◆[山形市]鉄砲町・八日町・三日町 雨の光禅寺横丁(2018平成30年10月27日撮影)

小雨模様の中、光禅寺を訪れる。
着いた途端、雲の隙間から光が降りてくる。

地面は濡れ、落ち葉のうねりの中に宝石のような光が散りばめられている。

水面下に沈んだ落ち葉を、今から舞い降りる葉が覗き込む。

コキアに引っかかり、落ち損ねた葉は、
地面への旅路の前のハプニングを内心喜んでいる。

ぺろっと舌を出し、光を舐めるようにすくい取る仕草。

「檀家の誰がさ、長谷堂の人がいだんだべな。」
干されたタオルに本沢地区自治会の文字が裏返っている。

中央高はドラフトで湧いている。
グランドは雨に濡れて、曇天の空と向き合っている。

整然と並んだ姿はツートップ?
サッカー部のスコップは2・2・2・2のフォーメーション。

フロントガラスには乾いた水滴の跡が残り、
落ち葉も引っかかっている。
随分長い時間、乗られていないようだ。

パックマンが口を開けているようなビニール袋。

写真が逆さ?
いや、そんなことはありません。
誰が、いつ、何故こんな事をしたのか?
または、自分の意思で頭から側溝へ落ちたのか?

椅子の背当て部分の湾曲に沿って、
滴が中央に寄り添ってきつつある。
「やばついったら。」
椅子は自転車達に向きながら一言呟く。

中央高と六小の間を笹堰が流れている。
「今の子供は笹堰ば大切にしてるんだなぁ。
おらだんどぎは誰もなんにもいわねっけし、
しかも中央高なの無くて、農業試験場だっけま。」

「六小のマークは鳩だて知ってだ?」
「当たり前だべ。」
「んだら六椹八幡様の鳩だて知ってだっけ?」
「ほいずぁしゃねがった。」

少しばかりの落ち葉が、濡れた歩道に張り付いている。
柳の並木が自慢だった通りは、すっかり今風にハナミズキの並木になってしまった。

六小の歩道橋から南方を眺める。
「日産のあだりだっけがぁ?」
「なにや?」
「水族館あっけのよぅ。」
「六小の頃見に行ったっけも。」
「パレスのあだりだっけがぁ?」
記憶は今日の天気のように曖昧模糊としている。

「お前も六小が?」
「んね、俺は六小前だ。」
他愛ない会話を交わす、昭和初期の門柱が現役ってすごいべ?

「しぇずっだなねぇ。」
訳すれば、
「そういう季節になたのっだなねぇ。」

国道から八幡様へ向かう横道に逸れる。
パッと目の前が明るくなったような気がした。
花びらに守られるようにして、蜘蛛が雨宿りしている。

「山形大学指定店だど。」
「なんだべ、すごぐ気になる。」
昭和の息吹が漂う道には、歴史と品格も漂っているようだ。

こんな雨空なのに、花びらの中は別世界。

「ベロばこだな具合にクルッと巻ぐごでぎる?」
「俺はでぎるよ、ほれ。」
花びらに向かいベロを巻く親爺。ああ、気持ち悪い。
「よんだれ落ぢっから、あどやめろはぁ。」

「バグって何が咥えるつもりが?」
「んねっす。今から綺麗に開くつもりだがらっす。」
曇天で街が沈んだように暗くなっていようと、
小さな花びらの中には、明るい未来志向の世界が広がっている。

寡黙に人は通り過ぎる。
少しばかりの空気の揺らぎにも、
花びらは反応して首をもたげるようだ。

ミカンんねがら。
直径5ミリくらいの粒だがら。
さぞや、ひっついた滴が重たかろう。

ガラスには様々な情報がシールとなって貼られている。
「全部しっかり読んだら、どれくらい時間が掛がっべ?」
「いや、その前に不審者と思われっべな。」

「こだんどごも走てるんだがした。」
「しゃねがったねぇ。」
「ワンコインバスさ乗ったどぎあんのが?」
「乗ってみっだいんだげんとねぇ。」
バスは小荷駄町の方へ走り去る。

「何キロまでOKなんだべ?」
「少なくとも俺よりは力持ちだべ。
おらぁカメラですら重だくて、たがてんのやんだぐなんもの。」

立ち入り禁止になれば、草むら天国になる。

正面に光禅寺の杜が見えてくる。
光禅寺の横町も昭和の匂いが色濃く残って良い雰囲気。

「こだんどごさ隠っでいねで、そろそろ出番だんねがよ。」
「いづ降るんだべ?」
「わがらね。」
山形人も冬タイヤも、戦々恐々として雪を待つ時期。

ドアが開き、小走りに玄関へ急ぐ。
「ほんてん宅配便の方には頭が下がっず。」
ぼやーっと考えていたら、あっという間に走り去っていった。

コスモスにだって、表の顔があれば裏の顔もある。
滴をまといながら、しっかり花びらを支えているじゃないか。

水面に模様を浮かび上がらせながら、
平成最後の落ち葉が雪の下へ隠れようとしている。
「ん?まだ早い?」
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