◆[山形市]百目鬼・高木 しゃねこめに春(2019平成31年3月3日撮影)

「ごしゃいっだんねが?」
「こだんどごまでゴミ捨てに来るんだがした?」
「こだんどごだがら来んのっだな。」
「捨てるなて書いでっから分がんねのんねがよ。」
「ゴミ投げんなて書げば分がっべ。」

空気が乾燥しすぎて、ペットボトル達は喉の渇きを訴える。

「なえだて暖かそうな蛇口だごどぉ。」
もうちょっとで、暑くて脱ぐ日が来るのだろう。

粉っぽい大気の中で、カラカラと回るペットたちは、
光のツブツブと戯れているようだ。

春の扉を開いたら、笑顔の山形が迎えてくれた。

祠を守る杉とその奥に富神山。
正調山形の光景だ。

「おまえだ、ほだいパンパンて水飲み込んだら、
日差しではばげでしまうんねがよ。」
「はばげるほど飲んで重りの代わりなんだど。」

ネットの中に混ざって、ハンガーが自分を干している。

雌伏の時を越え、まさに間もなく春が吹き出そうな光景。

「払ってけろぉ。」
ガードレールは邪魔くさい枯れ草が気になって、
腕をグイッと私の目の前へ伸ばしてくる。

春の日差しがまぶしいと、イヌノフグリは薄紫の小さな花弁を震わせる。

「春だがら模様替えが?」
マンホールの蓋を持ち上げるビニールはいかにも新人らしく初々しい。

百目鬼の通りの先には鉄塔と、そして薄青く千歳山。

青い苗が鏡のような水面に揺れるには、あと二ヶ月。
おお、田植えは平成に行われるが、青々と成長するのは新元号の頃。

あぜ道からポタポタと落ちる滴。
その波紋へちょっかいを出すように光がキラキラとまとわりつく。

高木の集落は鉄塔が目印。
10度を軽く超えた今日の気温で、鉄塔は冬の厳しい寒さから開放されてボルトを緩める。
なんてことがあってはいけないぞ。

何があったのかと思わせる樹木。
途中からもげて、その先がない。
太く短く生きたのか?

太く短い樹木からは葉っぱが脇毛のようにはみ出している。
そして鉄塔集落には、火の見櫓も屹立してる。

乾燥した路面を歩くと、ほんとに足が軽くなった感じ。
その先にどんな光景が広がっているのか早足になってしまう。

春霞が空を覆っているけれど、
太陽の光は勢いそのままにとてもまぶしい。

街中の堰ほど洗練されていないけれど、
その流れは建物をえぐるように須川へ向かう。

湿気を失い、カチャカチャになってしまった葉っぱ。
微風に反応するものの、その動きはぎこちない。

まさにイヌノフグリ満開の季節。
茶色に沈んでいた土手が、生き返ったような生を感じる。

イヌノフグリは小さい小さい春の使者。
その様子を伺っている土の中の草花たちは、いつ芽を出すかタイミングを見計らっているはず。

枝先がなんとなく赤みを帯びている。
大気に敏感に反応し、気の早い者から次々と花びらをほころばせる事だろう。

崩れ落ちるコンクリート。
まるで敗北した冬が無残に消え去っていく姿を目の当たりにしたようだ。

「なんで盆地の真ん中にさ、こだな坂があるんだ?」
須川の流れが歴史の中で蛇行し、河岸段丘が至る処に発達したとみられる。
地理学を専攻したもんだから、こんなことを想像してひけらかしてみました。

茶色に覆われた斜面。
もうちょっと、もうちょっとで緑に覆われっから。

山形人は地面から土が見え始めると、ワクワクしたもんだ。
なのに今年は地面そのものが雪に隠れなかった。
その分、地面が深い眠りにつけなかったともいえる。
よく見ればなんとなく寝不足気味の畑が広がっている。

「おまえ年しょたなぁ。」
「おまえも真っ茶色だどれはぁ。」
永年の知恵で目立たないように背景に溶け込む術を身につけたスコップたち。

ザクロは固い皮を萎ませながら、春の光を浴びている。
去年、希望を胸にすくすくと育ったはずなのに、
一冬越えて、何故今ここにいるのか自問自答しているようだ。

夏草の反乱!
去年の夏に猛威を振るった夏草は、
死に絶えてもゾンビになって呻いている。

CDの膜面が掃がれ落ちている。
つまりデータが壊れたということ。
ぶら下がったCDに去年の記憶は記録されていない。
なぜ自分がぶら下がっているのかも分からないでブラブラ揺れるだけ。

「ハーイいらっしゃ〜い。」
明るく手を上げて「ようこそ」といっているようだ。
でもよく見れば体が地面へ溶け落ちていくのを堪えながら、
無理して笑顔をつくっていることに気づくはず。
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