◆[山形市]天満神社初詣 怯んだ寒気(2020令和2年1月1日撮影)

山の形は昔から変わらない。
馬見ヶ崎の流れも変わらない。
雪は少ないけれど、いつもと変わらぬ光景のような気がする。
でも、気づかない振りをしていたら、大気は新年のものに入れ替わっていた山形。

「令和二年の指針を示しておくれ」
「あのー、あたし日時計なんだげんと・・・」
愛宕橋の真ん中で空の色を反射しながら苦笑する。

寒椿に光を当ててみた。
まぶし気に、でも誇らしげな表情を辺りに放つ。

「雪なのかぶったら、写真映えするんだげんとなぁ」
「なんでも人間の目線で判断すねでけねがなぁ」
花弁はちょっとお冠で、雫を払いそっぽ向く。

「よぐ、こだな寒いどごで立ってるいずねぇ」
「仕事だも立ってるしかないべした」
冷え切った体にぶら下がった関係車両出入口が、寒風に押され日差しにさらされる。

「こだい早ぐから、せっせと春の準備がはぁ?」
「ハイ、私はどちらかといえばキリギリスよりアリの仲間です」
例え方を間違ってはいないようだが、穂先を見つめて首をかしげてしまう。

冬の遊具は悲し気。
光を銀色に反射する地面を見下ろしながら、感情を押し殺して時間に身を任せている。

冷たい水たまりは無口なまんま。
水面がさざ波だっても、光が揺らめいても、正月気分が淀みの底に届くはずもない。

シラカシの木の下に潜り込み、イノシシ広場を眺める。
「あ、んねっけ。ほんてんの公園の名前なんだっけぇ?」
イノシシがほじくり返した芝生を見る限りは、イノシシの独壇場と化している。

嬉しくても悲しくても、いつもそこには馬見ヶ崎が流れていた。
そしても今日も小雪舞う中、馬見ヶ崎に身をゆだねる山形人がチラホラ。

「まんず、降ってきたもなぁ、こだなぐらい可愛いもんだげんとな」
白い息を、毛糸の帽子の背後へたなびかせて行き過ぎる。

「ごみを出す日が違います」という烙印を押されたゴミが悪れのんねがらぁ。

「フェンスにあんこをぬったり、ぬたをあげたりしないこと」
スミマセン、山形人なんで。

私は八小に憤慨した。
「んだて、正門で踏み絵ば踏ませるずぁないっだず」
「二人の子供だがボロボロだどれはぁ」

「ジェンカ踊っべ」
「こだんどごで恥ずかしいべな」
といいつつ、手と手は自然に交差する。

元旦早々のコンビニには車が少なく、
苦虫を噛みつぶしたような忙しない人々もいない。
長閑な空気の中をしめ飾りが陽を浴びる。

「真っ昼間からなんだずまんず、びだれくさいったらよぅ」
「歯の裏側まで見せでベロンベロンだどれはぁ」
こんな昭和な恰好が、いまでは微笑ましい。

「雪ないだげましだげんとよっ」
ミツバチが受粉するように、あちこちへ飛び回る忙しなさ。

13号バイパスをくぐる空気がいつもと違う。
何か華やいだ空気が、天満神社から漂ってくる。

「ほっだい口ばすぼめで、何が酸っぱいものでも舐めだのが?」
天満神社仮駐車場のザクロは、その口のまんま固まって年を越したらしい。

「よし、これで今年はいいごどあんべ」
安心して帰る足取りのゴム靴には、すっぱねも無ければ、雪の欠片もくっついていない。

生まれたばかりの命が抱えられて本殿へ向かう。
年を重ねた幹が、ギシッと音をたてて地面を噛む。

「寒いったらぁ」
「電球はあったかいべぇ」
「んだて裸だじぇ」
裸電球は青い空に照らされて、人々の頭に垂れさがる。

「もはや合格の二文字しかないがら」
「自信あっずねぇ」
それでもやっぱり天満神社にきて、微かな不安を払しょくしたい。
参道脇の八つ手は柏手の数だけおがっていくようだ。

こんな天気で落雪などあろうはずもないし、落ちるという文字は禁句のはず。
電球は一人一人の頭を確かめるように並び、
落雪看板は何事もなかったように、平然と受験生の目に飛び込んでいく。

「おらぁ、忘っで行がっだはぁ」
片方の手袋は迷子なのに身動きできず、コンクリートの上を手探りして落ち葉と戯れる。

安産!安全!成就!繁盛!円満!良縁!
腹いっぱいになりそうなほどにたくさんの筆文字が踊る。
いま、ダンボールの中は、この世の幸せが山ほど詰まっているんだな。

ゆく人くる人。立ち止まる人。
様々な思いが交錯する。
「それはいいどして、雪ないごんたら、どごの神社だが分がんねべぇ。」
「しかもブーツどがゴム靴も履いでんの少ないしよぅ」

♪しあわせぇをあなたにぃ大沼デパート♪
まさに山形市民にしあわせを与え続けてくれたデパートだった。
「あ、バラのマークばジーっと見っだら、過去形でゆてしまたはぁ」

「さっさど燃やしてけろなぁ」
早く消し去りたい過去でもあるのか、
皆、燃え尽きるのを待たずに去ってゆく。

「靴の中さ石ころ入てしまたどれぇ」
クツクツと笑いをこらえながら、人のさまを見つめているカエルの親子。

木陰から令和二年の顔が顔を出した。
「お前だ、んねがら。今年はネズミだがら」
「ったぐ、河童年なてあるはずもないべ。猫年だてないのによぅ」
「だいたい、どごぎっつぐ握てるんだずぅ」
今年こそは平穏な日々をぎっつぐ握って離したくない。
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