらねぐなっべな」
「人心ば煽っていねで、目薬でも差したらなんた?」

「退屈過ぎて体がボロボロだずはぁ」
ポロポロと剥がれ落ちる体を晒しながら、虚空の一点を見つめる目は何を望んでいる?

「なんぼ置かれた場所で咲きなさいて言わっでもよぅ」
「んだずぅ、車のケッツから出る排気ガスば被てらんなねんだじぇ」
水仙たちはその首をフェンスに掛けながら、不満を口にする。

「ほだな恰好でいつまで、ほごさいんのや?」
体は凝り固まり、問いかけにも応える気持ちなど失せているようだ。
山大学生寮の壁面に馴染んでしまった姿は、
語気を強める火気厳禁の看板から目を逸らし、世間からも目を背けている。
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