◆[山形市]七日町界隈 雪景色の中の意匠たち(2018平成30年12月29日撮影)

専称寺の伽藍が鋭角的な形を際立たせている。
「まだまだゆで卵の薄い膜みたいなもんだべ。」
山形の街並みに覆い被さった雪は、たいしたことないと強がってみる。

地面に達する事無く、フェンスに挟まった雪たちが、
七日町のビル群を眺めている。

みつますだった建物は解体が始まったのだろうか?
雪をかぶって静かに年末を迎えている。

雪の白と灰色と直線しかない世界。

パキッとした看板、だらっとした壁面の枯れ蔓。

雪の重みに耐えながら、松の木は街行く人々を待ち構える。
「真下ば通ったら、雪ば落どすべ。」
「んだて、やばついッ!ていうのおもしゃいべぇ。」

赤い実より氷の粒が大きく育ちそうな、一番街の歩道脇。

八文字屋の東側駐車場には、真夏の描かれている塀がある。
空の青は色褪せ、椰子の木も枯れた蔓に覆われる。

今時の山形の車はみんなこんな有様。
雪がひっつき、氷って溶けて氷柱となり、牙のように垂れ下がる。
「こっだな足で蹴っ飛ばして、払わんなねのっだな。」
そのときに空振りして足が空を切り、そして尻餅をつくことも多々あった。

「邪魔くさいったらよぅ。こっちはかき入れ時なのにいぃ。」
ポストは憮然とした表情でスノーダンプを睨んでいる。

八文字屋に来れば、必ず目の端に入れていたこのつり下がったオブジェ。
市民の知識欲を満たした八文字屋が健在なのにはホッとする。

建物の隙間を這うダクト。
日の目を見ないダクトにも雪は降り積み、
通りの騒音を嫌った粉雪が舞い込んでくる。

八文字屋近くのT字路から香澄町方面を眺める。
黒い電線をかいくぐって灰色の空から、憂鬱の代名詞がワサワサと舞い降りる。

キラリと光る宝石は微動だにせず、道行く人は目もくれず、お互いに寒さに耐える。

ウインドウからはお洒落が熱く発散される。
粉雪はその雰囲気の中に身を躍らせる。

「何回も言うげんと、ギッツグ繋いだその手ば忘れんなよーッ!」

ベレー帽にも雪は降り積む。
帽子のチョンて出っだどごさも、遠慮気味に雪がふっついっだ。

グイグイペダルを漕いで少年は雪の中を走り去った。
本格的な雪に、車たちはおっかなびっくりでノロノロと地を這っている。

「こだいフカフカなのに誰も座らね。」
ベンチは舞う雪を見上げながら、不思議に思う。

「なんぼ雪の中でも、あの子は違う世界さいるんだべ?」

「ほれ、足元!」
「人のごど言う前に自分の足元!」
「くるりん」から降りて、途端に「ころりん」じゃ笑えない。

雲間から顔を出した太陽で、目が覚めたような注連飾り。

とりあえず全体像も掲示します。
山形唯一のデパート、大沼が青空を仰ぎ見ている。

セブンプラザ(丸久)が囲われている。
いよいよ昭和・平成ともお別れの時が近づいている。

店はすでに撤退し、埃とともに雪が忍び込んでいる。
新しい建物が出来るまで、静かに昭和に浸ろうか。

しめ縄まで飾って、山形五堰がもてはやされる昨今。
「便所の溢っだ汚物ば柄杓で堰さ流しったけど。ほしてその下流では食器洗いしったけどぉ。」
昭和30年代のほんとの話。庶民密着型の堰だったんだ。

「なにいがんべなぁ。」
ウインドウを食い入るように眺めながら、財布の中身を考える。

「真っ白い学帽もいいずねぇ。」
「人ごとだど思てぇ。第一今どき学帽なの誰も被らねし。」
ポストは迷惑げに横を向き、親爺の会話に耳を貸さない。

「寒いがら、くっつがねが?」
右の自転車が呼びかける。
「孤独が好き。」
左の自転車はにべもない。

ゴリゴリの氷が勢いを増している。
雨樋から垂れる雪解け水も、ちりも積もれば山となるように、ごっつく太くなる。

「今時はJKていうんだが?」
何がおかしいのか、ケラケラ笑いながら歩き去る。
「ちなみにJKて城北高校の略んねんだがした?」
※城北はすでに女子校じゃない。

「いつだっけぇ?てるてる坊主ば撮ったのは。」
今では氷柱と並んで寒さに凍えている。

御殿堰の脇に力強い茎。
黄色い可憐な花びらが、色を失った街で小さなポイントになっている。

すべてを受け入れてきた窓。
永年風雪に耐えてきた意匠。
一過性のデザイン(意匠)とは心構えが違う。

自販機は、そこに構えたら、あとは待つしかない。
雨が降ろうと、雪が舞おうと営業スマイルを振りまくしかない。

綺麗に整った御殿堰を雪が囲う。
たまに訪れる人々の靴音が遠ざかる。

ハンドルはくるりと真綿で首を絞めるように覆われた。
ハンドルはおののきながら身を縮めている。

「平成のゴミばみな捨てらんなねぇ。」
白い息を吐きながら、おばちゃんがゴミ投げに奔走する師走。

羊が群れているわけじゃない。
冬眠に入った自転車群だ。
新元号になる頃は、緑の中を軽やかに走っていることを夢見て眠りに付け。
TOP