◆[山形市]七日町 祭りのあと(2019令和元年8月8日撮影)

花笠祭りの翌日。
何事もなかったように丸久(セブンプラザ)跡地は掘り返され、
令和に生きていく建物が造られていく。

昭和と令和の境目は隔絶され、お互いに見ることもできない。
でも、その両方に太陽の光は届き、暑さはこの上ない。

真冬に雪を被って凍えていた自転車たち。
一冬越えて熱暑から日陰へ逃げ込んでみたら、真冬に凍えていた場所と同じ位置。
※前回写真参照◆[山形市]七日町界隈 雪景色の中の意匠たち(2018平成30年12月29日撮影)

一年中軒に下がっている鯉のぼり。
色褪せた目で、山形の春夏秋冬を見守っている。

「いやあ〜まんずまんず、いつまで続ぐんだがなぁ」
「この暑さがぁ〜」
「んねずぅ、おらだの仕事っだなぁ」
暑さはいつか終わる。人生はまだまだ続く。

無味乾燥な工事現場の仕切りに絵が描かれ、命が吹き込まれた。
偶然立ち止まった自転車は、鼻先をくっつけるようにして見入っている。

柳から放たれた精気は仕切りへ乗り移り、
精気は水流となって魚が泳ぎ、草花も蘇る。

「暑くても汗も出ね」
顔を真っ赤にして直立不動。

花笠祭りが終わり、街には疲れたような空気が漂う。
「冷水をどうぞて、オレさは一滴もけねどれ」
ポストは振り返りたいが、仕事中なので我慢する。

街は生きている。
昭和の丸久が壊され、令和に完成するマンション工事を、
平成に建てられた町の水屋が見守っている。

工事の音がガンガン響いてくる。
その音は金魚の耳に届いていないのか。

青空の光を集めるレンズのような金魚鉢。
その表面に映し込まれた山形の街並みを眺めながら、優雅に泳ぐ金魚たち。

柳の穂先が風に揺れ始めた。
そろそろ雨が降るのかも知れない。
空気には不穏な棘が混ざり始めている。

工事現場の仕切り板では、絵が生命を与えられたようにどんどん成長している。
雲行きはどんどん怪しくなっている。

ポツポツと降り出し始めた。
暗くなってきた空にはマンションが頭を伸ばし、昔ながらの仕舞た屋には、
この後の雨に怯えるように蔓が絡みつく。

照る照る坊主は無力感にうちひしがれながら、
黒雲を傍観するしかない。

「どだな雨だて行がんなねのっだず」
「自然に逆らてでも仕事はさんなねのっだずねぇ」
びじゃびじゃになった地面を気にしながら、仕事に向かう気の重さ。

遂に相手方の本体が山形上空に到達した。
屋根を打ち付ける雨は遠慮会釈もない。
人々は逃げ惑い、軒下から空を見上げるしか手の打ちようがない。

花笠祭りの残渣となっているイルミネーションは、
雨に打たれながら三日間の熱気を咀嚼しているようだ。
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