◆[山形市]六椹八幡神社豆まき 豆が降ったり雪がやんだり(2019平成31年2月3日撮影)

氏子さんたちが準備に勤しんでいる頃、
ご神木はすっかり葉を落とし、空の毛細血管と化している。

「こだっぱいの人だが協賛してけだんだがら、手なの抜がんねっだなぁ。」
手を抜かず画鋲も抜かずに、気持ちを込める。

「早ぐひっくり返してけろぉ。」
器は社殿とケヤキの木を素肌に映し込みながら御神酒を待つ。

「ちょうどやんばいな大きさだもなぁ。」
山形市指定のもやせるゴミ袋を被ったスピーカ。
不思議な面持ちで南光幼稚園が眺めている。

トイレがズネーンと立っている。
寒いと近くなるのが人間の性。
しかもありがたいことに洋式とステッカーが貼ってある。

あったかいお茶を飲み飲み豆まきの準備を進めるスタッフ。
「あんまりお茶飲むど、近くなっぞーッ。」

ポットは六椹八幡宮のステッカーを胴体に貼って鼻高々。
私も持っているけれど、スマホの裏に貼ったら怪訝な顔で見られた。

豆まき会場の準備の音を緑の木々が受け止める。
社務所にもイベントで高ぶる気持ちが静かに満ちている。

受験生は特に注意してください。
でも、以外に気温が上がり、凍った地面はびじゃびじゃになっていた。

苔の隙間にさえ、豆まきの興奮が染み渡る。

「滑らねぐするには藁が一番よぅ。」
そう言いながら長靴の足元が覚束ない。

これぞ山形。
普通の夏靴は完全に、いや、ほぼ消え、ゴムの長靴が幅をきかす季節。

終了とともに人々も去った。
スコップと箒は、遠くに豆まきの音を聞きながら、熱かったどんと祭に思いをはせる。

冬だからスコップや雪かきが立てかけられているのは分かる。
でも、いつ来てもリヤカーが腹を見せているのはなんでだ?

祈祷のために社殿へ入った人々の靴が所狭しと並んでいる。
脱がれたばかりで、まだぬるこくて匂い立つような靴に思い切って近づいてみた。

狛犬は玉を噛んでいるが、
今日ばかりは豆を噛んでみたかったに違いない。

待ち時間にもじっとしていられない子供たち。
ザグザグの雪の上で、背中を押される子供、押す子供。

「みんな景品ば目当てに来るんだがらよ、肉まんなの売れるんだべが。」
テント内で寒さをしのぐスタッフ達は世間話に余念が無い。
※肉まんはめでたく完売されました。

「矢印がないごんたら、ここで踏ん張ったみだいに見られっどれ。」

神主さんの福々しい手が空に伸びる。
遂に始まった豆まきに人々の興奮が一気に高まる。

「ちゃんとかんじょしたんだが?足んねぐならねべねぇ。」
豆がどんどん捌けていく中で、段ボール内の豆がべろべろ減っていく。

興奮するのは豆の受け手側ばかりじゃない。
豆を蒔く年女のおばちゃんは、大口を開けているのも忘れて豆まきに夢中。

「こだい袋ば広げっだのに、なしてへっでけねのやぁ!」
子供の頃から競争心を養うには最高の催しが豆まきなんだな。

「イデデ、後ろから狙うなて反則だべぇ。」
子供達は背後に回り、赤鬼をこてんぱんにやっつける。

赤鬼は改心し、子供へ優しい言葉を掛けるが、
子供には通じず、べそを掻いて逃げていく。

豆まきは三部に分かれている。
子供は非力なので第二部は子供だけ。
「これだけの協賛があっから豆まきが出来るんだて、覚えでおげよー。」

「ギブミーチョコレート。」
それは戦後すぐ。
「ギブミー当たりくじーッ!」

「はえず俺の!」
「んねず、あたしの方が早いっけも!」
豆の入った袋は二人の力で引きちぎられそうだ。

真冬に、子供達が血湧き肉躍るイベントなんてそうそうない。
鈍った体を奮い立たせ、体から湯気が出るくらいに頑張れよ。

虚空を舞う掌。
五十肩で腕の上がらない中年も、このときばかりは何故か肩が軽くなる。

「どさくさに紛れて人の手ば握んなよ。」
「んだて豆ど同じ色なんだもの。」
乱舞する手は寒気をこれでもかとかき回す。

「緑の当たりくじは大根だぞーッ。」
「お母さんからんまい料理ばこしぇでもらえぇ。」

豆には興味を示さず、当たりくじを袋の中から取り出す。
一心不乱に一袋一袋開けては当たりくじを取り出す指は、かじかんでも気にならない。

戦利品を雪の上に広げて、はにかみながらVサイン。
よくもこれだけ集めたもんだ。
母親は画面の外で苦笑い。
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