◆[山形市]祭りだワッショイ 台風の来る前に(2018平成30年10月6日撮影)

「今日は梯子さんなねぇ!」
「なに酔っ払いみだいなごとゆてんのや?」
「んだて、祭りだワッショイ見らんなねし、豊烈神社のお祭りさ行がんなねしぃ。」
あっちこっちでお祭りは重なるし、台風は来るわで、山形の初秋は慌ただしい。

「なんだが人間がしぇわしないんねが?」
「はえずぁんだべぇ。芋食んなねし、お祭りはあんべし、マラソンの応援もさんなねし。」
固まった雀は、秋にしては強烈な日差しを全身で受け入れながらチュンチュン呟く。

強すぎる光を抱えきれずに、エノコログサは光を持てあましている。

「だまし絵が?」
「んないず、これが現実だず。」
「現実ば直視さんなねっだな。」
どのラインが垂直なのか、見れば見るほど分からなくなる。

祭りを準備するざわめきが満ちている。
年月を経た雨樋は、静かだった旅篭町に再び賑わいが戻ったと、
自分の事のように喜び胸を張る。

あまりに太陽光が強烈過ぎるから、日陰に逃げ込んできたのか、
ドラム三兄弟が暗がりに隠れている。
ドラムにはちゃんと名前がある。プラ・ピン・カン。
ブーフーウーみたいにかわいらしい名前だ。

フェンス越しの花びらは秋の光を浴びて透き通っている。
「うッ、あんまりまぶしくて見でらんね。」
「あたしだ、ほだい綺麗だが?」花びらがいう。
「んねくて、太陽光が・・・」
ここはうそでも花びらがというべきだった。

瀟洒とは、こんな建物をいうのかもしれない。
洋風の雰囲気を醸す手前に、柿の木の実がたわわ。
こういうのを和洋折衷というのかもしれない。

壁を這う力はまだ残っているか?
30度を超えた気温で、人々は祭り前からバテバテなもんで。

十月だというのに日傘が無いといられない。
なんて日だ!とぼやきたくなるが、
二人連れが日傘の中にくっついて収まっているのを見ると、
心が穏やかにクールダウンする。

「アスファルトに指先をくっつけて、思わず熱ッ!と小声で叫ぶ。」
傘をしっかり体で抱え、祭りを待っている時間はなにをしたらいいか分からない。

そろそろ祭りが始まるらしい。
カメラマン達は、あちこちにはみ出す日傘に苦慮しながらの撮影となるだろう。

ギラリと光るのは兜の金メッキと、強烈な太陽。
武将達の背中が汗でぐっしょりなのは想像に難くない。

祭りには晴天がよく似合う。
飛び散る汗は、太陽がジュッと溶かしてしまうことだろう。

そろそろ鍋が食べたい季節。
でもかき氷には長蛇の行列という季節外れ。

「よっこらしょっと。」
アスファルト熱くて、座てらんね。」
観客はお祭りを見る前に、日干しになりそうだ。

農協の壁面が祭りの全体像を映している。
ある意味、パブリックビューイング。

「ほれ出番だぞ。頑張れ。」
子供はすっと立ち上がり、目的のスタートラインに勇んで進んでいった。

ビル群は容赦なく日差しを反射する。
アスファルトは熱を立ち上らせる。
そんな熱さに挟まれて、御輿の担ぎ手は益々ヒートアップする。

見よ!頭じゅうに吹き出したツブツブの汗を!

日陰ではやっぱりスマホっだなねぇ。
草鞋にスマホは、新旧のコラボといっていい。

草鞋の紐をギュッと結ぶ。
気持ちまでギュッと引き締まる。
といいたいところだが、今日の暑さではどうなんだろう。

それでなくても祭りの雰囲気で財布の紐は緩みがちだし、食欲もマックス。
よだれを垂らしながら、我慢して撮影するのも辛い。

「長崎くんちんねよね?」
庄内から福を蒔くためにやってきてくれた。

さすがにこの熱さは想定していなかった。
スピーカはダラリと垂れ下がり、汗まみれの体は日陰に逃げ込む。

とにかく台風が来る前に踊りきりたい。
そんな思いを太陽が背中から後押しする。

ぐっと伸びた担ぎ棒が周りを威嚇するようだ。

「おがぐらだぁ。頭噛んでもらえぇ。」
そんな言葉とは裏腹に、あの胴体の中は蒸し風呂なのに違いない。
んだて、中から覗く足がふらついで、もづれで見えるもの。

祭りを見終え、日差しを天上から受けて帰途に就く。

祭りの喧噪を横目に、
山交バスは、それでも普段通りに街中を走る。

祭り会場の南側は、未だに道路拡幅の工事中。
その境目では一塊のススキが光を放って秋の訪れを告げていた。

御殿堰は街の中に取り込まれ、市民を静かに映していた。

熱せられたフライパン上で、ごま粒が熱い熱いと跳ねている。
あ、失礼。ごま粒ではなく踊り手と観客でした。
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