◆[山形市]南二番町・元木・旭が丘・鳥居ケ丘 天晴快晴(2019令和元年12月29日撮影)

年末は忙しない。
この場へ来る道すがら、スーパーの駐車場は皆満車だった。
そんな山形市民を柔らかなまなざしで竜山と千歳山が見守っている。

人は一人では生きていけない。
二人連れの頭に肩に、冬の日差しが柔らかい。
そしてみんな大きな看板へ寄りたがる。

「わがまま言うど、ごしゃぐがらなぁ」
お母さんは子供をきつく抱きしめる。
車たちは「ベーっ」と影のベロを伸ばしている。

「雪ないんだじぇ、どう思う?」
ひび割れに溜まった水へ、青い空を映す年末の山形。

「なんだて、まぶしいったらねぇ」
如雨露の口からは一滴すら垂れない、からっとした青空が広がる。

「大掃除したがぁ?」
「やんだくてすね?んだがぁ、ほだなもんだったなねぇ」
張り紙も塵取りも箒も、大あくびしながら陽を浴びる。

西蔵王から流れ来る竜山川を、
やや頭の薄くなった千歳山は穏やかな表情で眺めている。

「俺は何ば照らしているんだべ?」
真昼の街灯は疑問を抱えながら、枯れた夏草を被っている。

「皆百円だど。んだら今はやりの百均だべず。」
野菜たちは来店の客を待ちながら扉の奥。

「止まれて書がったがら止まったのが?」
「分がてっくせ、わざど言うなず」
止まれのペイントにペタッと張り付いて、落ち葉は踏んづけられるまま。

「誰がほだなごどする人いるんだがよ?」
苔も生え、動かされた形跡もない。
誰も振り向いてくれないから「うごかすな」と書いて、
周りの興味を引こうとしたんだな。

「足さクッション付けでもらうなて、過保護んねんだがよ」
「ほだごどないずぅ、引きずられっど痛っだいんだがら」
横になりながら痛みを和らげるように陽を浴びる一輪車。

「二人はいっつも仲良いくていいずねぇ」
ちょっとだけ焼きもちを焼いた枝が、
くっついたガスボンベを引き離そうとする。

「火の用心?」
背後のポンプ小屋の文字が、窓枠の暗闇の中に浮かび上がって、
物怖じせずに訴えている。

「重だぐないんだがよ、夏の葉っぱの残骸」
「カラッカラに乾いでっから、さすかいないんだぁ」
電線は伸びをしながら、年末の大気の中で深呼吸をする。

ひと際、青い空に映える看板。
「川に対して人が大っき過ぎねが?」
「そういう事んねくて、絵ば描いだ人の絵に込めた気持ぢば想像さんなねのっだな」

棘で引っ掻いても青空は悠然と構えている。
バラは長い冬へ備えるように、蕾も枝も全身を硬く閉ざしている。

対岸の陽を浴びた家並を見ながら思う。
「陰干しさんなねがら、しょうがないのよ」
タオルは陽の光を浴びてみたいと切望しながら、あきらめの気持ちが心を支配する。

溶けだした氷に行先など聞くものではない。
ノタノタと地を這い、ただ低きへジワリと進むだけ。

「初市なのまだだべず」
思わず団子木のことを思い浮かべる、山形のDNA。

「あんまりこっちば睨むなず」
陽だまりに猫はよく似合う。

冬の日差しには棘が含まれる。
でも、まだまだ棘の切っ先は柔らかい。

「年中フラフラて大変だずねぇ」
「ほだな、じょさねっだなぁ、風任せだものぅ」
嫌味を言ったつもりなのに、箒のように空を掃きながらどこ吹く風。

「馴染んでっずねぇ」
背後のトタンに同化する幹と落ち葉たちは、お互いを意識せざる負えない。

「陽が出っさいすっど、俺さおかがんもなぁ」
樹木の影は地面から家の壁へと伸びながらおっかがり、
地面や壁はそれを当たり前のように容認する。

「いったい誰が座ったんだっけべ?」
「座って何考えっだんだっけべ?」
「座り心地はいいんだっけべが?」
一脚の椅子は、様々な想像を掻き立てる。

塀に張り付いて「ONE TEAM!」とラグビーボール形に大口を開いているのはゴミの篭。
「おらだゴミもONE TEAMにならんなねんだ!」
意味が分からないけれどその言葉に同意する。

「気持ちいいくて眠ったっけがぁ?」
供えられたさつまいもは、気持ちも体もぬくぬくとしていたのに、
声をかけてゴメン。

すっぽりと覆われた石鳥居。
現代の被膜が、古代の石を守っていくという強い意志。

中身がボダッと落ちて、外側だけが枝に残った。
破れた皮に陽が差して、透き通る肌を浮き立たせる寒空の中。

「買ってけるてゆたどれぇ」
「んだがら明日」
「明日て、いづやぁ?」
「明日は明日っだなぁ」
頭や肩には温かい日差し。

「まんず冬は完全防備っだず」
ヘルメットを取る姿も、日差しは逃さず壁に貼り付ける。

「見えねがらどいでけろモー」
「ほだいきつい目で言わねくてもどげっから」
真新しい牛は通りに向けて興味津々の目を向ける。

「なえだて、でっかいごどぉ」
今年はイノシシ年で来年はネズミ年。
ほだなごど関係ないと上を向く、べごの体はことのほか艶やか。

「蹴っ飛ばしてけっからなぁモー!」
「搾りたての牛乳ば飲んでみっだいっけのよぅ」
乳しぼりしてみたいと思ったが、少しばかりの理性がその欲望を抑え込む。
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