◆[山形市]中桜田 青春の影・里山の冬迎え(2019令和元年11月4日撮影)

散乱した光がまぶしい。
光はすべての命に活力を与えてくれるようだ。

「いづ咲き終えだらいいんだべなぁ」
あんまり天気がいいものだから、
ついつい名残惜しんで、散る時期を逸してしまう。

青春通りに並行して坂巻川が流れている。
通りと川に挟まれた崖上の地形に特異な建物がずらっと続く。

「カラカラて乾いで、体中パキパキだはぁ」
洗濯物はダイレクトに突き刺さってくる日差しを正面から受け止める。

坂巻川側から青春通りの背面を見上げる。
青春の光が表通りに満ちているけど、青春の影を坂巻川から見るのこともできる。

栗色に光る髪の毛をなびかせて走り去る。
秋が去ってゆくような気がして、遠ざかる姿を立ち尽くしながらボーッと眺める。

ほんのちょっとした隙間も逃さず光は建物の背後に回り込む。
坂巻川に群生するススキの穂が一部だけ浮かび上がる。

「秋の間にどんだげ栄養ば摂ったのや?」
蜘蛛の巣は大量の餌食と日差しで混雑している。

「そろそろ引き際なのんねんだがよ」
コスモスを見つけて、嬉しくて走り寄ったのに、
心とは裏腹な冷たい言葉を掛けてしまった。

標識だらけ。
これくらいの情報量なら、まだまだ瞬時に理解できると思い込み。

「自転車なの漕ぐの無理だっず」
ひーこらひーこらと押して歩くしかない、
厚生年金休暇センターへの上り坂。
「どんだげ昔の話してんのや?」
「今はヒルズサンピアだず」

「すんごい寝相だずねぇ」
箒は違う理由でこうなったと言いたげだが、
反駁するのも面倒くさくてピクリとも動かない。

壁の模様は蔦の痕?
「しゃねっだなぁ」
「あ〜あたかくて気持ぢいい」
「目の前さいっど邪魔なんだずぅ」
植物キラーの歯が、日向ぼっこしながらはやし立ててくる。

西蔵王方面から流れてくるせせらぎは、踊るように光を散乱しながら駆け下ってくる。

葉も少なくなりかけた枝は、日差しを遮る力も潰えようとしている。
このまぶしさの恋しくなる日がやがてやってくる。

「暇過ぎで、くたびっだびゃあ」
ミラーも消火器も、疲れすぎて後ろの塀におかがってため息をつくしかない一日。

燦燦と降り注ぐ光で実はぬくぬくと温まる。
でも、葉は散ったし、はてこれからどうしたものかと思案する。

「おらだ雑草さだて、光は届ぐんだじぇ」
雑草は雑草なりに、来年のために生命力を蓄える。

まぶしい光がありがたいと思える季節になってきた。
そんな季節は、菊のおひたしが旨すぎる。

今年、雪のない晴天の光景は見納めか。
そう思いながらも、まだ見られるかもしれないと期待する日々。

落ち損ねた葉っぱはカラカラと風に音を立てるはず。
そんな様子もないほどに、今日は風がぴたりと止んでいる。

キロキロに太った実の向こうは山形の街並み。
ツンと突けば、ボヤボヤなのかカチカチに硬いのか。

べチャッと落ちて、やがて地面に馴染んで消えてゆく。

木陰に入ると、首筋に冷気が忍び寄る。
冬はすぐ近くまで来ていて、人間の様子をそっと伺っているんだな。

トタンの縦のラインが浮き上がる。
陽だまりの中で、あらゆる者たちは機嫌よく笑顔に見える。

ネットに絡まった葉っぱは、もはやネットから体を外す力もない。
このままネット依存になるしかないと初めから分かっていたんだな。

「おらだが冬の主役になていいんだが?」
「もちろんだっす。主役がいねど山形市民は困るんだっす」
体に旨味をため込みながら、ワイワイガヤガヤかまびすしい。

あの屋根が白くなる頃。
パリパリと口中で音を立てているのかも知れない。

光は瓦の艶を一段と引き出している。
大根の味を一段と引き出すのも忘れずに。

冬を迎えるには胸襟を開いて、何も隠し事をせず身を任せる。
そんな気持ちで、白い肌が太陽光を全面的に受け入れている。
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