◆[山形市]三小・四小・神明神社 ハナミズキの咲く頃(2019平成31年4月29日撮影)

三小のグラウンドは春の匂いプンプン。
少年野球の砂埃と八重桜。
春真っ盛りを肌で感じる。

「どさ行ぐんだぁ、気ぃつけでなぁ。」
走り去る子供たちは半袖。
膨らんだネットの脇を走り去る。

「ほだなへっぴり腰だごんたら打だんねぞぉ!」
子供達の甲高い声と、大人達の胴間声が交差する三小のグラウンド。
バットはボールの当たったところをさするでもなく沈黙を守る。

「人間には根っこがないんだずね。」
この世に生まれたばかりの若葉が、子供達のプレーをまぶしく見守る。

台形とも菱形ともつかぬ三小の校舎が、若葉に覆われる。

きつい練習が終われば、大樹の陰でお母さんの作ってくれた弁当の時間。
子供達は大樹にも親にも見守られている。

出る杭は打たれるけれど、
出る樹木も頭をもがれる。
それでも幹から吹き出した若芽は、子供を見下ろし目を細めている。

「どいず飲んだらいがんべなぁ。」
顔を撫で撫で思案に暮れる。
「ほだい悩んでいだら令和になてしまうべな。」

塀から溢れ出た木々が陽光をむさぼっている。
ぽっかり浮いた雲はゆったりした風に浮かんで少しずつ流れていく。

「神明神社さ行ぐのが?ほだい急いでぇ。」
「ほだなしゃねぇ。腹減ったがら家さ早ぐ帰ぇだいだげだぁ。」
赤い幟が風になびきながら人々を誘っている。

「オレ様と張り合うつもりが?」
「ほだな気はさっぱりないげんと・・・」
紫木蓮は、ただ太陽に少しでも近づきたいだけなのに、電柱は黙っていない。

「斜めに何度?」
日が高く昇りグイグイ影の角度が変わっていく。
花びらは自分の周りを太陽が回っているに違いないと勘違いしていることだろう。

あんまりきつく飛びだし注意とあるものだから、
チューリップは外の世界を眺めたくても我慢する。

四小と三小は異常に近い。
でも校風は明らかに違う。
四小はハープを奏でるような上品な学校なのかもしれない。

校舎脇の庭に入り込む。
暗がりの椿は妖艶さと香気を放っている。

形を整えた雲がゆったりと浮いている。
「こだい世の中ってまぶしいっけのが?」
若葉は明るすぎる世界に面食らっているようだ。

四小といったら大銀杏。
旅篭町や七日町方面を睥睨するように枝葉を伸ばす。

「早ぐ蹴られっだいぃ。」
「おまえだはマゾが?」
「蹴らっで、遠っがくさ飛ばされんのが快感。」
サッカーボールにも様々な表情がある。
でも気持ちは同じ。みんな篭から出たがっている。

豊川稲荷の低い鳥居を頭を気にしながらくぐってみた。
ふと振り返ると、なんだこのおっさんという目が通り過ぎていく。

「誰が鳥居さ登るんだ?」
「根元ば気にする前に登たらだめだべ。」
「んだがら点検さんたていいがら、登てだめだず。」
電信柱の苦笑が止まらない。

昭和も経験したに違いない大看板。
令和に活躍するだろう少年が、興味なさ気にスイッと目の前を走り去る。

「真っ黄色くてあたしだより目立てっずね。」
「あたしだの真ん中で邪魔臭いずね。」
「んだら、囲い込んで仲間にしてしまうべはぁ。」
邪魔だげんともどげるという考えはなく、仲間に取り込んでしまうチューリップ。

宮町の通りはハナミズキが青い空にピンクの色を散りばめている。

「オレは知ってだがら。」
「何ば?」
「おまえがずーっと真っ黄色ぐ咲いっだけごとばよ。」
「ありがだいごどだな。」
ひまわりは事切れる寸前に感謝を口にした。

空き缶が陽光を反射してギラギラしている。
これからの行く先を案じ、不安を隠しながらギラギラは止まらない。

「その真っ赤さは、目の前さ居られっど気になてしょうがないずねぇ。」
「今だげだがら、ちぇっと我慢してけろ。」
幟は居心地の悪さを感じながらも自販機の脇ではためいている。

「昔はすごい人だかりだっけのようぅ。」
「んだのがぁ、ちぇっと顔出してみっかぁ。」
親子は神明神社の鳥居に吸い込まれていった。

神明神社に来てみたら、親爺がカメラを構えて待ち構えていた。
「いいんだがっす?」
「あ、申し訳ないっす、どうぞどうぞ。」
お参りに来た人に邪魔をした事がチクリと心を痛めてしまう。

日陰に入り社殿に向かう二人は帽子を取り、
平成最後のお参りをする。

子供御輿が社殿脇にぽつねんと佇んでいる。
子供達が来るのを待っているのか、すでに終わって休んでいるのか。
暑くなく寒くない心地よい境内の空気に浸っていつまでもこうしていたい。

三々五々訪れる参拝者を横目に、
小さな飾りはコソとも揺れず、心を無にして境内の大気に馴染んでいる。

若葉が出始めたばかりの境内で、
金色に輝く鳳凰は直立し、空気の襞を全身で感じとっている。

「こだい青い空で泳ぐなて久しぶりだなぁ。」
親子みんなで泳げる幸せを噛みしめる鯉のぼり。

「参拝者だはぽつぽつしか来ねずね。」
「いっだべ、オラだが泳ぐのに、さすかえなぇもの。」
天高くから見下ろしながら、鯉のぼりは体をくねらせる。

「ぎっつぐ結ばっで大変だんだげんともよぅ。」
「このぎっつさ位にオラだも心が引き締まてっからね。」
たすき掛けに結ばれたロープは天にはためく幟をしっかりと支えている。

咲き遅れた二輪が静かに社務所を見つめている。
この祭りが終わったら、二輪一緒に舞い降りようと心に決めているようだ。

「小橋児童遊園てあっげんと、遊んでんのは姫オドリコソウだげだどれ。」
「あたしだは遊んでいんのんねくて、踊てんの。」
石垣の姫オドリコソウは陽を浴びながらも踊り忘れず。

山形五堰のひとつが、こぼれ落ちた日差しを受け止めて、
人知れず流れている。

やっと現れた子供達を、姫オドリコソウはやいのやいのと囃し立て、
子供御輿は心の中で、ワッショイワッショイと盛り上げる。
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