◆[山形市]柏倉・塩辛田 坂道の先に青空の見える村(2019令和元年9月15日撮影)

「嘘だべ!今日お祭りんねの?」
柏倉八幡神社の狛犬は強い光のためか、立体的に感情を出してくる。
「芋煮会もキャンセルして来たんだげんと」
狛犬に何を言っても開いた口は塞がらない。

霞の先に千歳山が見える坂道。
美しい坂道百選で選ばれるのもうなずける。
※坂道百選は個人的な妄想です。でも薄々本気です。

「下向いで歩らてっど、ひ転ぶぞ」
祭りがなかったという気持ちを引きずりながら、
坂道を下っていると水色縞模様ラッパから囁かれる。

「んだずね。気持ちば切り替えて柏倉ば撮影すっべ」
思い直し振り返る。
富神山が思いのほか近距離で、同意するように見守ってくれる。

山形の街並みを眺めながら、千歳山に声をかけながら下る坂。

坂を下り門伝方面を眺める。
西山形小学校方面に人影はない。

青空に存在感を示す床屋さん。
「んでも今日は皆芋煮会さ行ってしまたべなぁ」

強烈な日差しは漆喰のひびを広げ、
這い上るツタに力を与える。

犬コロは俯いた主人の機嫌を伺いながら、
蔵の陰に消えていった。

あちこちでワサワサとかまびすしいコスモスたち。
いよいよ自分たちの季節だといわんばかりに空を揺らめいている。

小さな祠は村の中心にあり、各種情報の発信基地なんだ。

「おっきな毛虫が這ってだんねがぁ?」
そう思われても仕方ないその形状。

木戸の窓ガラスすら青色に染められている。
なんと晴れ渡った透き通る空。

漆喰のひび割れが光のせいで目立っている。
その静かな軒下へ、ひっきりなしに走る車の音が、
オレンジのトリトマに濾過されて流れ込んでくる。

コスモスは下から伸びてくるとは限らない。
元気すぎると人の頭を超えてくる。

小さな神社を見つけ、社殿の脇へ回り込んでみる。
鳩が二羽バタバタと飛び去り、虚を突かれて心臓が跳ねる。
目の前に飛び出す木の棒はお祭りの時にでも使うのか。

背後へ回り込む。
「おお、やっぱり富神山は見守てけっだどれ」

「のぼらないで」というのも分かる。
んだて、あまりの視界の広さと気持ちよさに、
天へ上る心地になんもの。

「こだい景色のいいどごさ咲ぐいくて羨ましいずねぇ」
「そうは言わっでもねぇ、ただ植えらっだ場所で花開いでるだげだがらぁ」

「ったぐよぅ。なして今年だげ22日なんだべなぁ」と気落ちし、
電信柱のいたずら書きをみて、益々脱力する。

天を突いて、無残に折れたヒマワリ。
あとは体中から生気が抜けて、冬を待つだけ。

太陽と真正面から向き合う商店。
パキッと気持ちを整えて客を待つ。

さすがに直射日光にさらされると暑さがきつい。
視線が彷徨い、自然に体が木陰を探す。

「おんまえベゴベゴだどれはぁ」
富神山が田んぼ越しに声をかける。
「曇てっどわがらねんだげんと」
看板は光で露になった凸凹を隠そうともしない。

エノコログサに囲まれながら、ぱっくり割れたミラーが横たわり、空を見上げている。
仕事ができなくなった体を恨めしく思いながらも、
「土てあったかいんだずねぇ。初めて分がた」
土の感触が体を包み、今まで立ち続けていたのはなんだったのかと思い始める。

壁のザラザラが光の加減で浮き上がる。
ミラーに見つめられながら壁を這う夏草は遠慮気味に触手を伸ばす。

白いアスファルトをうねうねと這う電線の影。
車も通らず踏まれる心配もない。

昔からの通りに変化はない。
ただ銀杏の木が高くなったことと、電柱ができたこと以外は。

とにかくトンボは先端が好き。
先端を探せばそこには必ずトンボがいる季節。

ベロベロベロ〜。
どう見てもこれはベロ。
暑すぎてべろーんとなり、熱い息を吐いているよう。

空に線香花火をパッパッとまき散らし、
光の欠片を集めている。

産毛も浮き立つ光の強さ。

まぶしすぎてハウスの陰に逃げ込んだ。
それでも葉っぱの隙間から狙いを定め、逃げ場はないぞと追ってくる。

風呂上がりの頭髪か?
ヒマワリは項垂れ、黒ずみ、それでも首の力を抜かずに堪えている。

汗にまみれた体がべとついて気持ち悪い。
ようやく木陰にたどり着き、
柏倉八幡神社の空気に触れ、涼やかな風にしばらく身を任せる。

手水舎で水を飲もうと急いで寄ってみる。
一円玉と鈴が乾いた体で水を待っていた。
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