◆[山形市]北町・北山形駅 推薦したい水仙日和(2019平成31年4月13日撮影)

極上の晴天がやってきた。
桜はまだか?今どこにいる?

竜山が山形市内の隅々まで見渡している。
山形市民は透き通った大気の中を蠢いているアリンコのように見える事だろう。

街角の桜は、壁面にその姿を映しながらほころび始める。

染みの浮いた看板には何やら厳しいことが書いてある。
掲示板を壊したり、ポスターを破いたりするとごしゃがれるんだど。
撮ってもごしゃいだりすねよね?

ファミリーボールから西へ入り込むと安堵橋公園。
小さな公園だけど、画一的な都市公園の中にあって、
雰囲気の良さを醸している。

いきなり目に飛び込んできた真っ黄色の水仙。
土中のどこにこれだけの真っ黄色を生み出す成分があるのだろう。

こんな時は大人だってブランコに揺られたくなる。
こっくりこっくり始まった頃に、すぐ脇を走る左沢線の電車が目を覚まさせてくれるだろう。

遊具の中にも日差しが入り込んでいる。
ふと、遊具の穴ポコに頭を入れた自分が滑稽に思えて、
恥ずかしくなってしまう。

左沢線のガード石垣から顔を出したヒメオドリコソウがじっと見ている。
何を訴えたいのか知らないが、桜ば撮っだいんだがら邪魔すんなず。

左沢線をくぐれば今度は皆川公園。
安堵橋公園と皆川公園はザワ線を挟み込むように位置している。

大空に枝を伸ばして、春をついばむ桜の芽。

「こだんどごさ隠っでだのが。」
「んだて恥ずかしいんだも。」
「ほだごどないべぇ、出でこいぃ。」
オドリコソウがちょろっと顔を出すことなどに、
おそらく誰も気づかないし気にもとめない。

「おまえだ元気だずねぇ〜。」
地の底から聞こえるような低音が這ってくる。
陽を浴びる雑草たちをよほどうらやましいのか、薄汚れたビニールよ。

建物は朽ち果て地面へ還りそうだ。
そんな建物の呻きにも似た視線を背後に感じつつ、
土は次々と若々しい水仙を生み出す。

空の細かな毛細血管を葉っぱが覆えば、地面に光が届かなくなる。
だからなのか、水仙が今を盛りに咲き競うのは。

薄暗い部屋に灯りの灯ることはあるのか。
電球が侘びしさの中に浮いている。

新芽は陽光に喜び歌い、
星霜を経た窓は、その若さを羨んでいる。

「オラだの出番は完全に終わたべやぁ。」
「んだぁ、失業ていうが、あど長期休暇っだなぁ。」
そんなスノーダンプの囁きを、トタン板一枚隔てて聞いている新芽。

「早ぐ走っだい〜、体がうずうずすんもはぁ。」
自転車のはやる気持ちが痛いほど分かる好天気。

北山形駅西口から城北高校へ向かう道路が、白く輝いて伸びている。
駅の改札へ向かう二人は、今からその白い道を二人で歩いて行くのか。

左沢線と奥羽本線を結ぶ通路から、
山形の街並みをまぶしげに見つめる。

「汽車いづ来るんだべなぁ。」
「汽車なのいづまで待っても来ねがら。」
電車を待つ間にスマホの世界へ入り込む。

「しゃーだぁ〜、ひころぶっけはぁ。」
「恥ずがすいったらぁ、早ぐあべはぁ。」
つんのめった友人に声を掛け、
二人して一目散に階段を駆け上がる。

前にも後ろにも山形の麗しい光景が広がっているというのに、
シルエット達は微動だにせずスマホの世界。
でも、その頬にその首筋に春風を感じ取っているに違いない。

「なんだてチョボチョボて元気ないんねが?」
「おんちゃんと同んなじだべず。」
図星を指され狼狽える。

その放物線は、栄光への架け橋だぁ!
ほんてんだがよと、煌めく自転車達が囃し立てている。

いったいどれだけの高校生が、ここから学校へ向かっていくのだろう。
まだ蕾の桜は、今までどれだけの高校生を見守ってきたのだろう。

歩いて通り過ぎればあっという間の隙間。
誰も愛でてくれそうにない片隅。
すぐ向こうの奥羽線を、あっという間に新幹線が走り去った。
金属音と巻き上がった風だけが余韻として残る。

北駅のホームがすぐそこまで伸びている。
そんなの関係ないと、水仙は自分の場所を確保して咲いている。

張り紙はいつまでも言っている。
現在連絡中だと。
いったい現在って、どれだけ昔なんだろうと思わせる黄ばみ。

知る人ぞ知る、数年で周りの光景が激変した一角。
古い工場が軒を連ねていたのはいつだった?
素知らぬふりして北町公園の水仙が聞いてくる。

天高く鉄骨に絡みつく去年の夏草。
「なにば撮ってだの?もしかして痴漢?!」
五中のやろこたちが、おもしろおかしく騒ぎ立てる。

五中のやろこたちに構っていたら、
あっという間に新幹線が通り過ぎてしまった。
「ところで、なして土曜日なのに学校さ行ったのや?」
「今日は駅伝大会だっけの。」
「霞城公園でが?」
「んね、あかねヶ丘。」
いつの間にか駅伝は場所を変え続いているようだ。

「ギュンギュン漕いでみろ。」
調子こいたやろこは思いっきり漕ぎ出した。
太陽を股に挟み、思いっきり屁をこくように!
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